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唐の官僚、王玄策がインドに使者として赴き、活躍する話。田中芳樹は「銀河英雄伝説」「創竜伝」などSF系や冒険物を書くが、中国歴史物も多い。まぁ、今までの中国歴史物と比較すれば「天竺熱風録」は読み易かったけど・・少ない史料を膨らませて文体も語りかけのように読み易くしたせいか、中学生向けのように人物、展開が単純化してしまった。まぁ、作者もあとがきで「驚異的な史実にもとづいた、単なる娯楽小説である」と書いてあるように、気軽に流して読めばいいんでしょう。
しかし「薬師寺涼子の怪奇事件簿」もマンネリ傾向、風刺を含んだユーモア作品が読みたいなぁ〜
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中国は唐の時代の王玄策の小説。
かの名君・太宗皇帝(李世民)の命を受けて
天竺つまりインドへ派遣された友好使節のリーダーです。
実は王玄策は生涯で3度天竺に渡っているので、
これは2度目の天竺の話にあたります。
その2度目の天竺。
しかし長旅を経て行ってみると
友好関係にあった天竺・マカダ国の戒日王は既に亡くなっており
混乱に乗じてアルジュナという下賎の者が王位を簒奪していたため
36名の使節は4名が殺され、残りは投獄されてしまったのです。
しかしそこは王玄策。
副使の蒋師仁とともに部下の期待を背負って牢から抜け出します。
向かったのは吐蕃(チベット)のアムシュヴァルマン王の国。
その地で王玄策はネパール兵を借り、
中国とは環境も先方も違う天竺の地で戦い、勝利し、
部下を救い、戒日王の一族である地婆西那に皇位を継がせるのです。
天竺といえば象部隊など、中国ではありえない戦法も存在します。
すごいの一言です。
感想というよりは王玄策の紹介の様になってしまいましたが、
異国の地で策を巡らせ戦いしかも勝つという格好いい話です。
しかも田中さんも書いていますが、
王玄策のいいところは、勝利後も自らのための略奪等はせずに
友好使節の役割を果たして帰路にたったということ。
植民地とか生々しいことがなくて、さっぱりと読みきれました。
あと、王玄策が捕らわれていた部下達と再会する場面で
「かの予譲に較べれば、おれなど苦労したうちにはいらんよ」
という会話があって「さすが田中さん!」って感じでした。
予譲というのは春秋戦国時代の暗殺者のこと。
知伯の客分として厚く遇されていた人ですが、
知伯がその傲慢さで味方に裏切られて殺されたあと、
顔を焼いて容貌を変え、毒をあおり喉を潰してまで
敵である趙襄子を執拗に追い続けたことで知られています。
趙襄子もその忠義に関心して一度は捕らえたものの、
逃がしてやるのですが、それでも予譲は趙襄子を狙い続け
遂に再び趙襄子に捕らえられてしまいます。
そのさい、なぜそこまで・・・と問われた時の返答が好き。
「
自分は以前の主君には単なる家来としてあつかわれていただけだが、
知伯は自分を親友としてあつかってくれた、だからその恩に報いるのだ。
」
と言い、最後の願いで趙襄子の上着をもらうとそれに剣をつきたて、
「恩は返した」と自殺をとげるのです。
これも田中さんの受けうりなんですけどね。好きです、忠義。
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漫画版と結構違うよ!女武者どこ!?いないね!
講談調の語りが、どこの時代の講談に眼目を置いてるんだろうという疑問はさておき、そこそこ読みやすいよ!
あの国の人って下手に活躍すると、晩年悲惨なコトになりがちだけど、この話の主人公は役人として上がりもせず下がりもせず、安泰な人生だったらしいよ!
という訳で安心して読める面白娯楽活劇でした!