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みんなのレビュー19件

みんなの評価3.5

評価内訳

19 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

宗教と現実の狭間で人は何を信じどう生きたか

2003/09/07 19:15

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る

宗教とは、生きるためのものか、死ぬためのものか。
私の答えは、そのどちらでもない。
宗教は、人が幸せになるためのものだ。
だから逆に、宗教がネックとなって人が不幸になるならば、
そんな宗教、私はいらない。

そのスタンスは、本篇の主人公・エドモンに最も近い。
恋女房ジラルダが、カタリ派に帰依したから、彼は
ドミニコ会にすがりつく。
自分と妻を隔てるような、そんな宗教なら、俺は要らん。
復讐の一念で、彼は今までの暮らしを棄て、宗教界に身を投じる。

「宗教」を辞書で引くなら、「(前略)安らぎを得ようとする心の働き」
と出てくる。だのになぜ、現在に至るまで、宗教を信じる人々の心は
安寧にならないのか。更に戦まで起こるのか。明らかに、矛盾である。
この物語の登場人物達も、様々な矛盾を抱えている。
「右の頬を叩かれたら、左の頬を出せ」と教えられている
キリスト教徒、シトーの僧院長アルノーが
「忠実なカトリック教徒と異端者とを見分けるにはどうしたらいいのか」
と問われ、
「皆殺せ。その判別は、あの世で神がなしたもうであろう。」
と言う。
「悔い改めた者は幸いである。」と教えられている
キリスト教徒、司令官シモン・ド・ラ・モンフォールは、
改宗を申し出た異端者に
「その改宗の誓いが真実であっても、今までの異端の罪で処刑されねば
ならぬ。もし、その改宗の誓いがいつわりならば、偽証の罪で処刑
されなければならぬ。」
と言い放つ。
現世に生きながら、その現世を否定するカタリ派も、
やはり矛盾している。
そして当の十字軍も、「ビザンチン帝国からの要請による聖地奪還」という
お題目と、宗教の名を借りた略奪や、果ては人身売買、カタリ派に対する
魔女裁判のはしりのような所業という実体とが、次第にかけ離れる
矛盾した存在である。
宗教界でさえ、多くの矛盾が行き交うこの世界で、一体人は、
何を信じればいいのか。
シモン・ド・ラ・モンフォール、トロサ伯ラモン、エドモン、ジラルダ。
彼等はそれぞれに悩む。ある者は現実逃避をし、ある者はうまく
自分の中で帳尻を合わせ、ある者は夢想の世界に逃げ込み、
そしてエドモンは言う。
「俺の神さまは、おまえやて。」
最後に信じるのは、自分がこうだと決めたもの。
国が、領土が、領主が変わっても、これだけは、変わらないから。
ジラルダも、やはり一つの選択をし、彼に答えを返す。
誰が納得しなくても、自分の人生を貫き通す、その潔さ、哀しさ。
ああ、なぜ佐藤作品の主人公達は、いつも愛すべき不器用達なんだろう。

佐藤氏独特の、地文と語り文を混ぜた口調で、本の中で大人しく
文字になっていたはずの主人公達は、いつしか私の目の前で、動き、話していた。
時代も舞台も違うのに、佐藤作品のキャラクタ−達を、いつも身近に感じる事ができるのも
この語りのマジックと氏の巧みなる人物造型故だろう。

今夏、ほんの10年前まで1つの国だったチェコとスロバキアに行ってきた。
添乗員が、現地の人に
「分かれてから、どうですか?」
と聞いた所、
「政治的には、分かれて良かったのかもしれないけど、住んでいる身にすれば、
一緒の方が良かった。」
と言われたらしい。
とうとうフランスに組み込まれてしまったオクシタニアの人々も、10年後、
逆の事を言ったのかもしれないな、と思った。
そうそう、チェコ語とスロヴァキア語の違いは、
「標準語と関西弁ほどの違い」だそうだ。

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紙の本

宗教と人間

2003/07/25 21:15

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ケンタッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者の小説を読むのは実は初めて。新聞の広告を見て買った。異端、とりわけカタリ派には興味があった。語り口ゆえにのめり込んでしまった。キリスト教の異端と正統との確執。はざまに漂う人間。そしてひたすら政治的な人間。男と女。王と庶民。相反する人間達。混然とした世界。それらが圧倒的スケールで描かれる。宗教とは何か、そんな問いは愚問。善か悪か、それもまた愚問。終末は圧巻。

