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紙の本
なんていうか、中世ものに比べると大味なんでしょうねえ。それに主人公の動きに底抜けの明るさが感じられなくてね、なんだかイタリアしてないわけ
2004/10/28 23:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
佐藤が描くイタリア史シリーズ(と勝手に私は名づけているけれど)。『カエサルを撃て』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』に続く第三作目ということになる。ま、後者は、短編集で半分はタイトルのとおり、英仏戦争を扱っているから、厳密にはいえないかもしれないけれど、なんていうか、ホップ、ステップ、ジャンプって言う感じで、今回はいかにも佐藤らしい楽しさに満ちた本になっている。
トラキア生れの美貌の剣闘士スパルタクス、ローマ紀元669年(キリスト紀元前83年)、ポンペイの土地で15歳で剣闘士としての道を歩み始めた少年の一生。彼の才能を見出し、ときに利用していくのは、当時35歳、29歳の時に片目を失い引退を余儀なくされた元剣闘士レントゥルス。そして、デビュー戦で華々しく勝利を得た少年に己の肉体を差し出したのが、当時30歳になったばかりのポンペイに豪奢な屋敷を構えるウァレリアである。以降、彼女はスパルタクスのパトロンとなっていく。そして彼女の娘ポンティアがいる。
奴隷に過ぎない一人の美丈夫スパルタクス。彼を衝き動かしたのは、パトロンの娘で、はずみで関係をもってしまったポンティアの「なぜ、あなたは奴隷なの」の一言。走りだしてしまった剣闘士の下に集う民衆の数は、当初は100人にも満たなかったものが、終いに8万近くに膨れ上がる。トラキア、ギリシア、ガリア出身の奴隷剣闘士たちが挑むのは、いや彼らに襲い掛かるのはローマ市民、そしてローマ随一の富豪クラッスス、軍才に秀でたポンペイウス。
テーマは、当時のローマの弱体化と奴隷解放、と言いたいところだが、それはそれ、宗教戦争だろうが英仏戦争だろうが、人間のいい加減さ、留まるところを知らない貪欲、或は男と女の泥沼化した想いで描いてきた佐藤賢一である。プロレスラーが国会議員選挙に打って出る、なんてまさにこのレベルなんだろう、いやまて、所詮、政治家なんて、いや軍人を始め官庁のお偉いさんにしたところで、こんな想いで最初の一歩を踏み出し、もしかしたら未だに同じ状態かもしれない、なんて思ってしまうのだ。
で、ついでに共感してしまうことをもう一つあげよう。
私は、以前も書いたけれど、塩野七生が好きである。特に彼女が描く中世ヨーロッパ、ルネサンスものは最高だと思っている。ただし、世の評価は彼女の『ローマ人の物語』に軍配をあげる。そして司馬遼太郎が現代日本人の歴史観を作ってしまったように、どうも塩野も現代日本人のローマ史観を作りあげそうである。そのなかで彼女が天才と褒め上げるのが、カエサルである。
ところが、わたしはどうしてもこれに納得がいかない。塩野の書くことなら、何でもOKにちかいけれど、この点だけは譲れない。ま、根拠というのは女の直感、それだけではあるのだけれど。でだ、この佐藤の本のラストに、カエサルがチョイ役で顔を出す。それが、実に説得力のある、というか私のイメージにあうカエサルなのである。男なんざあ、このレベルのものさ、と肯けるのである。なにが?と思う方、ぜひ一読を。ただし、長女はこの本についてビミョー、と判定しとりました。ちなみに、彼女の歴史の成績は、赤点です、はい。
紙の本
いつの時代も自由を求める者と支配する者の力関係が…
2004/06/19 17:42
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投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
紀元前ローマのスパルタクスの乱とはどんな乱だったのか、以前から感心をもちながら今日まで詳しく紐解くことがなかった。
本書を知り、その手がかりになるかもとページを開いた。
ローマ市民の見世物となっていた闘技場。奴隷の剣闘士に真剣勝負をさせ、殺し合いをさせる。それを見世物にしていたというのだから残虐極まりない。
勝ち続けなければ、いつかは殺される。負けても殺され、勝ち続けてもいつかは殺されるしかない奴隷剣闘士。よくもこんな残酷な見世物を考え出しものだと人間の残虐性に唖然とする。
スパルタクスたちが脱走し、自由を求めたのは当然と言えば当然といえる行動である。
脱走後のスパルタクスたちの心理描写に作者は力を入れているように感じる。脱走に成功し、「自由だ」と思った瞬間もつかの間、どう生きればいいいのかわからなくなる。
市民権がなければ、働くこともローマ兵になることもできない。食べていくこともできないのだ。
スパルタクスたちが、食べるために取る方法は略奪しかなかった。略奪につぐ略奪のすえ、かつては自分たちがされたように略奪、強姦、捕虜への虐待へとエスカレートしていく。
報復として、捕虜に剣闘士のまねをさせ、殺し合わせる。まるで報復の連鎖である。
その後、何万人と膨れ上がった解放奴隷たちの一団は、目的も迷走し、それがゆえに行動も迷走する。
ローマ軍との戦いが幾度となく展開され、故郷に帰ることもできず、膨れ上がった脱走奴隷たちは食べていくことさえ困難になっていく。
「しょせんは奴隷」「しょせんは剣闘士」と、自由になっても生きるすべを知らない力をなげく。
剣闘士の当時の実態や、闘技場を主催する貴族たちの行動など、たいへん参考になる描写がなされていて興味深い一冊である。
しかし、作者の視点は、ローマは滅びるべきして滅びた、という広い視野をもちながらも、人の自由というテーマでは広さがないように見える。
反乱軍が壊滅させられた後、奴隷剣闘士のささやかな反抗は示されている。しかし、本当にささやかな抵抗でしかない。
奴隷の解放、人間とは本来平等であるべきという視点を、もっと大きく広げれば、もっといい作品になったのではないだろうか。
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