紙の本
数学者のことが(数学が,ではなく)いろいろ判る本ではあります。いかが?
2006/03/27 11:10
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
「リーマン予想」とは何か。それは,「四色問題」や「フェルマーの最終定理」と違い,現時点で未解決で,学者によっては「あと100年もあればなんとかなる……かなぁ?」というヒトもいるという数学史上の大問題なのである。この本は,その超難問に果敢に挑む数学者群像を描いたドキュメンタリー。
数学にはまるで門外漢のオレでも「リーマン予想」という名前と,それが素数に関係している問題だ,というくらいのことは聞きかじったことがある。が,その内容が,ここに「コレコレこういうことをリーマン博士は予想したんですよスゴイですねぇ」と書くことさえとんでもなく難しいほど難しいほど難しいほど難しいほど難しいほど難しい(あまりのコトに針が跳びました)……とは思わなんだ。
目をつむって一息で言ってみれば「ある自然数より小さい素数の数を概算するガウスの『素数定理』を正確に補正するために加算される『ゼータ関数』の零点における解は全て一つの直線上にある」というコトになる(らしい)んだが……言ってる意味分かりますか,分かりませんか,読み飛ばしましたか,そうでしょうとも。
とにかく本書の著者サーバー氏は,この問題の証明に取り憑かれてしまった数学の天才たちを次々と訪れ,彼らの自信,不安,熱情,憧憬,計画その他もろもろを語ってもらうのだ。……読めば読むほどこの問題が自然科学のあらゆる領域にその影響を及ぼしている大問題であることだけがわかるという仕掛け。
……なんだが,智恵足らずプログラマのオレとしては,フランスの数学者アラン・コンヌの言うトコロの数学的発見における4つの段階「集中,抱卵,ひらめき,検証」のウチの「検証」のツラさについて「ああ,これってつまりデバッグだよね」と卑近な写像を見つけて空しく笑うくらいしかできないのだが,なんというか,数学者のことが(数学が,ではなく)いろいろ判る本ではあります。いかが?
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高校数学レベルの知識も危うい人間が読んでもなんとか理解できる、初心者向けの本だと思う。対数や指数、方程式や無限級数等についても巻末で親切に説明してくれている。
それでも、これを読んだだけではリーマン予想の概要をなんとなく眺めたにすぎず、真にリーマン予想を理解するにはどこかの大学にでも通って二三年は勉強しないと無理だと本文中には書かれていた。
個人的にはリーマン予想の重要性と証明の困難さがわかっただけで充分満足。
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今までずいぶん人文科学的な啓蒙書的な本を読書してきたが、たまには理数系の本も読んでみることにした、当然数学については素人当然なんで、書いてある内容自体は把握を難しいが(当然である)、現状数学者がどのような道筋で難問解決に向かっているのか?っということが見えてきてとても面白かった。解決不可能といわれていた「フェルマーの定理」が1995年に解決されていらい、1900年にヒルベルトが提起して10の難問の内、フェルマーの定理が最大にインパクトのある難問であろうと思う。
基本的には素数に関する命題なので、解決されれば現在の暗号化技術も含めて大きく社会(実際社会)にインパクトがあるのではと考える。
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「リーマン予想」という数学の難問を覗き穴にして、数学者という不思議な部族の生態を紹介する本。これは数学の本じゃなくて、数学の王国におじゃましたウルルン滞在記とか、そういう感じの「数学者生態観察ドキュメンタリー」だとおもって、お気楽にチャレンジするのが吉。
「リーマン予想」つーのは数学の世界で現在絶賛突貫中の長距離海底トンネルみたいなもん。で、この本、基本はトンネル掘りたちのプロジェクトXなんだけど、テレビ番組と違うのは、まだこのトンネル開通してないってこと。つーか、ほんとに開通するのやら、いつ開通するのか、まるで見通し付かないというありさまで。
それでも自分なりの見当つけて、いろいろ掘ってる変人たちの、横顔がすんごく魅力的に紹介されていくわけですよ。もちろん、掘ってるトンネルがどういう役に立つかとか、どのくらい昔から掘り進んでいるのかとか、そういう説明もちゃんとしてる。でも、とくに数学的な素養なくても、じゅうぶん楽しめるようにできている。
難しい説明もたとえ話を多用して、雰囲気だけはちゃんとわかるように工夫されているし、挿話も豊富。『博士の愛した数式』(小川 洋子/新潮社)のもとネタだろうなぁというエピソードもあり。個人的には、小説の人物よりもずーっと魅力的だった。
どんな人におすすめ、というのはなかなか難しい。「なぜ山に登るのか」と言われて「そこに山が…」と言われても、やっぱわかんないでしょ。でも、この本は、山の魅力、登山に見せられた人の情熱を、懸命に引き寄せてレポートしている。個人的にはとても愛すべき本。
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いわゆる「ヒルベルト23の問題」の一つ「リーマン予想」について現代の数学者がどのように取り込んでおり、 解決への糸口がどのあたりまで来ているのかを、問題そのものの解説だけでなくどちらかというと、 解決に携わってきた数学者へのインタビュー、人間関係について重点的に書かれており、 数学者以外の一般の読者にもわかり易く解説してある。 (ただし、数学にあまりにも無関心な人には読み続けることはつらいかもしれない)。
数学には門外漢な私ではあるが、数学関係のお話が好きでいろいろ読んできたが、リーマン予想を主題に取り扱ったものは初めてであった。 一般に有名な数学上の難問というと、やはりフェルマーの最終定理、ゴールドバッハの予想を思い浮かべてしまう。 何しろ証明しようとしている内容が理解しやすい(間違っても証明のことではなく、命題自身が理解しやすいということです)。リーマン予想は微妙な感じ。 理系出身ならば命題自身は何となく理解できるが理系でない人に説明しろといわれると うーんとうなってしまいそうである。 工学系の人間としては、証明よりもリーマン予想が成立するとしたら何が言えるのかの方に興味がわく。 本書にも予想を真と仮定した沢山の論文があり、予想が証明されると直ちに500あまりの定理が新しく加わることになると述べられている。これらの論文の中にはN番目の素数をf(N)であらしたものがあるのだろうか? 本書で特に重点的に書かれている数学者ド・ブランジェの、学会の誰にも相手にされず一人黙々と研究を続けている姿は、まるで晩年のアインシュタインの様であり印象に残る。 久しぶりに数学関係の本を読んだが、面白いですねやはり。
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ユークリッドのもとで幾何学の本を読み始めた人が最初の命題を教わったとき、ユークリッドにこう尋ねた。
「でも、こんなこと教わって、何の得になるのですか。」
これを聞くとユークリッドは奴隷を呼び言いつけた。
「この方に3ペンスさしあげなさい。教わった以上何かの得にならなければならないそうだから。」
数学は役にたつのか。
その他、アインシュタインの相対性理論がリーマン面からヒントを得たことも書かれている。