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紙の本

話は、単純。でも、苦さを感じないで読むことは出来ない。国民そっちのけでマスコミと政治家だけが熱くなっているこの時期に、この作品が書かれた意味は、大きい。

2003/11/14 20:31

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

いかにもヨーローッパ中世という印象の装画は八木美穂子、それに金字のタイトル。これが日本の本だとは思わないだろうという印象の、特に背のデザインが秀逸な装丁は松田行正。最後に地図が金城秀明とある。おいおい一体全体地図なんて、どこについていた? それがあればもっとオクシタニアのイメージがはっきりしたぞ、と叫んでしまった。集英社さん、地図ってどこ? まさかあぶり出しとか、そんな裏技使ったりなんかして。

そこでお願い。わざわざ地図と断るくらいなんだから何葉ものそれが、多分付録か何かで付いていたんだと思う、でも、そういうものは、えてして持ち去られたり紛失したりする。小説を読みながら、どこに出いていたか忘れるような地図を本文中に入れるよりは、別紙にするほうが親切かもしれない。でも、無くなってしまうよりは、見にくくても、あるほうがありがたい。だから、本文中と、別紙の二つを用意しよう。とまあ、これは本当に地図がある場合のお願い。

舞台は13世紀末、場所はピレネの山並みとあるから今のスペインだろう。深山を分け入るのは、80歳を越えたであろうドミニコ会士とその従者。老人の名はエドモン・ダヴィヌス。彼の口からはアルビジョワ十字軍、異端のカタリ派といった言葉が囁かれる。彼らが向うのは古の戦場モンセギュール。

第一章は、13世紀初頭、パリの西方に住む小貴族シモン・ドゥ・モンフォールがシトー会の大修道院長の要請で十字軍に参加するところから始まる「十字軍」。第二章は、若きエドモンがシモンに追われ、故郷のトロサの都に帰りつき、運命の少女ジラルダと出会う「薔薇色の都」。第三章は、一度は北のフランスの手で制圧されそうになったトロサを継いだ若きラモン6世を描く「北の王国」。第四章は、ドミニコ会士となって、故郷に舞い戻り異端審問で信者を殺戮したエドモンの「異端審問」。第五章は、カソリックとカタリ派の間で揺れ動くラモンの苦悩「無冠の帝王」。第六章は、カタリ派の宗徳女となり、今はモンセギュールに立てこもるジラルダの「聖地」。そして、今はすでに廃墟となった戦場に佇む老いたエドモンのエピローグ。

巻末には、佐藤が参考にした史料が列記されるが、その殆どが翻訳されていないものばかり。その量もだが、日本人が殆ど知ることのないアルビジョア十字軍にまつわる話を、関西弁の会話を交えながら、少しも違和感なく読ませる力は、まさに佐藤ならではのもので、小島英記『宰相リシュリュー』の、確かな足取りではあるものの既知の史料に基づく小説とは雲泥の差。

とはいえ、中味の濃さ故か文章が易しいわりに、決して読みやすい作品ではない。本としては一冊だが、優に単行本三冊くらいの充実感がある。その原因は、日本人に馴染みの薄いオクシタニアという場所と、中世という時代、そして何よりキリスト教が主題(実は、男女の思いのすれ違いのほうが、合っているとは思うけれど)ということにある。

で、いつもほどに楽しめないのは、やはり豪快な男がいないのと、ジラルダに振り回される男たちの不甲斐なさ、そして自らは決して戦場に立つことをせず、貴族や民衆を宗教の名で脅し、戦地に赴かせて恥じることのない正統・異端を問わない教会の人間たちの腐敗と、いい加減さに、私たちの祖父が参加したついこの前の戦争における軍人や政治家の姿を、いや今も国会でさも勇ましげに国防を叫ぶ、蓄財に走る政治家の姿を見てしまうからだろう。そう、私たちだって国家神道という魔物を、ついこの間まで持っていてそれに翻弄されていたのだ。

この本は佐藤の本の中では『カエサルを撃て』に近いほうの作品というべきだろう。話は、単純かもしれない。しかし、苦さを感じないで読むことは出来ない。政治家とマスコミだけが熱くなっているこの時期に、この作品が書かれた意味は、大きい。

