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紙の本
この本を読んだ人には、松子が「嫌われ」でないことがわかる
2006/03/09 17:50
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:土曜日の子供 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この物語は作者のストーリーテラーとしての才能を感じさせる。会話の部分のテンポが特によく、よく出来たシナリオを読んでいるときのような、面白みがある。
内容的には重くシビアな部分が多いが、全体に重苦しくなり過ぎない、ほどよいトーンで彩られている。2003年まで生きた松子の生き様が東京の日常的な風景をバックに彼女の甥によって徐々にあぶりだされていくといった形式を取っているため、今日的な雰囲気が感じられ、身近に感じられるせいかもしれない。
中学の教師になりたてで世間知らずだった若き松子は、保身に走った校長等の陰謀により辞職に追い込まれ、実家にもいづらくなり故郷を去る決心をする。そこから松子の人生の歯車は微妙に狂い始める。それ以降の松子の人生は、まさに体当たりで愛に生きる波乱万丈の人生だ。彼女の生き方ってどうしてこうもメチャクチャなんだろう、わざと自分から貧乏くじを引くような、ケタはずれにツイてないし、すれ違いと誤解の連続。腹立たしくなってしまうほどだ。いつも無防備な感じで隙だらけで思い込みが激しくて・・・。しかし読めば読むほど、松子という人に強い引力のようなもので惹きつけられていくのはなぜだろう。彼女は、物心ついたときから、得られなかった愛を求めて、自分の愛する人に向かって全力でボールを投げ続けていたように思う。いつもボールはうまくキャッチされず、投げ返されることもなかったが、決してあきらめず、倒れてもまた希望を見出しどん底から立ち上がり、とにかくあれこれ考える間に、気がつくともう次のボールを誰かに向かって投げている。きっといつかは愛というボールが投げ返されると信じて。「許せない・・・」彼女の甥、笙でなくても、そう叫ばずにはいられないほど、本を読み終えたとき、松子はまるで自分の身内のように感じ、いとしくさえなっていた。
紙の本
愛に生きた女
2006/10/24 23:40
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あん - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画やTVドラマのCMからは想像出来ない程、暗く苦しく真面目な人間ドラマでした。
あのふざけた印象は間違っているなぁ。
松子は周囲の人間に翻弄されて堕ちていくのだけれど、そこには常に無償の愛があって、幸せでないのは確かだけれど決して不幸せでもない。
彼女を主人公とした回想シーン、甥を主人公とした「今」のシーンを交互に登場させている点も実に上手い。
こういう流れだと良い所で「あれ、そこで回想に行っちゃうの?」という不満感を抱きがちだけれど、それもなかったです。
小説だけれど何だか舞台風。
電子書籍
どん底の暗さ
2019/01/13 17:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あ - この投稿者のレビュー一覧を見る
【 ネタバレ注意 】
本書はある一人の女性の一生を追う話なのだが、なんと言ってもこの主人公の女性のクセが強い。それ故の人生の濃さ、波乱万丈さ。
本書を読んで、『こんな事私には起こらない。なんでそうなる?』そう思った人もいたと思うし、『何となくわかるな』と思った人もいたと思う。"共感"について大きく分かれる作品だろうと思った。読む人それぞれで感じ方が、ここまで変わってくる作品は珍しい。
本書では母よりも父の像が強く出ている。娘からの目線がそれを物語っている。父に愛されたいのにうまく行かない。人生の中心に父親がいるかのような。それほどに松子は父に固執していた。すべての行いの背景に父がいる。そう言っても過言ではない人生だった。教師の職を選んだのは父が喜ぶから。よく変顔をするのは父が笑ってくれるから。妹が嫌いなのは私から父を奪う存在であるから。松子の父親像は求める男性にも影響した。心のどこかで『父に愛されたい=父に愛されていない自分』があった。その意識が強い孤独を生んだ。孤独から逃げるために、自分を必要としてくれる男性と一緒に過ごすが、DV男や家庭のある男性などを選んでしまう。松子が自分を傷つける男性を選んでしまうのは、ひどい仕打ちをしてくるがそれを我慢すれば自分を愛してくれて必要としてくれて、自分の孤独を紛らわしてくれる存在だから。その愛が軽薄なものでも構わないという松子のスタンスは、藁にも縋る切迫感が表れていた。いつも孤独から逃げるために選ぶ行動だが、毎回孤独から逃げ切れてない。
松子は仕事をすればとても器用で、美人で、時には深い優しさだって強さだってある。でも『孤独』がいつも邪魔してくる。読んでいて「勿体無い。」と何度感じたことか。
誰しも心に素直じゃない部分がある。それが邪魔をしてうまく行かないことだってある。でも一方で、それがその人の人間らしさであったりその人の存在の愛おしさでもあると思う。
松子には向き合う時間も受け入れることも難しかった。気づくこともままならなかった。だからいつも『孤独』から逃げ切れなかった。
自分の欲求や性格、また行動の背景に何があって自分の中心に何があるのかを考えさせられる作品だった。非常に暗いが、ただ暗いだけのお話ではない気がする。
紙の本
私も嫌いな松子だが...。
2020/10/30 15:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読み続けた数日間、毎日「松子はその後どうなった?」と気にし続けたにも関わらず、この松子さんが自分の身近にいる人だったら絶対友達にはなれない人だろうと思った。主要なストーリーは、平たく言えば「優秀な大学を出た中学教師の転落の話」であり、松子は、風俗嬢に身をやつし、覚せい剤中毒者にもなり、殺人者にもなってしまう。
もちろん、そんな「道に外れたひと」とは友達になれないという意味ではない。
彼女は頭がよく何をしても優秀で、どんな仕事に就こうともその道を極めてしまう集中力のあるひと。なのに、彼女の背骨となる部分が自分の中にではなく外にある。病弱な妹に注がれる父親の愛情を勝ち取るため、父の望む大学へ行き、教師という仕事を選ぶ。好きな男性が愛してくれないから風俗嬢になり、しかし道を究める。その後、理容師に愛されたから、獄中で美容師の資格をとり出獄後もその道を極めようとする。しかし、ひとたびその対象がいなくなると、何もする気がない怠惰な生き方に。外に「対象」がなければその才能を生かそうとしないというか、自分のため人生を生きない主人公。
「自分を生きなければつまらない」よなと思いつつ読み進み、松子は、やっと、自分を生きようと思ったそのとき、つまらない理由で殺されてしまう。「せっかくここまで気がついたのになんで?」と憤ってみるが、よく考えるとこの話は松子が死んだところから始まっているのだから仕方がないか。
ちなみに、巻末の参考文献リストが面白く、作者は、この(つまらないひとと私が思った)松子の人生を描くために、かなり緻密にいろいろな世界のことを学んだのだが、やっぱり、なぜ?
この本自体は、面白く読んだものの、どうしても腑に落ちない読後感。
紙の本
映画化
2016/02/26 09:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みるちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
とドラマ化したので手にとって読みました。最初の失敗?から波乱万丈の人生。展開が早くてさくさく読めました。嫌われているんじゃないのに、選択を間違えただけなのにと若干暗い作品でもやもやしながらも一気に読めた。美女なのにもったいないです。ちょっと後味悪いかな。