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本朝聊斎志異 みんなのレビュー

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みんなのレビュー5件

みんなの評価3.8

評価内訳

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紙の本

書評は長いばかりが能じゃあない。小説だって同じだ。小さな話だって、まとまりゃこんなに面白くなる。というわけで、いつもより短めの絶賛評です

2004/03/19 20:35

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

集英社の本といえば、版画家の山本容子のカバーというのが、私の短絡的な発想で、今までも沢山楽しませてもらってきたけれど、注を読むまでは、山本容子!とは思いもしなかった。それは、安岡章太郎にも似た本があったことや、たとえばこの本で言えば、背のデザインなんかは明らかに岩波本風だからかもしれないよ。いや中身も含めて総体的に岩波しているといってもいい。しかもタイトルが『聊斎志異』、小林恭二と結び付かないのである。

中味は盛りだくさんである。全部で54話。長さも15頁くらいのものから1頁に満たないものまで、と様々だし、時代も王朝時代だとばかり思っていたら、第一話「人妖」は江戸時代だし、第二十四話「医学博士」などは、テレビが出てくるから、すくなくとも戦後とスパンが長い。場所も日本全国で、第三十話「夫婦仲」は栃木、第四十四話「孫悟空」は大阪、第五十話「白茅」は小山。他にも岡山、千葉、鎌倉、京都など数え上げればきりがないほどバラエティに富んでいる。

で、多いのは狐と鬼が女となって男と関係する話だけれど、基本的にはハッピーエンドで終わる話が殆どである。特に目立つのは、ひとりの男を中心に、美しい狐と妖艶な鬼が一緒になって男と幸せに暮らしましたという話で、いわゆる男が衰弱して、最後は弧妖の類が退治されるという形のものは少ない。

どの話が好きか、といわれても、似たようなものばかりなので困るが、例えば真壁三郎左衛門助常が閻王と楽しく酒を飲み交わす第三話「閻王」、歌才に恵まれ容貌も涼やかな雁奈が出会ったのは、笑顔をたやさない明るい娘だったという第五話「桃香」、誤って両親の成果を台無しにした息子が死んでという第三十八話「蟋蟀合わせ」、二十歳になったばかりの渋井剛が北海道で出会った運命の女性を中心にした第四十二話「志乃」、同じく二十歳になった財部宏の家に入り込んで抱き合っていた男女の様子をきっかけに始まる第四十五話「真悠子」だろか。これ以外にも楽しい話が沢山詰まっている。

初出は小説すばるで、1999年から2002年まで偶数月の号。東大出嫌いの私だが、小林は無条件に才能を認める作家の一人。過去の本も含めて、何度でも読み直したいという気にさせる数少ない小説家で、ある意味、読みやすさが売りかもしれない。今回の本は枕元において、好きなときに読む、そうすれば一生楽しめる聖書みたいな存在である(褒め過ぎか)。

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2010/06/03 12:14

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2011/09/04 09:38

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2012/08/28 14:28

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2013/07/24 21:33

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