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一生、本棚に置いて何度も読み返したい1冊
2005/03/07 21:02
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投稿者:ちょこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
missingからずっとファンで読んでいるが、他の作品と読み比べても彼の文章の特徴、雰囲気、読後感、全てが最も濃く味わえる作品集。
短編をうまく書く作家が少ないと思える現在、本田氏は間違いなくうまい一人だといえるだろう! 志賀直哉を読んだ後のような満足感が得られる。
その読後感は実に「爽やか」。読んだ後に清清しい気分にさせてくれる。まるで5月に吹く風のようだ。それでいてどこか懐かしい気分にさせてくれる、暖かい気分にさせてくれる。
何度読んでもそういう気分にさせてくれるこの本が私は大好きだ。一生、本棚に置いて、事あるごとに読み返したい1冊である。
清冽な喜びと哀しみ。
2003/07/29 11:55
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投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
一番良かったと思ったのは最後の「シェード」。
ミステリアスで、色をつけるならセピア色、のようなストーリーだった。
骨董屋とかなんとなく抵抗があって入れないが、古いものにはそれぞれただならない歴史が秘められていると思った。ガラス職人の繊細で強い想い、想いが強過ぎるが故に起きた悲劇。映画を観ている心持だった…。
他の三編も、どれも言う事なしだった。
ミステリー作家なだけあって、意味深な出来事と恐怖心を波立たせる出来事、それらを巧みに描いていて心地よい。
「イエスタデイ」は女性の描き方が素敵でした。扉を開けたら過去の父親がいる。そこでいつも笑い合う二人。幸せの傍らには哀しみがあるのに、冷静でいる。ドラマチックで、自分が主人公の目線でその場にいる感覚になりました。
おもしろく軽快な最初の短編、しんと澄んだ短編、ひんやりと怖い短編、古い洋画を鑑賞しているような短編。
どれも清冽な喜びと哀しみを秘めているように感じます。
これを読んだ後、書店に駆け込み「MISSING」と「Alone togther」を購入しました。
幻想第四次へと誘われるような透明感と静けさ
2004/04/11 20:19
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投稿者:風(KAZE) - この投稿者のレビュー一覧を見る
銀河鉄道に乗って、窓の外を流れて行く幻想第四次の風景を
眺めているような……って言ったらいいかな。
この日常の世界に生きている人間が、ここと隣り合わせになっている
別の世界への扉を開いて不思議な体験をする、そういう幻想的な話が
全部で4つ、収められていました。
文章もそうなんだけれど、話の雰囲気や味わいに、
硝子細工のような透明感を感じました。
さらりとした手触り。静謐感が漂う話のたたずまい。
愛と死の素材を扱った作品集で、生き生きとして力強い金城一紀さんの
『対話篇』と読み比べてみると、本多孝好さんのこの作品集の静けさ、
透明感がくっきりと際立つような印象を持ちました。
「FINE DAYS」「イエスタデイズ」「眠りのための暖かな場所」「シェード」。
4つの作品のどれが一番気に入ったか? 印象に残るものだったか?
ネットのブックレビューのいくつかを見ていると、おしまいの「シェード」が
一番人気があるみたい。この話は、クリスマスと贈り物というのがキーワード
になっていて、読後、海外の有名な短編をモチーフにしたものかな?
と思ったんですが。話の背景にゆらめく光と影が、どこか惻々とした
味わいの怪談のような趣を感じさせてくれました。
読み終えた今の気分で、私にとって一番印象的な話を選ぶと、
「眠りのための暖かな場所」になるかな。ラストが惜しい、今一歩って
感じもしたんだけれど、一見強そうで、でも脆くて壊れやすいものを
抱えた主人公の女性のキャラに惹かれたから。
続いて、最初の「FINE DAYS」を。
小野不由美さんの「十二国記」シリーズの番外編的作品にちょっとね、
通じる雰囲気を感じたので。登場人物の転校生の彼女にまつわることで、
海外ミステリ『Through a Glass, Darkly』のこと、ふと思い浮かべました。
長篇よりも、本書のような短篇作品に、この作家の持ち味や資質が
より発揮されるように思ったのですが、どうでしょう?
とまれ、とても透明感のある文体と話の雰囲気を持った作家だなと
思うので、これからも注目して読んでいくつもりです。
青空が影を落とす過去の物語
2003/05/05 01:11
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投稿者:温 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この人の書くオンナノコは、オンナノコに好かれるオンナノコだと思う。
それはさておき。
これは、さりげなくホラー要素・ミステリ要素を含んだ短編を書いてきた作者の、初めて「恋愛小説」と銘打たれた短編集だ。
恋愛らしくないキャラクターが恋愛らしくない言動を繰り広げ、身の周りに起こる不思議な現象に諦めをつけて折り合いをつけようと生きていく短編集。
テーマはたぶん、「恋愛」じゃなくて「過去」。
過去の絶望は、曇り空で語られるより、青空のほうが鮮烈に影を落とすみたい。
表題作の読後はもう、その日の空の青さしか、印象になかった。
……ちなみに、オビの「僕は今の君が大好きだよ。たとえ、君自身が、やがて今の君を必要としなくなっても——」という言葉は、「イエスタデイズ」より。
前に進む力をくれる一冊。
2003/04/04 02:57
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投稿者:KC - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー作『MISSING』以来、本多孝好さんの作品は、その繊細で端正な文章とともに、時間とともに取り返しがつかなくなるもの、失われてしまうものがある、という現実を一種冷酷なまでに突きつけます。しかし、それでも読後感はあくまで心地良いのは何故でしょうか。
本書は、恋愛にまつわる物語を集めた短編集ですが、登場人物たちは、大人になることで、或いは今居る位置から一歩踏み出すことで何かを確実に失ったり、リスクを背負うことになったりします。
しかし、彼らは、失われたものや過去への想いを胸に、様々な不安に怯えつつも今を懸命に生き、前に踏み出そうとします。
そんな主人公達の姿が、何かを失うことの怖さよりも、前に進むことの大切さを決して押し付けがましくなく、清々しく思い知らせてくれるのです。まさにこの点が、本多作品の「心地良さ」の源なのだと思います。
そして、そんな彼らの姿を目にし、本を閉じたときには、大人になることが、或いは今居る位置から一歩踏み出すことが、なんだか怖くなくなっている筈です。
「癒し」などという薄っぺらな言葉で片付けたくはない、前を向いて進んでいく力をくれる一冊です。