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サティさんはかわりもの みんなのレビュー
- M.T.アンダーソン (文), ペトラ・マザーズ (絵), 今江 祥智 (訳), 遠藤 育枝 (訳)
- 税込価格:1,540円(14pt)
- 出版社:BL出版
- 発行年月:2004.9
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絵本
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紙の本
サティさんは自閉症?
2007/11/18 14:22
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hamushi - この投稿者のレビュー一覧を見る
音楽家のエリック・サティは自閉症だったのではないかという説がある。
息子が自閉症と分かってすぐのころ、ネットで果てしない情報検索を繰り返していて、そんな話をいくつも拾った。
もうとっくの昔になくなっているひとだし、確かめようもないことだけど、ときどき聞きかじる逸話のなかには、たしかに自閉症を思わせるものが多い。
ものすごい、かわりものだったらしいこと。
人付き合いが、とても苦手だったらしいこと。
偏屈で、集団になじめず、社会慣習にも合わせられなかったらしいこと。
なによりも、生み出す音楽が破天荒で、誰にも受け入れられなかったということ。
いつか、伝記をきちんと読んでみたいと思っていたけれども、なかなかそういうものを見つけられずにいた。
そしたら、伝記のかわりに、この絵本をネットで見つけた。
すぐに取り寄せ、読んでみた。
あたたかな絵と言葉で、サティという音楽家の、おそらくはつらいことのほうが多かったであろう人生を、やさしく語って聞かせてくれる本だった。
グランドピアノから楽しげなガラクタやお菓子をまき散らし、首から赤い太鼓をさげたサティは、山高帽の教師陣に気圧されるようにして、後ずさりながら去っていく。
詩人の友だちに連れられてサティが行き着いたのは、夢のようなカフェ、「黒猫亭」。
秩序正しい世の中からあぶれてしまったものたち……文士や画家、ダンサー、黒猫、詩人の骨など……が、それぞれに自分らしくあることのできるその場所で、サティは「ジムノペティ」を演奏し、自分の音楽を受け入れてくれる仲間と居場所を持つことができるようになったという。
「ジムノペティ」は、息子も気に入っている曲である。パニックになりそうなとき、この曲を聴かせると、自己コントロールを取り戻すことがある。悲しいのか楽しいのかわからない不思議な曲に、息子はなにか確かなものを感じるのだろうか。
絵本の作者のアンダーソンさんという人が、サティと自閉症の関係について考えたことがあるのかどうかは分からない。けれども、サティという人の音楽だけでなく、人柄や人生のなかの、暗いところや悲しいところ、生前には誰にも受け入れててもらえなかったところも含めて、すべてを敬愛し、あたたかな思いを寄せながら、この本を作ったのだということは、間違いないと思う。そのことで、自閉症児の親である私も、なにか救われるような気持ちになる。
蛇足だが、自閉症の子どもたちのなかには、サティのように非凡な才能を秘めた子どもが、ときどきいる。もしかすると、「ときどき」ではなく、ものすごくたくさん、あるいはほぼ全員であるのかもしれないと思うこともある。
けれども、学校という場では、規則や慣習を理解することの難しい子どもたちは、その才能をのばす機会を持てず、才能の存在すら認められないまま、就学期間を終えてしまう場合がほとんどである。
サティは中年を過ぎてから、一度は追われた音楽学校に戻り、意志の力で勉強を終えたという。けれども、幼いころに、彼の特性をきちんと理解した上で療育を施すことのできる「学校」があったなら、彼の人生は、もっと別の豊かさを帯びたものになっていたかもしれない。
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