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紙の本
正直、このテンポの遅さに我慢できない人っていると思うんだね。絞り込めば半分で済む話。ところが、その部分に伏線が一杯となると、そのたるさが有り難く思えるから不思議
2004/10/15 22:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやあ、久しぶりに「ったるい」展開の話である。ともかく、話が全く動かないのである。大瀧の訳文が悪いのではない。文章そのものは変に美文調でもなく、暗さを強調するものでは全くない。漢字だって、難しい読み方のものは少しも出てこない。でも、進まない。連休や年末年始の大渋滞である。
いつもであれば、絶対に途中で投げ出す本だろう。しかし、それをさせないのが「英国幻想文学大賞受賞」の威力。まさにチェキナだね。主人公は複数なので、好きな人物に肩入れしてもらえばいいけれど、それにしても、魅力のない登場人物たちである。もうじき30歳になるデブの独身男ジェラミィがいる。人の心を読んだり、喧嘩が強かったり、ということは全くない、冴えない学校講師である。夏休みを過ごす貸家の、家主の夫人の裸のことばかり考えている。
でだ、冴えない男を虜にするのが、肉感的な多分27歳だろう美女デボラである。でだ、なぜそんなにいい女が、こんな男につかまった?と思わせるのが夫のサー、27歳である。自分のことしか考えられず、意味のない嫉妬はするは、変な宗教心に囚われて、農業に精を出すけれど、ちょっと前までは都会で働いていた。典型的な脱落者である。
でだ、冴えない独身男や老人にちやほやされて舞い上がるのが、22歳のキャロル。まず、仕事があんまり出来ない。だから、仕事もない。勿論、貧しい。おまけに、妙にお堅くて、処女であることに拘る。クラインが「美女」と断らなかったら、ウザイだけの女である。ただし、「美女」で、男たちの胸をときめかせる。ジェラミィも、既婚者のサーまでもが。
さそて、ちょっとオツムが弱いとしか思えないキャロルに、仕事とお金と美味しい食事、夢を与えるのが、謎の“老いた者”ロージィである。もう変態としかいいようのない老人に、何故かキャロルはサーに対するのと同様の好意を寄せてしまうのである。ま、こう書くと、結構面白そうじゃん、と思うはずだ。そう、面白いのである。
ただし、これだけを描写するのに費やされる頁数ときたら、ため息が出るほどである。この本にジェットコースター的なスリルとスピードを求めてはいけない。東海道53次、各駅停車どころか徒歩で行く、道端のありふれた雑草を愛でる、何処にでもあるような建物に足を止め、自分を無視して暮らす人々に感謝する、そのくらいの余裕があれば、絶対に楽しめる話である。内容を紹介しよう。
「ニューヨークで口座を持つジェラミィは夏期休暇に田舎町の貸家でゴティック・ロマンスの研究にいそしむことにした。古い信仰が残るその小さな町で彼は墓地を見つけ、ここでは百年ほど前、大火事による惨事があったことを知る。一方ニューヨークでは謎めいた“老いた者”が「儀式」の準備を調えていた。彼は独白する。既に男は選んだ。次は女だ。英国幻想文学大賞受賞のホラー巨編。」
「老いた者は、儀式のために選んだ娘に古代言語と民族舞踏を教えはじめる。一方ジェラミィは、家主の飼い猫に恐怖を覚えていた。生まれつき特殊な能力をもった家主の老母がいう。この猫には自然に反するものが憑いている、と。さらにこの町では毎年、独自の収穫祭が行われる。今年も近づきつつあるイヴの日は、過去に奇怪な事件のあった7月31日。そして町を異変が襲った。」
である。面白くないわけがない。繰り返す、問題はテンポである。勿論、それは現代の読者に非があることは言うまでもない。アメリカ作家とは思えないような、まさに本場イギリスを思わせる小説、そう思う。訳者の大瀧啓裕は、解説「スタイリストの稀有な長編小説のなかで、「読者がスタイルのリズムに身をゆだね、細部までおろそかにせずに味読すれば、おのずから物語そのものを堪能できる仕掛けである。」というが、まさにその通り。再読、再々読も可能な一冊である。
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