紙の本
私の大好きな長新太さんが亡くなった。長女もショックだったようだ。その長さんを世に出した人が、絵本の本質を沢山の図版を使いながら見事に解き明かす
2005/06/27 21:24
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
素適なデザインの本です。まず色あいがいい。強烈な色は殆どありません。暖色を基調にしてオレンジ色を上手に使っています。そこに靉嘔の版画のようなカラフルな紐を配して、それがちょっと斜め。この斜めっていうのがデザイナーの個性ですね。それが杉浦康平さんの手法らしいです。
エラソーに書いていますが、それを教えてくれたのが杉浦と同じくブックデザインの世界で活躍する松田行正『眼の冒険』でした。杉浦は度という角度で画面を振ることに拘り、それを上手に活かしているそうです。私が大好きな雑誌季刊銀花のデザインも杉浦だそうです。おっと、相変わらずの脱線でした。
で、この角度を活かしたブックデザインは、勿論、杉浦康平+佐藤篤司+島田薫です。三人名前があると、誰が何をしたのかな、カバーは杉浦で、もしかすると図版のレイアウトは佐藤?それとも島田?などと空想の羽を広げてしまいますね。うーん、ちょっとマニアックな本の楽しみ方でした。
でも、その細かいところまで楽しみ尽くす、それが子供が絵本を楽しむときの姿だそうで、ついつい大人が見落としてしまうようなところに作者の意図があることを見抜いてしまう、松居はこの本のなかでそう言います。そして優れた絵本作家というのは、そこまで考えて本作りにあたるそうです。五味太郎さんの『絵本を作る』などを読みますと、五味の場合はアイデアがモクモクと湧き出してあっという間に絵本ができてしまうようです。当たり前のことですが、色々なやり方があるんだなあ、と思います。
それから、この本はいかにも内容に相応しいように沢山の図版、絵本の頁が使われています。色も含めて、とても楽しいものですが、本文と図版頁が少しずれていたり、見開きの図版についている文章が、ちょうど真中の綴じ代部分に来てしまい、思い切り開かないと読むことが出来ない、など、せっかくここまでやったのに勿体無いなあと思う部分もあります。
いずれにしても、内容が豊かで、歴史的なアプローチもあり、単純に子供には良いものを、といったありふれたアプローチをしない点は、さすがだと思います。
松居直のことを私は全く知りませんので、著者略歴をよく読んだのですが、1926年京都生まれで同志社大学卒業。福音館書店の創業に参画。56年「こどものとも」を創刊、編集長として赤羽末吉、長新太など多くの絵本作家を世に出してきたそうです。編集部長、社長、会長を経て97年より相談役。『ももたろう』『だいくとおにろく』といった絵本や、『絵本の森へ』『絵本の力』『にほんご』なども執筆しているそうです。
そうですか、あの「こどものとも」ですか。多分、我が家の次女の部屋には、きっと夫が買い与えた「こどものとも」が何冊かあるはずです。福音館書店には、本当にお世話になりましたし、今後もお世話になるだろうなあ、そう思います。ま、私などは、この本が福音館書店ではなくNHK出版から出された、それのほうがよほど不思議です。デザインだって、NHK出版らしくありませんしね。
ともかく、押し付けがましくなく絵本を語る、しかもそれが本質的なことである、誠実な作り手、編集者が真面目に、そして優しい口調で語ってくれる、いい本です。ここでは子供の視点で絵をじっくり見ること、あるいは声に出して読むことの重要さも説かれていますが、説得力があります。今すぐにでも絵本を取り出したくなります。
最後になりましたが、著者が世に出したと書いている長新太さんの訃報が、新聞に載っていました。私が長さんの絵本を書評したのは、2004年に平凡社から出た『長新太のチチンプイプイ旅行』が最後ですが、もっともっと読みたかった、そう思います。こん素適な世界を描く長さんが行く天国は、さぞかし、不思議な生物がたくさん闊歩する不思議なところでしょう。謹んで、ご冥福をお祈りします。
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烏兎の庭 第一部 絵本 1.25.03
http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto01/yoko/ehontokodomoy.html
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絵本の「絵を読む」ことがどういうことか、幼少の私は絵本の何に魅了されていたのか、思い出させてもらったように思います。「絵を読む」感覚を取り戻しながら改めて絵本を読んでみると、物語の世界がぐぐぐっと心に入ってきて驚きました。
カラーページが豊富で、絵をたくさん見ることができるのも嬉しいです。多くの名作絵本が、読みたくてたまらなくなるような絵と、松居さんのあたたかな解説とともに紹介されています。
絵本をからめて研究を行いたいという身の私は、特に最終章「絵本のこれから」に、奮い立たせられました。多文化社会において、子どもたちの、多文化を受け入れていく感性が育つために絵本が役立つのではないか…。教育現場における絵本の活用について、視野が広がりました。
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【37/150】松居直さんの絵本に関する図書は他にもいくつか読んでいるが、本書を読んで更に絵本に深さ、大事さを実感できた。絵本は絵を読む・・・。私も新しい絵本に出会うとき、まず「絵」を読むようにしている。「絵」を見ていろいろ物語の筋を想像するというか空想するのは意外に楽しいよ。(でも最近絵本を見てないなぁー)
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男性目線からかかれた絵本論は新鮮だった。さすがに、素晴らしいと評される絵本の編集に関わってきた人だなぁと思った。
松居さんは子どもに絵本を読んであげていたらしく、お母さんに読んでもらう嬉しさとはまた別の嬉しさがあるんだろうなぁと思った。
将来、結婚したら旦那さんにも子どもと一緒に絵本読んでもらいたいなー。
あたしは一人読みの記憶が強烈に残っていて、母や父に絵本を読んでもらった記憶がないから尚更なのかも。
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絵本を読みたくなるし、子どもに読んでやりたくなる本。
絵本について深く知ることが出来ます。
(「松居直のすすめる50の絵本」から続けて読んだら、結構重なることが書いてあった。)
信頼の松居直さん。さすが絵本の第一人者!
