紙の本
顔回を待つ冥界での試練
2003/02/09 21:43
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投稿者:露地温 - この投稿者のレビュー一覧を見る
孔子の弟子顔回が活躍する伝奇歴史小説の第8巻である。子蓉という媚術を使う女呪術師との戦いがいよいよ終盤に差しかかる。当初、子蓉は何人もいる敵のうち一人で魅力的な脇役の一人程度に思っていて、これほど長い対決が続くとは思っていなかった。しかも対決が続くだけではなく、本巻での重要なシーンへ導く役目を果たしていて、『陋巷の在り』全体で実はかなり重要な人物であったと認識する。
前巻に引き続き、媚術に蝕まれたよ(女編に予)を救おうとする話であるが、タイトルに「冥の巻」とあることから想像がつくように、顔回は死者の国<冥界>へと降りていく。そこで描かれるのはスーパーヒーロー顔回ではない。神の前には微力な存在でしかない人間として描かれ、冥界に行くだけでも大変な苦労をする。神話などに冥界から死者を連れ帰る話はいくつかあるが、そこでも試練は描かれているとは思うがここでの描写はそれらと較ぶべくもない。あるいは、神話で簡潔に書かれた試練を、生者の行くべきではない世界に行くことがいかに想像を絶することであるかと描きこんでいるといってもよい。何しろ1冊丸々が冥界へ赴くエピソードに費やされているのである。
ここで酒見賢一のすごいところは、その描きこみの中で作者自身が顔を覗かせて語り出す部分があるのだが、そこでこれが作り話であると言い切ってしまうところである。その上で、<気>について語り、生死について語り、神話について語る。様々な中国の歴史について引き合いに出す。それらを元に、これは作り話だといいながら、話に厚みを持たせていく。おかげで読者は安心して物語の中に入り込んでいける。
最初に書いた、子蓉が重要な人物であったと認識したというのは、顔回がここで遭遇するある試練−−問答が非常に重要だと思われるからだ。孔子があまり語ることのなかったという仁や天命についての議論は、『陋巷に在り』における『カラマゾフの兄弟』の「大審問官」にもあたる重要な場面と思われる。その割に顔回の心は揺れ動かされるばかりではっきりした答えがあるわけではないのだが。次巻に持ち越される話の中で、その答えが出てくるのであろうか。
今更いうまでもないが、非常に良質な物語である。困ったことに、肝心な処で話は終わっていて、早く次の巻を読みたくなるのが欠点である。とはいえ、それは良質の物語である証拠なので欠点とはいえないのだが。
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酒見賢一の陋巷に在り8 冥の巻を読みました。気に入ってずっと読んでいる「陋巷に在り」シリーズの文庫最新版です。単行本ではすでに物語りは完結しているらしいのですが、お金がないので文庫が出るのを待って読んでいます。今回は?を助けるために顔回(の霊魂?)が黄泉の世界に下りていくというお話です。実世界では医げいが子蓉がしかけた媚術(蟲術)を相手に死力を尽くして戦っています。顔回の首尾により医げいの運命も決まると言うことで緊迫の巻なのですが、まだまだ決着はつかないようです。次の巻が出るのを楽しみにしていたいと思います。そう言えば村上春樹の海辺のカフカも早く文庫にならないかな。文庫になったらすぐに買う予定なので。
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前回の巻で医鶃(いげい)と子蓉との対決は決着がつかず、途中で終わってしまったので、果たしてこの戦いはどうなるのだろうと先を読み急ぎたくなります。
・・というわけで以前に読んだにもかかわらず、やっぱりこの巻では手に汗握るという表現がぴったりの場面が続出するので、最後まで目が離せません。
昨夜の対決から一夜が明けて満月の夜、再度二人の死力を尽くした戦いが繰り広げられます。医鶃(いげい)は医術だけでなく、魔術的医療も駆使して子蓉の掛けた呪術に対抗するのですが、劣勢を強いられます。
そのため彼は、奥の手として顔回の特殊な才能に賭けて、何と!女神を招きます。炎系の神様である祝融が登場するのがこの巻のすごいところです。顔回は「妤」の魂を追って、祝融の後についてとうとう九泉(冥界)へ降りることになります。
そこで、子蓉と妤の二人に出会い、二人とも連れて帰ろうとするのですが子蓉の仕掛けた様々な難題が顔回の行く手を阻みます。
そしてさすがの顔回も危うしという場面に祝融が助けに入り、遂に敵の本性が姿を現わすのでした。
女神祝融は、可愛い男に弱い!という驚くべき弱点もさりげなく披露されていたり、顔回と孔子との出会いや関係性、孔子の生い立ちなども話の中に盛り込まれいて、今回は変化に富んだ筋書きになっています。
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祝融!祝融!
(三国志にも同名の猛女が登場するぞ。ここからきてたのか!)
女子としては、強い女神には文句なしに憧れモード。
女王様=祝融を前に顔回、草食系の面目躍如なるか!?
とりあえず話は遅々として進みません。
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顔回が妤を救うために冥界に向かいます。この巻の主役は何と言っても男気あり過ぎの女神「祝融」様。強くて怖くてちょっと優しい「祝融」様がかっこよすぎです。顔回は冥界の淵にいる妤を無事救い出す事が出来るのか、いよいよクライマックスって感じです。
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祝融
越境
著者:酒見賢一(1963-、久留米市、小説家)
挿絵:南伸坊(1947-、世田谷区、編集者)
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もはや新本で手に入らず、古本で購入。
七巻まで読み進め、その後全巻揃えるまで待っていたら、ずいぶん間が空いてしまった…。
蠱という術にかかり、病む妤。
それを救うべく、南方の医術者、医鳥兒(ゲイ、鳥偏に兒)の術の助けを借りて、黄泉の国へ赴く顔回。
南方の女神、祝融に先導されて。
この女神、黄帝の子孫ということだったか? おそろしいちからをもちながら、男性に弱いという、ちょっと人間臭いところがあって、楽しい。
顔回の黄泉路の旅も驚きの連続なのだが、顔回に術をかけている現場でも、子蓉の力で、医鳥兒、五六らも命が危険にさらされるほどの攻撃を受ける。
物語の展開としては、そちらが先で、場面転換して顔回の冒険になるんだが…。
延々と続く顔回の話の中で、そっちは大丈夫なのかハラハラしてしまう。
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陋巷に在り 第8巻では、ついに戦いの場は地上を離れ黄泉の国へ。
戦いの展開が面白くて、他の本を読んでいる暇がない。
さあ、はよう、続きを....