- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
この作品で舞城は新たな一歩を踏み出した、みたいなコピーがあったけど、いやいや舞城は登場したときから、私たちの何歩も先を行ってたんだぞ
2003/05/04 22:21
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今までも、分類不能な小説にたびたび出逢ってきたが、21世紀に彗星のごとく登場した文圧の持ち主、ブラックホールもかくやとでも言いたくなる異才、舞城王太郎が描く学園小説。というわけで、娘が通う中学校が「あなたが子供に薦める本」というアンケートを求めてきたので、嬉々として舞城のこの作品をあげたら、見事にというか理不尽にも黙殺されてしまった。現在を見つめることを逃げて、何が教育であるか、と母は怒るのだった。
セーラー服姿の少女が、季節の頃は初夏だろう、踏切を渡る姿が何とも清々しいカバー。その写真は、佐内正史の『女生徒』(作品社)よりと、巻末にデータが載っている。モデルは清水真美、括弧がきで(イトーカンパニー)と書いてある。思わずこの娘がプロ?と首を傾げたくなる。軽装本だが、新潮社装幀室のデザインは切れが良くて、色合いが抜群。写真のバランスも絶妙。
小説は三部構成、第一部「アルマゲドン」は、舞城らしい切れ目の少ない文章が、読者の目に流れ込み、まさに文圧を感じさせる部分。冒頭、少女の罵倒というか嘆きから始まる。彼女の名前はカツラアイコ、小六で既に身長百六十センチだったという、現在高校三年生(多分)。彼女が叫んでいる場所は、連れ込みホテル。好きでも無い佐野明彦とやっちゃったことを悔やむ。そして、延々とチンチンについてのレトリックを展開する。高校生らしい愚かな男の言動、顔射に対する怒り、カタカナ混じりの文は、舞城の独壇場。
そして、アイコが告白する金田陽治への想い。小三のときバスの窓からおしっこをし、体育のサッカーでは、味方のゴールにシュートする、修学旅行でバスに鹿を乗せようとして見つかり、バスを百メートルくらい追いかけるお調子者。背が低いくせに、目立つ、うるさい、しれっとして「愛」なんて言葉を小学生でほざく奴。そのアイコがトイレでのシメにあう。相手はカン、シマ、ナルッチ、ナカジマ、そして背が高くてモデル体型の美人の斎藤マキ。シメの規模を「戦争」と「紛争」に関連して定義す所は笑える。
第二部は「三門」という名で、小さな三つの章からできている。現代日本の有名人達が、突如活躍し始める「崖」、ここでは、やはり活字の衝撃が大きい。夢枕獏のお陰で、タイポグラフィック小説には慣れてはいるものの、暴力的で久しぶりにペンは剣よりも強い、と思ってしまった。ハデブラ村の夏休み、森で繰り広げられる追いかけっこ「森」、ミステリ要素をもった「グルグル魔人」。
第三部は「JUMPSTART MY HEART」、突然に英語で何だろう、と思うけれど、この静けさは第一部と対となって、日常への回帰の部分。分量的にも前の二部が各々130ページくらいなのに対して僅か20ページ。
最後に、各部の扉の、どこかワープロ文字風の活字を眺めながら、いろいろ工夫しているなあ、と思った。で、気に入ったのがアイコと兄との関係。剣道とテニスで鍛えたアイコが繰り広げるのは、お兄ちゃん譲りのアイコキック。それ以外にも喧嘩のコツまで教わっている。殆ど姿を見せないお兄ちゃんだけれど、案外重要なんだぞ、と思わせる。
東京新聞の書評で、評者が舞城の作品を「ジャンク文学」と表していたが、椎名誠の文章に「昭和軽薄体」と命名した人間と一緒とは思わないけれど、何と失礼なジャンク評論家だ、とその現代感覚のない発言に呆れてしまった。学校もだが、評論家が現在をつかめなくなったら、お終いだろう。ともかく、舞城の中学生くらいまでの言語を駆使する能力と、完全に彼らにシンクロできる才能は、奇跡といってもいい。それでいて、軽薄さなど微塵も感じさせない。これを迂闊にまねしようとすると、火傷をする。
ここで、私はbk1投稿史上初の予告をする。舞城を意識して見事に砕け散った日明恩『鎮火報』を次回は取り上げる。む、これって反則?
紙の本
ラップだね、これは。つーか、これ今年の直木賞でいーんじゃないの?
2003/03/03 21:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る
んなもん感動するわきゃねーだろーがと思いながらとりあえず読み始めたらちゃんと感動した。驚異の冒険小説。って、この bk1 の内容紹介もそうだけど、結構みんながこの文体を真似したくなる。おもしれーと思って真似してるかっつーと、プリティ・ファッキン・ファー・フロム・イット。ただ感染るんだよね、このリズム。読んでるとノッてくる。ラップだね、これは。そう、ラップのリズム。
「ざけんじゃねーよ」みたいな言葉遣いするバカ女子高生が主人公だし、俺みてーな、普段からまともな小説とか読んでるまともな読書家なんかが、こんな浮ついた文章読んでも「うぜーっ」て思うだけじゃねーのって思ったけど、やべー、引き込まれるよ、これ、マジで。軽そうに見えて超深いし、スジ凝ってるっぽいし、ちゃんと纏まってて、ちゃんとした力量のある作家のちゃんとしたメッセージのある、ちゃんとした、まいっか、なんかすげーっ! つーか、これ今年の直木賞でいーんじゃないの? 速攻買って読みなよ。
紙の本
恋する乙女は必読!でも責任は持てない
2003/02/17 18:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:青月堂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
三つ子のバラバラ死体が一箇所に……、このイメージだけで、僕は痺れてしまった。でも、きっと、たぶん、これは恋愛小説なのだろう。
主人公・桂アイコは女子高生。アイコの一人称で語られる世界は、いつもの如くドライヴ感に溢れてる。リンチ、誘拐、アルマゲドン、物語は爆走し、ついには現世を越えてあの世の際まで。恐〜い森が出てきたときには、理由も無く村上春樹を思い出していた。言うなれば、裏・村上春樹だね。
何と言っても凄いのがグルグル魔人の章。このぶっ飛びかたはハンパじゃない。この章を読んでから、ついルパン3世のテーマソングを口ずさむようになった。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の一種だと思う。
さすがミステリー作家だけあって、物語は一応の体裁を整えて(ほんとか?)落ち着くべきところに落ち着く。恋する乙女は必読! でも責任は持てない。