自分自身も楽しみながら、子ども達に絵本の素晴らしさを伝えていきたい。というか、それが大人の義務なんじゃないかと思う。
良い絵本の豊富な時代に生きている私達は幸せ者だなー
保護者会で絵本読み聞かせ、やってみたい。
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絵本という文化、芸術の魅力が縦横無尽に語られる。松居さん、すごく熱い。日本の絵本出版を切り開いてきた思想と行動がずんずん響く。たとえ絵本に関心が無くとも、自分の人生をどう生きるのか、という意味で得るものが大きい。いわゆる人生訓は全く説かれていないが、人格的な影響を受けた。人に惚れ込み、想いを形にし、反省もできる人間。模範、理想である。
絵本の役割、意味も説かれるが、それ以上に、作り手の苦労がしのばれる。昔話の文体、韓国、中国の絵本出版は、すでにあるものを出せばいいというわけではなく、人にきちんと届けるためには、「翻訳」「翻案」する必要があったのだ。
・絵本とは何か:絵本そのもの。絵本と読者。
・本としての絵本:児童文学。挿絵など児童出版美術。作品論、作家論、画家論。出版文化としての絵本。総合芸術としての絵本。絵本の源流と歴史。モチーフによる比較研究。
・言葉を母からもらう。その前に命も。その次に名前を。
・レオ・レオニ:生命に対する礼節
・同:個人的な解決がないところに社会的な解決はない。
・声の言葉には息が通っていて、文字の言葉に隠されている言葉の生命を目覚めさせる。
・文を読む時には、ストーリー(それから)とプロット(どうして)の構成にも気を配る。
・新しい時代を開く群像は、いつの時代でも若い世代。
・先進地域のみならず、発展途上地域においても、子どもの育ちをゆがめる複雑な情況が拡がりつつある。語り言葉の喪失は、文化の破壊、人間性の崩壊、民族の存亡の危機。
・キレるとか暴力化するということは、言葉を失うこと。言葉を失うことは自分を失うこと。
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松居さんの絵本に対する情熱がビンビンと。おなじみの絵本の制作秘話や作家との出会い、絵本の読み解き方など面白い。改めて家にある本を見たがまた面白い。絵本て奥深いんだなーと再確認。
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絵本とともに歩んできた編集者、松居直さんが、自身の子ども時代の経験、日本での絵本の歴史を振り返りながら、絵本について語っている。具体的な絵本としては、エッツ(もりのなか他)、フェリクス・ホフマン(おおかみと七ひきのこやぎ、ねむりひめ)、バージニア・リー・バートン、レオ・レオニ、そして、おおきなかぶ、がらがらどん……。
『絵本とは、言葉の湧きでてくる世界です。』
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2016.11月。
すべて胸に刻みたいことだらけ。それぞれの絵本について、こどものとも誕生について、昔話について、日本の絵本の歴史についてなど、絵本第一人者の素晴らしいお言葉。重みが違う。特に、エッツの『もりのなか』、『ねむりひめ』『おおかみと七ひきのこやぎ』『おおきなかぶ』、レオレオニなど、それぞれの絵本がどういうものなのかについて深く掘り下げて解説しているところが、とてもおもしろかった。作者の思いや子どもの目線、心の動きまで、とにかくたくさんのことを教えてくれる。絵本は奥が深い。歴史と使命を背負って仕事をせねば。もっともっと勉強せねば。 .
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院生の頃に買って積んだままやったのを、子がうまれて絵本選ぶ参考にしよーと思って今更読みました。
絵本選ぶ参考にはあんまりならんかったけど、この人まじでほんとすごい人やな。この人がおらなんだら今の絵本界ないやろってくらい。
今はすごい大物な作家さん見出しまくってる。とりあえず長新太のデビュー作読みたい。
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Vol.121 勝負に打ち勝つために秘かにトレーニングしている方法は、これ!http://www.shirayu.com/letter/2011/000240.html
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戦後から、日本の絵本の世界で第一級の企画編集者として活躍してきた松居直の本。数々の超有名な作品がこの人の手になるものと初めて知った。永遠不滅級の名作のあれもこれも……と本当に驚いた。
しかし、本書は著者の功績自慢の本ではない。絵本とは何か、大切なことは何か、どういう考え方で絵本は作られるべきか。重要なことが語られている。
頷けることが多くとても勉強になり、感銘を受けた。