紙の本
この集成の中ではまともな編集方針
2021/11/06 11:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Eternal Kaoru - この投稿者のレビュー一覧を見る
編集方針がはっきりしないこの集成の中では割と方針が見えやすい巻で,内田百間先生の幻想短編・小品集です.「東京日記」,「南山寿」,「サラサーテの盤」,「とおぼえ」が収録されているのは結構です.『冥途』,『旅順入場式』収録作以外の百間先生の幻想短編の主だったところが収録されているといってよいでしょう.これに「青炎抄」が加われば百間幻想作品の中核は概ね網羅できていることになりますが,「青炎抄」は他の巻に収録されています.編集者の鑑識眼がないことをよく物語っています.ただし,責任は筑摩書房にはありません.ちくま文庫版が底本とした福武書店版全集にあります.
岩波文庫版の『東京日記』にかなり近い編集方針とお見受けしますが,岩波文庫版には残念ながら「とおぼえ」が収録されていません.本書と岩波版『東京日記』にはそれぞれ一長一短があります.本書には嬉しいおまけもあります.三島由紀夫の解説です.これは掘り出し物で,嬉しいサプライズです.それにしても,近代最高の幻想文学作家の一人でもある内田百間の全体像を示す選集をどこか出してくれないものでしょうか.
「東京日記」は一貫した小品集で,全編をこの順序で通読しないと面白さがわかりません.最近はバラバラに収録して喜んでいる人もいますが,「東京日記」は全編をこの順序で通読されるようお勧めします.読後の印象がまったく違います.
紙の本
叔父さんのお骨を頂戴
2003/01/17 22:11
4人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MCN - この投稿者のレビュー一覧を見る
「狐の穴に墜ちこんでしまったのだから、もう後戻りは、できませんわねえ…」な名台詞も今だ生々しい名作『ツィゴイネルワイゼン』原作を含む筑摩版百鬼園集成第4弾。
ワタクシゴトですが、つれづれNet漁りで最近ナンかハマってんのが『チバ!シガ!!サガ!!!』Flash。
たしかモトネタ漫才だったよーな気がするんだけど、『ニッポンのステキな都道府県』を絶妙イントネーションと間合いで連呼するヤツ。
『東京、大阪…』高らかに読み上げられる「都道府県名」が連呼されるうちに意味を喪失して融合してくトコがサイコー。『群馬、埼玉/グンタマ』『オオグンタマのメス』『オオグンタマの貴重な産卵シーン』『山梨、北海道/ヤマイドウ! 全日本アマチュアヤマイドウ選手権大会!』『兵庫、岐阜/ヒョギフ。ヒョギフ大統領!』『ヒョギフ大統領の貴重な産卵シーン!!』指示性をとっぱらわれた固有名詞の暴走ぶりが快感。
んで、ナニが云いたいかっつーと(ゆうかストレートな意味合いだとスラディッシュとか別役実とかな「言語遊戯」ホン噺なりそーな前フリですが(笑))、このホン読むトキに身構えるな、と。
漱石弟子とか芥川盟友とか卓抜文章の鬼とか本邦幻想文学大家とかそーゆう余計なゴタクはひとまず措いといて、浸れ、と。
流石練達文章とか幻想怪奇って無理にゾクゾク戦慄してみせるコトねえでしょ。唯もお味わって、各々好き勝手に愉しめばイイ。
そっから精髄ジブンfilter濾過で例えばかの名作『ツィゴイネルワイゼン』精製もアリ。かなり好きだけどソレ方面で総てぢゃねーだろ、そおゆう立ち位置で偏愛してます。
例えば『東京日記』その四/丸ビル消失編『「丸ビルはどうしたのでしょう」「丸ビルと云いますと」その男は一寸言葉を切って、人の顔を見てから、
「さっきもそんな事を云った人がありましたが、一寸私には解りませんね」
と云って向うを向いてしまった』…変事を目の当たりにしてコノそっけなさ。
あるいは『とおぼえ』田舎氷屋とのやりとり『「すいを下さい」「すい、たあ何です」「氷のすいです」』のトボケ具合。
老獪童心茫洋魁偉な百鬼園、全体を統括するとか、そーゆう気負いナシで、まずは喰いつける処から取っついて見ては如何か。
投稿元:
レビューを見る
鈴木清順の映画「ツィゴイネルワイゼン」の元となった作品です。
映画も良し、
原作も良し・・
最高ですね〜☆
バイオリン曲の「ツィゴイネルワイゼン」をBGMにかけながら読むと、いいかも。
投稿元:
レビューを見る
ているこのシリーズは、文庫なのに内容の濃い全集で大好きです。『サラサーテの盤』はやはり『ツィゴイネルワイゼン』を聴きながら、作品の不気味な雰囲気を味わいたい
投稿元:
レビューを見る
謎い‥ひたすら謎。しかしその読後感、???となりつつも嫌な感じがしないので何回も読んでしまう。けど何度読んでもわかんないぜ内田先生。
投稿元:
レビューを見る
よんだものもいくつかありましたが、
琴のお師匠さんがなくなった話が詳しくかかれたのは
初めてよんだかもです。
ただ、やっぱり、怪談系のものが素敵。
こわいんだかこわくないんだかなところが怖い。
投稿元:
レビューを見る
「柳検校の小閑」の最後はがつんときて、しばらくして切なくなる。
小説はわけわからなくて怖いのが多い。
たたみかけるような繰り返しとか唐突な展開とか
周りはみんなわかってて、自分だけがわからないところとか
怖い夢をそのまま小説にしたような感じ。
「サラサーテの盤」と「由比駅」が特に怖かった。
「由比駅」の黒いけものって何なのさ?!
