紙の本
ま、こういう適度な軽さの本をファッショナブルととらえて喜ぶ人って多いんだろうなあ、でもなあこれって時間つぶし本だよなあ、時間、勿体無かったかなぁなんて思ったりして
2004/12/11 21:05
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ちょっと小ぶりだよなあ、と本を見て思ったので実際にロバート・ホワイティング『イチロー革命』と並べて見たら、確かにそうだった。身長170cmを超える男性陣に、150cmの愛らしい少女が混じった時のような、親しみやすさである。何の話かって? 勿論装丁です。装画=木下上勝、写真=大野晋三、装丁=SONICABANG CO.
主人公の間宮兄弟は、上が35歳の明信(12回見合い)、下が32歳の徹信。一方通行の恋をしたことはあるけれど、恋愛をしたことは二人とも無いという最近では良くあるパターンの男性、ただし兄弟二人とも異性に不器用は珍しい。痩身なのが明信、小太りが徹信と覚えてもらえばいい。兄の職業は会社員、弟は学校職員。母の名前は順子、年齢は不詳だが、弁護士であった夫を亡くした今は、一人のんびり静岡に暮らし、気軽に東京に出てくる点を考えれば50代後半がいいところだろう。
話は、兄思いの弟が、明信のために自分が働く小学校にいる「明信好み」と思われる女性教員の葛原依子を、二人が済む賃貸マンションに招待しようと思い立つ場面で始まる。そのための企画というのが「夏の夕べのカレーの会」というのが、やはりもてないだろうなあと納得である。
しかし、ここで兄弟の思惑が微妙にずれる。その時兄の頭にあったのは、彼がよく使うレンタルビデオ屋のバイト店員直美だった。そういう兄弟の微妙な違いを描きながら、不倫に行き詰まった依子、浩太との恋に燃えている大学三年生の本間直美、姉を冷静に見る高校三年生の夕美、名前が出てこないボーイフレンドたちが兄弟と距離をとりながら話を進めていく。
それに、明信の同僚である経理部の安西美代子49歳、上司である大垣賢太39歳と妻の沙織という夫婦が絡んでくる。所謂、構成で読ませる小説ではないので、流れに乗るように気軽に読むのがいい。感動とは無縁の物語なせいか、淡々と読み終えることができる。ま、これで得るものといえばもてない男性への嫌悪感くらいなものだろうか。
読書、ビデオ、紙飛行機、スポーツ観戦、コーヒー牛乳、ゲーム、音楽、鉄道模型、花火大会など多趣味というか、如何にももてそうにないマイナーでオタク化した世界を泳ぎ回る二人は、当然のことながら社会といったものに全く興味をいだかない。社会というか、他者と言い換えても正しくて、結局、女性といっても彼らの中にある幻想の女性と遊んでいるに過ぎない。
どう考えても、こういう男は可愛くもなんともなくて、ただうざったいだけだから、気をつけようねという江國の声を聞いてしまうのは私だけだろうか。まさにライトノベルの真髄ここにあり、である。もう一度読むか、といわれれば時間が勿体無いから遠慮しておこう、そういうレベルの作品とでも言っておく。
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彼女は一種の天才だと思う。技術や知識だけでは補えない、たちのぼるような表現力を持っている。
しかし、読後感の苛立ちはいかんともしがたい。だから嫌い。彼女の本には少し変な人たち(空想が激しく、幼稚)が出てくるが、この本もそう。「自らをおかしいとは決して思わない」その世間とのズレを無視する楽観性(自省のなさ)が虫酸が走るほど嫌なのだ。
そして同時に嫉妬する。
自分は気づかなければよかったのに、と。
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兄・明信、35歳、酒造メーカー勤務。弟・徹信、32歳、学校職員。二人暮らし。読書家、母親思い、マイペースで人生を楽しむ兄弟だが、おたくっぽいと女にはもてない。一念発起で恋人をつくろうと、徹信の同僚、葛原依子と、ビデオ屋の店員、本間直美を誘って家でカレーパーティ、花火パーティを開催する。依子は不倫相手と別れるが兄弟には興味なし。明信は直美をデートに誘うが断られる。しかし、直美の妹・夕美は徹信に興味を持つ。
明信は同僚の大垣賢太に、妻・沙織との離婚話の仲介を頼まれるが、沙織は応じない。徹信は沙織に心惹かれるが冷たくふられる。しかし、兄弟の感性は次第に女性たちを動かすことになる…。女性にとって、本当に素敵な男性はどんな男性なのか。恋愛カリスマ作家として、女性たちの圧倒的支持を得ている江國氏の、美しい日本語によるリズムよい文体が遺憾なく発揮された作品です。
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≪兄弟は、生まれたときからこの町に住んでいる。はじめは比較的大きな家に一家四人で、現在は二LDK家賃十三万八千円也のマンションに兄弟二人で。彼らはずっと一緒に暮らしてきたし、夥しい量の思い出を共有している。徹信にとっては三十二年分、明信にとっては三十五年分の思い出だ。≫
彼らはとても仲が良い。二人とも内向的な性格なので部屋の中で映画を見たり本を読んだりジグソーパズルやプラモデルを作ったりして遊ぶ。きちんと定職を持ち、他人に優しく、親孝行。そしてそろって、女にもてない。
≪彼らを見知っている女たちの意見を統合すれば、格好わるい、気持ちわるい、おたくっぽい、むさくるしい、だいたい兄弟二人で住んでるのが変、スーパーで夕方の五十円引きを待ち構えて買いそう、そもそも範疇外、ありえない、いい人かもしれないけど、恋愛関係には絶対ならない、男たちなのだ。≫
だそうです。合掌。いるわーこんな人。しかし兄弟揃ってっていうのが悲惨を超えてちょっと笑える。そんなちょっと間の抜けた雰囲気の中で、間宮兄弟と関わった数人の男女の恋愛事情が描かれる。それぞれの切実な恋愛エピソードに間宮兄弟のユーモラスな哀しさが調和する、心地よい作品。
