紙の本
甘さを承知で書くけれど、この本は西澤のベストのひとつ。勿論、本格推理小説なんかではまったくない。ロマンチックSF?案外、それがピッタリかも
2004/10/10 21:38
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
西澤保彦が多才な作家であることは、今まで書かれた作品からも証明済みである。そして、どの作品にも魅力的な女性が出てくるのも共通している。さらにいうならば、彼女たちというのが所謂、健康的な美女というよりも陰のある、男性に対して不信感を抱いているという設定も同じである。中でも、ロマンティックな物語と言う点で『異邦人』が私の選ぶ西澤のベストだった。そして、今…
「非日常的、かつ非現実的な物語という意味において、本書『方舟は冬の国へ』は、これまでのわたしの著作の中で最も「あり得ない」話になっていますが、そこは「おとなのお伽噺」と割り切って、気軽に楽しんでいただければ幸いです。
なお執筆中(厳密には“ながら『書き』ができない質なので、その合間)のBGMは、サザンオールスターズの「夏をあきらめて」でした。」
なんとも恥ずかしくて顔赤らめてしまうようなコメントである。私はいま、ポルノグラフィティの『MUGEN』を聴きながら、これを書いています、なんてとてもいえることではない。でも、そういいたくなるのが分かるような、なんともアマーイお話なのである。それにぴったりのロマンチックなカバーイラスト:駒田寿郎、カバーデザイン:祖父江慎一+柳谷志有(cozfish)、カバー印刷:半七写真印刷。拍手ーである。
まず内容紹介。
「かりそめの家族。
偽りの夏休み。
なぜこんなにも、
いとおしいのだろう
六年勤めた会社を辞め、失業中の十和人は、ハローワークの前で奇妙な男に声をかけられた。仕事をいらいしたいという。それは、一ヶ月の間、別の名前を名乗り、見知らぬ女性と少女との仲のいい三人家族を装って、盗聴器と監視カメラのある家に滞在するというものだった。依頼を受けて滞在を始めた三人に、不思議な現象が起こりはじめる……。」
主人公は3人いる。とりあえず、その中心にいるのが37歳の青年実業家・末房信明役を務める十和人(つなしかずと、いかにも西澤好みの難解な読み方)という24歳の独身男性。工業高校出身で、コンピュータ関係会社を辞めて、現在、失業中。高校時代に、ハマグチという嫌な教師に出会った苦い思い出がある。
もう一人の主要人物で37歳の妻役を演じるのが栄子、アスリートタイプの健康的な美女。和人の高校時代の同級生で今は兄嫁となっている佐恵子に似ている。二人の間に生まれた子供で10歳の娘役は“玲衣奈”、実際の年齢は不明だけれど、儚げな美少女。ということで、和人は年上と年下の美女二人に囲まれて過ごすことになる。その舞台となるのが、高原の避暑地にある別荘である。
ともかく、甘いお話である。少女小説以前と言いたくなるような。話の仕掛けだって、手馴れた読者ならば途中で気づく。ただし、この小説で西澤は、そういった伏線を話の中心に据えてはいない。あくまで、一夏をともに過ごすことになった男女の、自然な心の動きが軸である。それを読み物風にさらりと描いて差し出す、さあ、話そのものを楽しんでくださいと。
下手な作者の手にかかれば、それだけで、ケッといわれる物語である。それが西澤の手にかかると、なんともせつない話になるのだ。それを助けるのが、西澤のあとがきにあるように駒田寿郎のイラスト。たとえば9頁の家族たち、37頁のキャリア風女性、165ページの女性二人、あるいは291頁の高い空、309頁の憧れ。どれをとってもロマンチックである。
そう、これはひたすらロマンスを楽しむ本である。我が家の高一長女は、そこが物足りないと言う。私は、そこに心の平安を得る。貴方はどっち?
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ファンタジック・ミステリ、とでも申しましょうか。
毎回毎回、奇想天外な発想と展開でビックリさせてくれる西澤作品の中でも、かなり奇妙な設定の作品でした。
でも、先が気になって、どんどん読めてしまいましたね〜。
あいかわらず、難読漢字の名前が続出します。「十」で「つなし」とは、なるほど〜〜〜〜!