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紙の本

13世紀フランス南部の豊饒の地「オクシタニア」の覇権と異端カタリ派をめぐる複雑な対立の構図を丹念に描く歴史小説であるが………。

2003/08/06 17:14

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

オクシタニアは当時トゥールーズ伯を中心とする複数の諸侯がそれぞれの領地で繁栄を競っていた。物語は1208年ローマ教皇使節がトゥールーズ伯の家臣に殺害されたことを契機に教皇インノケンティウス3世が討伐の十字軍を宣布することに始まる。北フランスの諸侯や騎士団で組成された十字軍が、オクシタニアの諸侯連合と攻防戦を繰り返し、一時は敗退する。やがて、フランス王の介入による、1244年異端カタリ派の最後の拠点モンセギュールの陥落まで、すなわちフランス王の南部征服完成までが描かれる。もともとこれはローマ正統派キリスト教とオクシタニアに根付いた異端カタリ派との宗教戦争であった。

さて日本人の感覚からするとヨーロッパの歴史にある宗教的支配と政治的支配の二重権力構造がなかなか理解しがたいところであるが、聖と俗、両者の対立・恫喝・牽制・妥協・懐柔・擬制・馴合い・協力、また財政面でのもたれあいなどの多面的素顔が具体的に描写され実に興味深く読み進んだ。したがって二重権力構造下での覇権争いを描く戦国大活劇絵巻と受け止めていたのだが、途中からそれだけではないと気づくことになる。

後半、異端カタリ派の完徳女ジラルダとこれを殲滅せんとする正統派ドミニコ会異端査問官エドモンの宿命の恋愛ドラマに様相は一転するのだが………。作者の意図は単なる二人の恋愛賛歌などではない。権力とは無関係なところにいる一般の信仰心厚い人間が極限状況で神とどのように向き合うかを突き詰める。

世俗の権力者は神に支配されながらきわめて現実的に「神」と折り合いをつけている。聖職者は神の言葉を伝えながら「神」の名の下に権力にあぐらをかき、飽食と悦楽に身をゆだねている。実に不愉快な輩であると誰しもが感じる。肉食,殺生,生殖,婚姻,所有など、いっさいの世俗生活を否定し、しばしば断食して苛烈な苦行を実行するカタリ派ジラルダのほうが神に近いところにおられるのではないかと私には思われる。一方の正統派にあって清貧主義の実践と神学的内容の豊かな説教活動を使命とするドミニコ会修道士・異端査問官エドモンのほうがよほど神のしもべにふさわしく思えるのである。

二人の恋愛感情が燃え上がる。しかし、それぞれの神の教えに忠実であればあるほどその対立する信仰心には世俗的「折り合い」など結局はありえないのだ。うまくやればいいものをと言いたいところだが、ラストのモンセギュール陥落におけるふたりの内面の葛藤はあわれである。恋愛が成就できないことをあわれと言っているのではない。神の呪縛から豊かな人間性やあふれる生命力を解放できない人間をあわれと思うのである。

同様のテーマにある著者の作品『王妃の離婚』『カルチェ・ラタン』の直接的人間賛歌に比較するとやや冗長であった。

書評集「よっちゃんの書斎」はこちらです

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歴史と宗教、男と女。

2003/07/20 00:54

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひゅうが - この投稿者のレビュー一覧を見る

これは男と女の物語だ。男は追い、女は逃げる。途中で逆転するかのように思えたり、実際に逆転したり戻ったり。途中、ずいぶんはしょってるよなあ、と感じるところもある。書かない方が伝わる、と感じるヒトと、何だか話が飛んだよね、と思うヒトと半々かもしれない。だが、最後の十数頁では泣ける。出来過ぎたラストによってではなく、そこに至るまでのあれこれに(詳しくは書けないが)、それまでどのように感じていたヒトでも胸に迫ってくるものがある。それはもしかしたら、とても身近な自分の物語を重ね合わせているからかもしれないが。
最後に。関西弁はいい味出してます(これは読んでのお楽しみ)。

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2005/04/30 18:03

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2006/10/01 22:04

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2007/09/09 00:38

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2003/08/11 01:57

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2009/05/07 13:33

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2009/06/21 09:27

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2009/06/30 10:04

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2009/12/15 09:16

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2011/07/02 17:47

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2012/05/21 19:03

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