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ジャック・デリダは現代哲学者の中でも注目されていた人でした。故人です。2004年に亡くなりました。「灰」について語られている作品。詩のようです。とても面白いです。
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この本の最大の失態は、デリダがフランスのラジオで著名な女優とやったラジオドラマの脚本であるということをあとがきにしている点である。本来は前書きで書くべきことなのだ。しかしながら、灰という抽象的な存在を使い、その存在の哲学的な根拠を簡潔に述べているあたり、素晴らしいと思うが、素人には全くおすすめしない良著である。
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この本では、「そこに灰がある」という一文を、複数の話者が対話(ポリローグ)によって解体しつつ展開していく。
灰は焼失の痕跡である。
それゆえに、灰自体を語ることはできず、話者らは「そこに灰がある」ということについて語っている。
「すべての痕跡同様、この痕跡も自分から消えていく運命にあり、道を見失わせる一方で、記憶を灯すのだ」(本文P60)
灰は記憶そのものではありえない。
灰はそこになにかが存在し、それが焼失したということを示す痕跡としてある。
そして「そこに灰がある」ことによって、私たちはそこで何事かが、跡形もなく焼失したという出来事があったことを知る。
けれど、それは何事かがあったであろうことを留める記憶でしかない。
何が起こり、何が焼かれたのか、を知ることはできない。
そのような言及不可能性を示すものとして「そこに灰がある」。
すでに失われてしまった他者の、回復不可能な残余である灰を、残余のままに語ることの困難な試みがここではなされている。