- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
旅行記として読めば良いかもしれませんが…
2003/11/02 07:37
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
奈良を舞台とした旅行記に近い物語だが、恩田さんの才能が発揮できた作品とはいいがたいような気がした。
恩田さんの既読の作品では『ドミノ』と『ロミオとロミオは永遠に』が大好きで、この2つの作品はまさに恩田さんしか書けない領域の作品だと思っています。
本作はどうしても比べてしまい、不満が残りました。
個人的にテンポのいい作品を恩田さんに期待してるのも要因となってるのでしょうね。
ミステリー的要素も多分にあるのですが、読んでて結末が予想できた人も多いはずだと思う。
展開的には死人が出たりでハッとさせられる部分も途中であるのだが、いかんせん登場人物が魅力薄なんで感情移入しにくい点は否めなかったなあ。
その後、もっとどんなことが起こるのだろうと期待してたのですが、展開が期待より月並みだったような気がします。
結局、失踪した異母兄を探しに行くストーリーより、旅行記としての印象の方が強いのがとっても残念。
奈良の観光名所の風景描写シーンに関しては、やはりプロの作家の描写は上手です。
遠方の方や旅行好きの方が読まれたら思わず奈良に旅行したくなるのかもしれませんね(笑)
登場人物すべてがもやもやしていて、読後も物足りなさが残った作品でした。
こう言った雰囲気が好きな方もいらっしゃると思いますが、万人受けする作品とは言い難いと思います。
次作期待しましょう。
紙の本
結局、今日は恩田陸特集になってしまったなあ。出版点数という点では評価できるけれど、所詮はトラベルミステリを超えてないんだよね、私が内田康夫や西村京太郎と決別したのも、それが原因さ
2004/01/10 22:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
明日香にある橘寺の前に佇む人影、そんな如何にも映像になりそうな場面で始まるこの物語は、じつはその瞬間から私の予想を裏切る展開をする。ある意味、それを楽しむ話なので、筋を追いかけて紹介することは、読む側の興を殺ぐだろう。連城三紀彦の小説を思わせる、とでも言っておけば、それだけで雰囲気は伝わるかもしれない。
主人公の名前は静、苗字や年齢は何故かはっきりしない。話の流れから追うと32歳くらいだろうか。彼女は教員である厳格な母の手で育てられたが、今は一人暮らしをしている。離婚暦があるようだが、それもさらりと触れられているだけで、相手がどうだといった情報は殆どない。
彼女には、母親の違う渡部研吾という名の現在36歳の兄がいて、彼の存在を知り出会ったのは、中学二年の、父方の祖母の葬儀の時のことで、その時のことか、直後か、彼の同級生で恋人の君原優佳利に紹介されている。こういったことも、あまり明確には描写されてはいない。それは、その後、静が兄と殆ど連絡を取ったりせず、無縁に育ってきたせいだろう。
そんな静に、18年前に出会ったきりの、国立大学の工学部を出て、今は大手電気メーカーの研究員である君原優佳利から電話が入った。フリーライターとして独立し、最近はその名前も知られてきた渡部研吾が、取材先の奈良で失踪し、連絡が取れなくなって3週間も経つ、できれば一緒に奈良に出かけ、研吾を探したいというのだ。
登場人物も限られているし、先ほど書いた理由もあるので、あとは読んでもらおう。恩田らしいといえば、そうだけれど折原一、連城三紀彦であってもおかしくはない内容だろう。違うのは文学的な香りで、この三人がともに早稲田大学に関係しているというのが、また面白い。
ある意味、極めて品のあるトラベルミステリ見たいな風情があって、最近、娘たちと奈良を歩いた私にとっては、それだけで点数を入れたくなるような物語で、ついでに小説に出てくる地名を羅列しておこう。京都、明日香、橘寺、橿原神宮、山辺の道、畝傍山、藤原京、高松塚古墳、大和三山、猿石、石舞台、石神神宮、郡山、桜井、法隆寺、広隆寺、春日山、興福寺、二月堂。あまりに有名すぎて引く人もいるかもしれないが、想像よりは上品に扱っていて違和感がない。
ま、気になるところがあるとすれば、人付き合いの苦手な静の心理描写で、いい加減にしろ、とは思うけれど、こればかりは読者ではどうにもならない。最近の小説によく見る典型的な人物造形で、それは現実に社会でもよく見るようになったタイプなんだろうなあ、と思う。それと、話の展開だろうか。話を複雑にすると、読者のほうは、途中までは驚きをもって読むけれど、以降は、またか、で流し始める。技巧というものの危うさも三氏に共通していて、ま、ほどほどに、といいたい。
カバー写真は中島博美、ちょっと見て『太陽待ち』の西尾彪と、『世界の中心で、愛を叫ぶ』の川内倫子の写真を思い出してしまった。小説に比べて、かなりいい感じである。繰り返し書いておこう。2003年の恩田の仕事のベストは、カバーも、出版形式も含めて『蛇行する川のほとり』、これで決まりである。