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σ(・_・)の好きな作家なんですが、特殊な設定の話をよく書かれます。デビュー当初はミステリ色が強かったのですが、最近は単なる物語としても読める作品が多く、この作品も読み終えた後、少し幸せな気分になれる一冊です(ロベ)
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ほのぼのタッチの連作。ちょっとひねったホームドラマみたいで面白かった。エンディングまで一気に読む。続きが知りたくなる。
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かりそめの家族。偽りの夏休み。なぜこんなにも愛おしいのだろう―
六年勤めた会社を辞め、失業中の十和人は、ハローワークの前で奇妙な男に声をかけられた。
仕事を依頼したいという。それは、一ヶ月の間、別の名前を名乗り、見知らぬ女性と少女
との仲のいい三人家族を装って、盗聴器と監視カメラのある家に滞在するというものだった。
依頼を受けて滞在を始めた三人に、不思議な現象が起こりはじめる・・・・・。
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・著者には珍しい雰囲気の作品ですね。好きですが。ラストはああですが、きっと三人はしあわせになってくれたことでしょう。予知夢もあることだし。・初対面の女性と少女と共に仲の良い『家族』として夏休みの一ヶ月を演じること。それも監視と盗聴の目の中で。それが法外な報酬で引き受けた仕事。で、訪れた別荘では不思議なことが起こるのですが、その不思議なことがなんともファンタジーでよいです。
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六年勤めた会社を辞め、失業中の十和人は、ハローワークの前で奇妙な男に声をかけられた。仕事を依頼したいという。それは、一カ月の間、別の名前を名乗り、見知らぬ女性と少女との仲のいい三人家族を装って、盗聴器と監視カメラのある家に滞在するというものだった。依頼を受けて滞在を始めた三人に、不思議な現象が起こりはじめる…。
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設定は言うことなしだけど、途中の小ネタ解きはちょっと飽きる。
でもこのラストで!全て許せてしまう。
擬似家族。本物じゃないからこそ愛おしいんだ。
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【紹介】六年勤めた会社を辞め、失業中の十和人は、ハローワークの前で奇妙な男に声をかけられた。仕事を依頼したいという。それは、一カ月の間、別の名前を名乗り、見知らぬ女性と少女との仲のいい三人家族を装って、盗聴器と監視カメラのある家に滞在するというものだった。依頼を受けて滞在を始めた三人に、不思議な現象が起こりはじめる…。―――――【感想】純ミステリとは言い難い気もします。少しファンタジーで、すこし切ない、そんなミステリですね。私もこんな奥さんになれたらいいなぁ。主人公の名前は十と書いてなんと読むのでしょうか??分からない人は読めば分かります^^本格的なミステリが少し苦手、という方にオススメ。
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見知らぬ女性と少女とともに、マイクとカメラで監視されている別荘で家族の振りをするよう依頼される主人公。一体何のために? そして別荘では奇妙な現象が起こるのだった。
突飛な設定があり、その中で起こる謎に対して推論を重ねていく。謎とは思えぬような事柄でも無理矢理謎に仕立てて、論理をこねくり回すのが快感でもあるのですが、今回はそれだけに終わりません。この作品のテーマは家族でしょうね。しかもいつもなら人間の厭な部分を肥大化して書かれることが多い西澤作品ですが、今回は話が進むにつれ、悲しみとともに希望も見えてくるんですな。作者曰く「おとなのお伽噺」というのが、なるほどと思わされる読後感です。その分パズラーとしての面白さは控えめなんですけどね。
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読後の良さ、これだけでも★五つ。
さらっと読書するのに、最適。ミステリファンじゃなくても、安心してオススメできます。
でもちゃんとミステリを読んだ気分にもなれるし、なんかほっとして元気にもなれる。
これはリアル本棚に入れておきたい作品。
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不可思議な感覚に囚われる。
偽物の家族を演じる設定に、流れる雰囲気、どれもかなり心地良かったです。
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これに「本格推理」というレーベルをつけてしまうのはどうかなあ……。確かに謎はいっぱいあるし、それなりの解決もあるし、ミステリといえないこともないけれど、「本格」ではないかなあ。少々SF要素入りのファンタジックミステリ、といった印象。
本編を読むと分かるタイトルの意味。良いなあこれ。妙に感動させられてしまう。このタイトルが気になった人は、ぜひとも読みましょう!
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西澤さんの特殊設定モノではあるのですが、特殊設定のミステリというわけではなく、単なるSFあるいはファンタジーです。ミステリとして読まなくても、自分はなんだか読んでいて居心地が悪かったです。普段の西澤さんぽい毒気がなかったからかも。
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表紙に偽りあり。何処が「長編本格推理」なんだよ。帯には「鮮烈にして不可思議な、家族をめぐるミステリー」だと。
うん、「ミステリ」ではないな。「ミステリー」だ。少なくとも本格じゃねぇ。
いや、これはこれで面白かったんだけど、読み終わって何処がミステリだったんだ、と。
見ず知らずの男女と少女がある別荘で一月ほど家族の振りをして過ごす、という仕事。その間、未来予知してしまったり、思っただけで会話が出来たりと、不思議なことが起こるんだけど、それには裏があって。こんなストーリィ。
西澤らしいエセサイエンス臭さ。これね、もうファンタジィだよ。サイエンスファンタジィ。他の作品と違ってその設定の中でうまく論理を通して謎解きをしているものではない。
ただなぁ、ところどころに挟んである研究所(?)のところ。その辺り、理解してません。弱い気がするんだなぁ。どうしてあの老婆がそこまで悩んでいたのか分からないし。孫娘の望みじゃん。
人間ドラマを読ませる話。まあ、ミステリじゃなければそれが普通なんだけど。
家族ものが好きな人にはお勧め。
ラストはすごく好みです。
04.09.10