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帝国を壊すために 戦争と正義をめぐるエッセイ みんなのレビュー

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11 件中 1 件~ 11 件を表示

紙の本

奴隷国家の臣民による、奴隷国家の臣民のための本

2003/12/13 21:17

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:sheep - この投稿者のレビュー一覧を見る

ブッカー賞を得ている作家の「戦争」をめぐるエッセーを集めた本だ。
9/11の自爆攻撃の話から始まる。余計なことだが「世界貿易センター」は誤訳だろう。本当は「世界金融取引センター」だ。テナントを調べればわかる。テレビ、洗濯機を輸出するから狙われたのではない。日本は、テレビ、ラジカセ、車の輸出ゆえ、『かつて』中近東で(有り難い誤解だが)尊敬されたのだ。
ところで著者の言うとおりタリバンもフセインもアメリカの援助で強くなった。タリバンは、アメリカとパキスタンが、ビン・ラディンはCIAが育てた。しっかりと妖怪を育ててから、おもむろに破壊する。アフガニスタンの傀儡大統領カルザイはパキスタンを経由しアラビア海に天然ガスを搬出するパイプライン敷設計画を立てていたユノカルの最高顧問だった。醜悪な事実を日本のマスコミは報じない。
アメリカでは、兵器産業も主要メディアも外交政策も、同じビジネス界の大物に牛耳られている。だから、そうしたテーマについて真実がメディアに取り上げられると期待するほうがおかしい、という。それは日本も全く同じだ。
で、われわれはどうなのだろう、と著者は自問する。メディアによる馬鹿げた宣伝と知りながら、その攻撃を麻痺したように受け続けているわたしたちは? ほかの人たちと一緒になって言えますか? もうたくさんだと。
彼女はアメリカのみに舌鋒を向けるわけではない。「民主主義の女神」の章で、自国インドの暴虐を列挙する。そうしたファシズムと戦うには、新聞のコラムや、ゴールデンアワーのテレビ番組が熱情と大げさな見かけにのっとられるのを許さないこと、メディアを放置しないことだと主張する。アメリカ、サンタ・フェでの講演「来たれ九月よ」も良い。アメリカ人に向かって、チリを含む中南米、パレスチナでのアメリカの悪質な関与振る舞いを指摘する。自由市場が破壊するのは国家の主権ではなく、民主主義だ。ソヴィエト式共産主義が失敗したのは、本質的に悪をかかえていたからではなく、欠点を含んでいたからだ。あまりにも少数の人々にあまりに強大な権力を与えすぎた。アメリカ式21世紀版市場資本主義も同じ理由で滅びるだろう、と。ブラジルでの講演「帝国に抗して」では、どうやって帝国にあらがうかを語る。わたしたちの戦略は、帝国に立ち向かうだけでなく、包囲してしまうことだ、と。
ニューヨークでの講演「帝国製インスタント民主主義」も読み応えがある。
「わたしが今夜ここで、を主題としてお話したい、とはっきり申し上げていいでしょうか? 奴隷としての立場から、王を批判する歯に衣を着せぬ道化として」。そして「メディア産業が、アメリカ政府の政策に誠実に協力する」と語る。
国務長官パウエルの息子、マイケルは連邦通信委員会議長であり、通信業界のさらなる脱規制化を提案しているという。脱規制化すなわち、より高度なメディア統合だ。アフリカ系アメリカ人は、アメリカ人口の12%でしかないのに「志願兵」の陸軍では29%だという。
「イラク復興計画」は一体誰の懐をうるおすのか? ベクテル、ハリバートン…
イラク農業再建を担うのは世界最大穀物商社カーギルの元役員で、フセインを人権委員会の長にすえるようなものだという。
わたしたちができるのは、帝国に同盟する企業の商品ボイコットであり、また大企業メディアの実態を暴き出すこと、そして代替する情報発信の場を作りだすことだという。その通りだろう。
わたしたち他国の人間は、奴隷国家の臣民です。あなたたちには輝かしい抵抗の伝統がある。やるなら今、と語る。英語で直接アメリカ人にこうした言葉を語れる彼女こそ「自由の女神」かも知れない。
最近読んだ「アメリカン・ディストピア」が思い出された。我々奴隷国家の臣民はどう行動すれば良いのか、考えさせられる良書だ。

