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紙の本
「大人のドリル」で儲けた川島先生の総論。
2004/08/05 20:41
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投稿者:綾瀬良太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
内容はわかりやすく申し分ない。脳科学ブームにあって、川島先生は脳の中でも「前頭前野」に注目している。頭の良さや記憶についてかみくだいて説明する口調は、アカデミックな領域を同時通訳するかのように平明になっている。
しかし、気になるのは、話題になった自著「脳を鍛える大人の音読ドリル」「−大人の計算ドリル」を援護射撃するかのような文面が多いこと、そして名前を伏せて他の脳科学者の理論を否定していることなどである。
さらに興味深いのは、川島先生が、記憶の貯蔵室としての「海馬」を重視していない点である。
本文から引用する。「人間の記憶に海馬が大きな役割を果たしているという説もありますが、それはいろいろな働きをするときに海馬を通過することを過大評価していると考えられます」
この一説だけでも、川島先生が「海馬−脳は疲れない」(糸井重里、池谷裕二共著)を必要以上に意識していることがよくわかる。
ところで、脳科学者たちの書籍がおもしろいのは、脳の研究を紹介したり、脳の機能やしくみを解説したりしながら、それを理解している「自分の能力」をさりげなくアピールしていることにある。「私は天才だ」と書くと非難をあびるので、ところどころに「私はわからない」と断言する。それが潔く、読者は好感を抱くのである。脳科学者は、そんなことは百も承知。
なぜなら、脳科学者は、対面する問題に対して脳をフル回転させ、シナプスをつながりやすくし、ネットワークを構築してきたからである。そういった意味で、川島先生の脳は十分鍛えられている。「5分間活脳法」は、視点を変えれば、「ドリル」で儲けた川島先生の総論ともいえよう。商売の上手さも、もちろん脳が機能していることを証明しているわけである。だから説得力があるのかもしれない。
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