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30代の兄弟2人は(兄:明信35歳・弟:徹信32歳)今でも男2人で暮らすちょっと変わった兄弟。女性とはあまり縁のなさそうな2人のちょっとおかしな異性関係の物語。
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兄35歳、弟32歳。いい人だけど恋愛においては「そもそも範疇外、ありえない」と女たちに評される間宮兄弟。
なんというか、この“間宮兄弟”の生活ぶりに我が身を振り返ってしまう。言ってしまえば、彼らは今の生活に十分満足している。そして、それが壊れてしまうのを、それとなく恐れている。つまり2人だけで、生活の楽しみが完結してしまっているから、他人が入り込む隙間がないんじゃないだろうか。2人でいることに慣れすぎていて、「恋人が欲しい」と思っても、今の生活を崩すだけの勇気がないんだと思う。
そーなのよ、できあがってるリズムを崩すのって、かなり気力が必要なのよねぇ。
ん〜、この2人のこと、あんまり笑えないっす。
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三十路を過ぎてもふたりで暮らす風変わりな兄弟、間宮兄弟と、彼らを取り巻く人々とのかかわりが描かれている。
著者江國香織さんが以前雑誌のインタビューで、「朝食に何を食べたかではなく、その朝食の卵はスクランブルだったのかボイルだったのかと言うようなところに視線を落として書きたい」と言う様なことを話してらしたのを思い出した。
常に自分らしくありのままで暮らす間宮兄弟の姿は周囲の人から見ると一見奇異に感じられる。けれど、周囲の目を気にすることよりも、季節を感じ空気を感じ居心地のよさを大切に暮らす兄弟の生き方は、周囲の人々にある種の安らぎをもたらす。
情報が入り乱れ、喧騒に追い立てられ自分らしさを見失いそうなときに読み返したい優しい本です。
江國ワールド最高(*^^*)
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10/20読了。うーん、まあまあ。間宮兄弟のような雰囲気の人たちは好きだけど、やっぱり惚れる感じではないかも。
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モテない間宮兄弟の夏から秋の物語。良い人なんだけど付き合う対象には見られない。なんかなぁ・・・。ある意味共感です。兄弟にも、兄弟の周りの女性にも。
異性関係を考えない方が心穏やかに過ごせるんじゃないかなぁ?と自問自答してみたり。
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周りに間宮兄弟のような人たちがいたら、私は絶対にその人たちと関わらないようにする自信がある。けれど、間宮兄弟の生活を垣間見た後では、愛しくすら感じてしまうのは、なぜだろう。
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酒造メーカーに勤める35歳の兄・明信と、小学校職員(庁務手)の32歳の弟徹信の物語。
周りから見れば、目立たず垢抜けなくて 自分から親しくなりたいとは思わないような二人である。地味に地道に自分のやるべきことを一生懸命にやっている彼らである。
二人暮しの彼らの家の中では、それぞれにカラーがありそれぞれの持つ役割がある。そしてなにより 親思いだし 兄弟思いである。
外からは何の楽しみもない人間たちのように見られがちだが、実は彼らには多くの趣味があり、休日も飽くことなく愉しんでいるのである。
そんな彼らがひょんなことから 巻き込んだ人々。そんな彼らになにやら訳もわからず巻き込まれた人々。彼らは この人々の心中にも わずかずつ染み込んでいったのだ。自分たちは報われない人間関係としか思っていないとしても。
よくぞ 間宮兄弟のことを書いてくれた、と手を叩きたくなる気持ちになる。
人生に輝かしいことなどもしかすると一度もないかもしれないような、まさに自分のようなきわめて平凡な人の毎日だって 自分で思うよりは捨てたものでもないんじゃないか、とちょっぴりほろりとなるのだった。
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一体どういう小説だろうと思った。作者は江國。
最新恋愛小説だというが明信と徹信、30代の兄弟が同居している。
嗜好や趣味、日々の生活、毎日の過ごし方、
自己充足的ともいえるが、満ち足りている。
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いいです。
不器用な兄弟の自然体が微笑ましい。そのままでいいんだよ、背伸びしなくても、って応援したくなるし、それは自分自身へのメッセージにもなるような。
毎度のことながら、江國さんらしく、登場人物が皆ディテールが細かく表現されていて、まるでそこに生きて生活しているように感じられる。
恋愛小説ではないが、ここにはいつもの江國さんの描く「愛情」が詰まっている。
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江國香織のラブストーリーが好き、という人には「え?」って感じかもしれない。かく言う私自身もそういう感じだった。文学としてではなく、もう江國香織ワールドみたいなものを楽しみにしちゃっていたんだなぁ、と思った。
彼女の描く女の人が好きなんだな、と実感した1冊
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さらっと読めるような作品だった。間宮兄弟の生活を覗き見してるみたいな気分になって、すんなりと世界に入り込めた。明信の先輩の大垣健太と安西美和子は、やたらと大人に感じた。それとも明信が幼すぎるのか。映像化するなら大垣は仲村トオルさんにやって欲しいかも。理由はただずっと頭に仲村さんが浮かんでたからって言うだけなんだけど(笑)