サイボーグ００９ 別巻 ００９ ａ ｌä “ｃｕｌｔ” みんなのレビュー

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この００９アラカルトは、「たのしい幼稚園」と「中一時代」に掲載された００９と、００９ではないけど関連の深い短編を収録した短編集。
巻末には００９の初期設定なども載っていておいしい一冊なんですが、この巻頭に収録されている、「サイボーグ００９（たのしい幼稚園版）」という短編がものすごいです。あのね、5ページしかないんですよ。ギャグでも5ページで落とすのは難しいというのに、私は石ノ森章太郎に神を見ました。
あらすじを説明しますと、まず1ページ目の時点で、前触れもなくサイボーグたちはロボット恐竜軍団に襲われます。ここらへんの唐突さはページ数と対象年齢を考えれば仕方のないところです。

「あっ、きょうりゅうが　おそいかかって　くる。どう　したら　いいのだ！」（※地の文を空白まで忠実に再現してみました。）

恐竜ロボットたちは強く、みんなが必死に戦ってもなかなか倒せません。しかしそのうち、００９は軍団の中で唯一赤い恐竜が、他の恐竜に命令を出していることに気が付きます。
司令塔を倒せば勝てると判断した００９たちは、赤い恐竜に対して全員で集中攻撃。しかし、恐竜の頭部が爆発し、勝ったと思った瞬間、横から少女が駆け寄ってきて泣き崩れてしまいます。そして最後のコマ。

少女「あああっ、あのきょうりゅうサイボーグにはあたしのおにいさんの　のうが　はいっていたのよっ」

００９「せんそうは、かっても　まけても　いやだ。」

……「たのしい幼稚園」って、要するに幼稚園児が読む雑誌ですよね？
普通なら恐竜倒してヤッター！で楽しく終わるところを……メッセージ重っ！
もちろん、善と悪には境界などなく、正義のために振るわれる拳も結局は暴力には違いないのだ、というのは００９しかり仮面ライダーしかり石ノ森漫画の永遠のテーマでありますが、幼稚園児向けの雑誌でまでこの徹底ぶり、先生がどれだけ反戦と平和への願いを作品に込めておられたかが分かるというものです。
だからこそ００９は永遠に偉大なのであり、石ノ森章太郎もまた永遠に偉大なのですね。

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内容の大半は「009に関連していたり前身的な存在といえる作品」が収録されているので、それらの作品を読んでいる石森ファンには肩透かし感が大きいかも。
オリジナルの009漫画は幼年誌版と、中学生学年誌に掲載された「サイボーグ009対三億円犯人」のみ。
ただ、後者があまりに怪作すぎるので一見の価値は大いにあり。

表紙が秋田書店サンデーコミックス風のデザインなのは嬉しい。