紙の本
リベラルな主人公
2005/12/02 20:31
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:喜八 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカの弁護士作家リチャード・ノース・パタースン(Richard North Patterson 1947-)による法廷ミステリ『子供の眼(原題:Eyes of a Child)』(1994)。
主人公の凄腕弁護士クリストファ・パジェットが愛する女性の夫(つまり女性とは「不倫」関係)を殺害したという嫌疑をかけられ、第一級殺人の被告として法廷で裁かれるというストーリーです。裁判が進むにつれて事件の背景にある母娘の悲劇が明らかにされてゆき、家族の絆の強さが再確認される・・・。読み応え充分の重厚なエンタテインメントでした。
主人公のクリストファ・パジェットの合州国上院議員出馬表明スピーチから判断すると、彼はかなりリベラル(自由主義的)な政治的姿勢をもっているようです。
パジェット氏のように、銃砲規制に積極的に取り組み、妊娠中絶に理解ある立場を示し、貧しい人々やマイノリティへ共感を抱き、さらには強い影響力と人気を合わせもつ。もしこのような政治家が実際にいたとしたら・・・。アメリカ合州国ではかなり高い確率で暗殺されてしまうのではないかと思います(残念ながら)。
もっとも昨今のアメリカでは「リベラル」株は暴落しているようです。「奴はリベラルだ」というのは最低の悪口になっているのだとか。これも奇妙な話ですね。リベラリズム(自由主義)を忌み嫌う立場というのは全体主義や専制主義のような「悪しきもの」になるはずですから。
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法廷小説としては、珠玉の出来だと思う。ただ、嫁さんがしっかりものの割には、どうして夫が社会不適合者であることを客観的に説明できないのかが甘い。
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数あるリーガルサスペンスの中でも、リチャード・ノース・パタースンの作品ほど夢中にさせられたものはない!その洞察力に満ちた息を呑むほどに深い人物描写は本当に凄い!中でもこのこの作品…前作の「罪の段階」を凌ぐ迫真の法廷での闘いでけでなく、両親の離婚と子供の監護権争い、代を越えて受け継がれるファミリーシークレットなど、大変微妙でしかも深刻な家族の問題を真正面から取り上げている!
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満を持しての五つ星。前作『罪の段階』の登場人物たちが再び活躍。
前回は被告への起訴に弁護人パジェットが異議を申し立てるという変則的な裁判だったが、今回はそのパジェット自身が殺人罪で起訴され、陪審員も含めた刑事裁判を受ける。日本でも裁判員制度が始まったが、アメリカ(サンフランシスコ)との違いをみても興味深い。
前作で判事だったキャロラインがパジェットの弁護人として大活躍!リアルな検察とのやりとり、論証崩しなど「陪審員に対し如何に自分に有利な心証を残すか」が重要であることがよくわかる。ホンモノの裁判はこうなんだろうなぁ…と推測できるような論戦が展開される。
前回あいまいに終わったパジェットとテリとのその後も同時に描かれる。家族とは何なのか…次第に追い詰められていく二人にキリキリさせられるが、その感覚が好き←ドS
ボリュームたっぷりの1135ページ、息詰まる裁判劇が読みたい方に。
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文庫化されてました。
お気に入り作家の一人です。
ブクログを始める前に読んだのか~ご紹介してなかったので。
読み応えのあるシリーズの中の1冊。
辣腕弁護士クリストファ・パジェットがなかなか、いいんですよ~。
いい父親って描きにくいのか?珍しいでしょう。彼もちょっと変則的な設定ではありますが。人間らしくカッコイイ中年男性。
今回は、夫とは別居中だった恋人テリーザが、ついに離婚を決意します。
テリの夫リッチーは働こうとせず、妻の収入をあてにしていたので、断固交戦の構えでした。愛想が良く人を操るのが上手い性格で、幼い娘エリナの親権裁判は夫に有利に進みそうになります。
クリストファの15歳の息子カーロに汚名を着せ、クリストファを新聞種にしてまで、事態を動かそうとするリッチー。
クリストファには来年、上院議員に立候補を求める話が持ち上がっていたため、スキャンダルには格好の標的でした。
テリを混乱から引き離すために旅行に誘うクリストファ。
ところがリッチーが突然殺されてしまいます。
さて、何が起こったのか?
どのように窮地を抜け出すのか?!
陪審員を決める過程も丁寧に描写されます。
裁判を描くのは上手い作者のこと、緊迫したやりとりが巧に描かれていきます。
テリは母を殴る父を見て育ち、母のようにはなるまいと経済的に自立はしたけれど、家族を精神的に虐待する夫に引っかかってしまっていたのでした。
クリストファもまた、愛に満ちた家庭では育っていません。
息子のカーロもクリストファは当初その存在を知らず、幼い頃には祖父母に預けられていて、愛情をかけられていなかった。
カーロにとっては父と出会ってからの生活こそが幸福。
そんな彼らにふりかかる試練に、どう立ち向かうか…
著者は1947年、バークレー生まれ。
弁護士として活躍しながら、1979年、作家デビュー。
「罪の段階」の大ヒットで専業作家に。
これはその次の作品。
「本の雑誌」のオールタイムベストで推薦されていました。
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原書名:Eyes of a child
著者:リチャード・ノース・パタースン(Patterson, Richard North, 1947-、アメリカ・カリフォルニア州、小説家)
訳者:東江一紀(1951-2014、長崎県、翻訳家)