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紙の本

怒ることを忘れた知識人に

2003/10/15 08:20

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

2001年9月11日、アメリカのワールドトレードセンタービルへのテロ攻撃がなされて以来、アメリカという国の暴走はとどまるとこころを知らない。アフガニスタンへ、そしてイラクへ、国連をも無視したアメリカの単独行動が続く。
本書は、そんなアメリカへの、また核問題を抱える筆者の出身国であるインドへの怒りの書である。筆者はインド人作家で女性のアルンダティ・ロイ。本書は作家らしい繊細な文体で書かれているが、中身は徹頭徹尾、彼女の怒りの言葉で満ち溢れる。
アメリカは、どうしていつもこうなのだ。その独善的・放漫体質は朝鮮戦争・ベトナム戦争以来さっぱり変わらない。それどころか、さらに今回はブッシュという坊ちゃん大統領の低劣な個人的資質が加わって、そのわがままぶりは見るに耐えない。
世界は今、彼女のような怒りをもっともっと必要としている。単純におかしいことに対しては怒りの声を挙げるべきだ。ああ、しかし悲しいかな、英国の主導者にも日本の主導者にもそんな常識的な感覚は無い。どんな時でも単純なアメリカ追随。こうなれば、そんな主導者に対しても、怒りの声は向けられるべきだ。
日本でもかつて民衆の怒りの声が響き渡った時代があった。安保闘争における怒りの声は政治をも動かし、岸という戦犯総理大臣を退陣に追い込んだ。
さて、今の日本にそんな民衆の怒りの声の爆発を期待することができるか。答えは否。現代においても民衆の怒りの声は確かにある。しかし、それが拡大することは難しい。なぜか。一つ一つの民衆の声はか細い、これはかつても現代もかわらない。しかし、かつての時代にはそれをフォローする強い側面支援があった。それは国家ではなく民衆の方に顔を向けたジャーナリズムであったり、知識人達であった。しかし、今やジャーナリズムは情報産業と化し、国家の宣伝媒体でしかない。最後の頼みである知識人と呼ばれる人たちにも期待はできない。国家のお仕着せの場所で安穏としている御用学者たちに何も期待はできない。
この本は、日本の知識人と呼ばれる発言力を持った人たちに読んでもらいたい。もっと自分に正直に生きること、外に対して、必要な発言を行うこと。そうでないと日本は危ない。

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紙の本

ものの見方をくつがえす力がある

2018/05/28 23:30

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る

アルダンティ・ロイというインドの女性作家の文章を集めた『帝国を壊すために 戦争と正義をめぐるエッセイ 』には、日本も含めたアメリカ中心のものの見方をくつがえす力があります。
示唆に富むフレーズがいくつもあります。
ひとつだけ書き写すと「色のついた布にすぎない国旗なる代物が、ときの政府によってまず自国の人々の精神をがんじがらめにするのに使われ、つぎに死者を埋葬する儀式の経帷子となる。」

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紙の本

フィクションに抗するもの──生きた人間がつむぎだす言葉の力

2004/01/18 14:31

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る


 帝国の二つの定義。第一に、帝国とは「アメリカ的生活様式」のことである(「アメリカの新しい戦争にとって勝利とは何か」と尋ねられたラムズフェルド国防長官は、「アメリカが自分たちの生活を続けられることを世界に納得させられればそれが勝利だ」と答えた)。第二に、帝国とは「新自由主義的資本主義」のことである。その婉曲語法は「民主主義」であり、反対語は「世界の複数性」である。

 帝国とはフィクションである。そこでは事実など問題にならない。これに抗するためには、記憶を研ぎ澄まし、歴史から学ばなければならない(たとえば1973年9月11日、チリの軍事クーデターのこと、1922年9月11日、イギリス政府によるパレスチナの委任統治宣言のこと、1990年9月11日、ブッシュ・シニアによるイラクに対する戦争の決定発表のこと、そして2001年9月11日の同時多発テロ)。

 また、帝国とは誇大妄想だ、なぜなら帝国は下腹部(経済組織)に弱点があるから。市民的不服従と商品ボイコット(民衆による経済制裁)によって帝国を包囲すること。

 ──ペンは剣より強いというけれど、武に拮抗しうる文章の力を実感することはそうざらにあることではない。口語文や女言葉、時にはあやしい関西弁まで「駆使」した訳文にはちょっと疑問を感じないではなかったけれど、それはまあ許せる。本書に収められた八篇のエッセイで著者が身をもって伝えようとしたことは、生きた人間がつむぎだす言葉の力そのものなのだから。

《わたしたちの戦略、それはたんに〈帝国〉に立ち向かうだけでなく、それを包囲してしまうことだ。その酸素を奪うこと。恥をかかせること。馬鹿にしてやること。わたしたちの芸術、わたしたちの音楽、わたしたちの文学、わたしたちの頑固さ、わたしたちの喜び、わたしたちのすばらしさ、わたしたちのけっして諦めないしぶとさ、そして、自分自身の物語を語ることのできるわたしたちの能力でもって。わたしたちが信じるようにと洗脳されているものとは違う、わたしたち自身の物語。》(145頁)

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2009/02/01 23:50

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2011/02/06 23:05

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2011/05/15 18:52

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2012/04/09 17:06

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2017/02/01 09:01

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2020/09/26 19:14

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2021/03/18 08:23

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