わかんないまんま終わらないでぇぇ(泣)
「東海道刈谷駅」は、
ちょっとらしくないんじゃないのってくらい淡々と書かれていて
それが逆に著者の気持ちを表現しているような・・・
第五章 “もう帰ろう。早く帰ろう。長居は無用で、日蔭がないから暑い。”
おいおい泣いてる百鬼園先生が目に浮かぶよう。
ストレートに書いてない分、よけいにぐっときました。
供養等のご利益wはどうなったんだろう。
今頃あっちでお酒を酌み交わしながらああでもないこうでもないと相談中なのだろうか。
(09.11.01)
柳検校だけ読んだところで止まっていたのを再開
(09.10.29)
買っちゃった。
好きだと言うわりに実は未読だったんだもん。
(09.06.02)
投稿元:
レビューを見る
亡き友の妻が遺品を1つずつ返してもらいに毎晩同じ時刻に訪ねてくる...
鋭い文章の中にある極めて曖昧な怪異の描写に平衡感覚なくなりっぱなし。ぐらぐら。
そのボヤっとした怪異が妙に触覚的リアリティを持っててほんとぞわっとする。
投稿元:
レビューを見る
ひんやりと怖いのに、怖くない。人間の心が淡々と描かれるのが、すごく良かった。三島由紀夫が解説するように、風とか空気とかの描写は本当に素晴らしく饒舌なのに、恋心とかそういうものに関してはあえて抑える。品性を感じる。柳検校、東海道、サラサーテが好き。訳分からんのに、何故が腑に落ちる。すごい。先生と呼びたい!何の先生なのか全然わからないけど(笑)時間と余裕のあるときに読み直したいな。
投稿元:
レビューを見る
毎年、春と夏の間の季節に読み返したくなる1冊。
淡々と語られる日本的な侘び寂びとも言える幻想的
で染入るような奇異な世界。
ある意味日本のデビッド•リンチ。
狐につままれたような感覚が心地よく怖い。
原田芳雄主演の鈴木清順監督で映画化され、
不可思議な世界観と染入るような恐怖を見事に再現している。
投稿元:
レビューを見る
ここに収録されている『東海道刈谷駅』は、友人の宮城道雄が列車から転落死したことを題材にしています。未だに本当の原因が分からない事故原因を、百閒は“死神のしわざ”と考え(←これが百閒クオリティー)、いかにして死神に殺されていったのか妄想力を働かせています。そこの部分の緊迫感と、後半部分で繰り広げられる、友人を悼む哀しい阿房列車の旅の対比とで、読ませる作品だと思います。
投稿元:
レビューを見る
三島由紀夫の解説収録。誰みたいになりたいってほとんど思ったことないんだけど、百間みたいな人間にはなりたいと思う。
投稿元:
レビューを見る
全12巻刊行予定のシリーズ1~4が年頭に発売されましたが、
取り敢えず、この一冊を購入。
鈴木清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』が大好きでして、
あれは百閒の作品を
モザイク状に鏤めたようなお話になってますが、
中核を為すのが上記の表題作「サラサーテの盤」なんですな。
と言いつつ、恥ずかしながら百閒の作品は
岩波文庫の『冥途・旅順入城式』(二つの作品集を併録した一冊)
しか読んでおらず……てな訳で、
いい機会だと思って入手しました。
『冥途』は1922年、『旅順入城式』は1934年刊行で、
今度の『サラサーテの盤』は
1938~59年の間に発表された作品を集めたもの――ということで、
基本的なテイストは一緒でも、
書かれ方が違う、とでも言えましょうか。
ぐっと小説らしくなっているというか(笑)。
それでもやっぱり、
日常が異界へスライドする、否、異界が日常の中へ
じんわり滲み出て来るような感覚に満ちていて、不気味&愉快。
投稿元:
レビューを見る
東京物語を目当てに読んでみた。
奇憚集、幻想小説、怪奇小説ともいえるジャンルの短編集。
文章が独特のリズムで、感覚的で、思いがけず女性的でもあり、かなり印象的だった。
謎めいた話が好きなので、どの短編もよかった。
およそ100年前の小説なので、会話のなかの言葉遣いが独特。
きっといまのわたしでは登場人物たちとまともな会話は出来ないんだろうなぁ。
投稿元:
レビューを見る
表題作を読む。
靄にかすんだような空気感の中で
主人公が目にする
白く反射する海が映える。
レコードに入りこんだ不思議な声は
子どもをさらおうとする亡父の声か
主人公には聞こえない声
本来は聞こえないはずの声
淡くて美しい