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沈黙博物館 みんなのレビュー

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みんなのレビュー67件

みんなの評価4.1

評価内訳

63 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

死の回収

2004/09/17 13:16

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:sanatorium - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「沈黙博物館」とは面白い発想だ。ある豪邸に住む老女が死者の形見を収集し、それを展示する博物館を作ろうというのである。そのために「技師」が村へ招かれる。形見に物語を添え、死者が生きた証とし、それを博物館に収蔵するというのが「技師」の仕事だ。登場人物には他には、少女、少年、庭師、刑事、家政婦などがいるが、皆名前をもっていない。この小説においては、生者には名前がないのだ。死んで形見を回収され物語を付与された時に初めて名前が与えられる。
 「博物館」と別の世界がこの小説には二つある。「沈黙の伝道師」と「技師の兄」の世界だ。「技師」は事あるごとに兄に手紙を書くが、その際話題にされるのが甥の誕生であり、つまり「博物館」を死を待つ世界だとすると「兄」の世界は「生み出す」世界である。しかし、結局「兄」の世界と博物館のある村とは交通がないことが判明する。意図的に遮断されているのかもしれないが。「沈黙の伝道師」とは徐々に言葉を話すことをやめ、最後には何も話さず生きていく修道士のような人達のことだ。口では何も語らぬが故に、市井の人とは違い彼らが死んだ時に彼らについて彼らが何者であったかということを語るのは困難を極める。彼が「沈黙の伝道師」であると書けばよいというのではなく、独自の物語を付与しなければならないからだ。
 付与、とここで書いたが、「物語」は実はフィクションなのだ。形見収集者が感じたことが物語られるのである。形見についても同様だ。死んだ者にとってそれが重要であると判断するのは形見収集者であって、死者の意見は無視される。人の知らぬところで、その死者が別の物に非常な愛着を寄せていたとしても、誰が気づくことが出来ようか。また、その人が死んだという確証が必要になる。例えば冬山で遭難してその人が<死んだ>としても、その人は他人に認知されない限り<死んで>はいない、ということを付け加えておこう。
 死者に意味を与えるのは中世ヨーロッパでは神の役目であり、近代になり国民国家が誕生するようになるとナショナリズムが宗教に代わり、人に死に理由を与える。お前はネイションのために死んだのだと。「博物館」では、「老女」個人が聖書とも言える「暦」をつくり、他人の死を回収している。人の死には意味があり、犬死させまいとする意思のようにも見えるが、<死者>を生産するために「庭師」が殺人を犯しているということが暗示される。死者のための「博物館」が本末転倒して、「博物館」のための死者の生産となる。人はいつか死ぬのだが、死者の上にしか成り立たないシステムというものがあることを示しているようにも見える。
 「老女」が死に、「技師」がその役を引き継ぐところでこの小説は終わる。
 小川洋子の軽妙な語り口の裏にこんな構造を読んでしまうのは野暮かもしれないな。

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紙の本

沈黙博物館

2004/09/12 16:09

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:神田めろん - この投稿者のレビュー一覧を見る

 形見を展示する博物館の「技師」の物語。

 博物館の仕事に誇りをもっている主人公に好感がもて、個性爆発の老婆も、ちょっと可愛い。小さな村では穏やかに時間が過ぎているように見えたのだが、殺人事件や爆発事件が起き、「技師」は「死」と向き合わざるを得なくなる。形見を収集するために、葬式や住んでいたアパートを訪れる「技師」は「生」を感じながら、「死」を知っていく。
 やがて「技師」が住んでいるのが「生」の世界なのか、「死」の世界なのかわからなくなるほど、「この世」と「あの世」の境界がぼんやりしてくる。

 柔らかな「小川ワールド」に、いつのまにか引っ張り込まれていた。とても重いテーマだが、読んでいて苦しくならないのは、著者のふんわりした文章と、個性的な登場人物のせいかもしれない。優しく、作品の世界に導かれている感じが心地良かった。
 
 本を読み終わった後には、自分が生きた「証」を「技師」が収集しに来てくれることを願っていた。

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2004/12/14 22:59

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2009/03/26 01:10

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2009/04/12 22:09

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2009/09/20 14:22

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