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野ブタ。をプロデュース みんなのレビュー
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紙の本
末は石田か金城か
2004/12/20 21:51
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公のクラスにある日、転入生がやってくる。
デブでワカメヘアーで脂性でブ男の小谷信太は転入一日目にしてクラス全員から気持ち悪がられる。
主人公は信太を「野ブタ」として皆から愛される人気者に仕立て上げることにする。
高校生同士の会話はいきいきしているし、教室の中の喧騒や閉塞感もよくでているし、主人公が野ブタをプロデュースする作戦も、腹を抱えて笑えるほどおかしい。
冒頭の、主人公の朝の身支度場面から、のりつっこみと言うか、目まぐるしく回転する高校生の思考回路がありありと描かれていて引き込まれる。
石田衣良か金城一紀の小説を読んでいるような感じがした。
主人公・桐谷修二は要領がよく、クラスの中心的存在。
仲間の森川や堀内とバカなことを言い合ってクラスを盛り上げている。
こういう輩がクラスに一人くらいはいたなぁ、と思わせるキャラクターなのだが、読み進めていくうちに、修二のキャラクターは着ぐるみショーの着ぐるみを模していることが分かっていく。
彼の考える人間関係はドライだ。たとえば、
「くだらないおしゃべりは仲良いことを証明する一番簡単で効果のある方法だ。『笑い』は人を勘違いさせる。楽しいと思うことが続けば、そのうちそれは『好き』という感情に掏り替わっていき、いつしかいっしょに笑える友だちは親友に成り代わっていく。あとは困っているときにちょっと手を差し伸べてやればいい。自分の手を汚すようなピンチから救わなくたって、一緒に悩んで涙を流さなくたって、こんなにも簡単にインスタント親友が出来上がる。これでとりあえず高校三年間は寂しくもなく、程好い人気を得て安泰に過ごせるというものだ。」
このような友人との距離感について言及している箇所が多くあることから、精一杯つっぱってみても、友人とのつながりの希薄さを彼自身疑問視していると感じられる。
「ストーブと同じだ。近過ぎたら熱いし、離れすぎたら寒い。丁度良いぬくいところ。そこにいたいと思うのはそんなに悪いことか?」
この問いに対していいとも悪いとも本書では明言しておらず、答えは読者に委ねられている。
終盤、トーンががらりと変わっており、少し戸惑いを覚える読者も多いだろう。
あの笑わせ路線のまま終わってくれてもよかったのにという感じがしないでもないが、主人公のそれからを想像させられるラストでもある。
彼はこのまま本音を語ることなく世の中を渡っていくのだろうか、と。
紙の本
次は、何を書くのか楽しみ。
2005/01/29 14:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広 - この投稿者のレビュー一覧を見る
始めは笑えたが中盤から笑えなくなる。
野ブタを読んで、高校時代の自分と会ってしまった気がする。
胸の奥の方を槍で突かれてしまった。
読み終えた今、友達に電話を掛け「飲みに行かないか?」と誘っていた。
紙の本
笑いあり、シリアスあり
2005/01/17 02:20
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:karasu - この投稿者のレビュー一覧を見る
帯にあった、「野ブタ。」を読んで笑いなさい。有難うございます。笑わせて頂きました。しかし、笑いばかりではない、哀愁もしくは、今の時代の世知辛さまで感じさせて頂きました。
小谷信太こと、野ブタの、人気者への荊の道、その過程。勿論、桐谷修二プロデュースで。笑いあり、涙はあったかしら? 中身は良い人でも、外見だけで認知されないなんてことは、往々にしてあるものなのだ。
それに比べて桐谷修二、彼の着ぐるみの装着っぷりは、いっそ嫌味なほど完成されていたようだ。着ぐるみには努力を惜しまずなのだから、多少驕ってしまっても仕方が無いのではないだろうか。たとえ着ぐるみに裂け目ができていても、中々自分では見つけにくい。円滑そうな人間関係も、着ぐるみ一枚のペラペラなものだなんて気付かず、着ぐるみを着続けてしまうのだ。
修二の、着ぐるみを「着る」、「剥がれる」、そしていかなる時も、死守しようとする心情など、後半部分はシリアスモードでかなり読まされた。
紙の本
今回芥川賞候補となったが、直木賞作家の称号も手にして欲しいと思える逸材である。
2005/01/09 14:59
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投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作の著者の白岩玄さんは京都市出身の21歳。
第41回文藝賞受賞作であるが、今回芥川賞にもノミネートされた。
発表前に読むのは選考委員になりきって読めるので楽しみである。
ちなみにもし受賞されれば男性としては史上最年少となるらしい。
若い世代の作家らしく言葉が溌剌としている。
どちらかと言えば純文学というより、エンターテイメントの方向を目指して書かれた方が成功するような気がする。
なんといっても描写力に優れた作家である。
たとえば、主人公桐谷修二が人気者になるべくプロデュースする、転校生の野ブタこと小谷信太の登場シーン。
「生理的に受け付けない男に対し、女はとてつもなく残酷だ。その残酷さは出会い頭にいきなり辻斬り無茶苦茶なもので、この太平の世に無情な人斬りがうようよいるかと思うと、世の気持ち悪い要素を持つ男性諸君はいつ斬られるかとビクビクしているだろう。」
物語は序盤は“野ブタ。”のキャラを中心に笑いを適度に交えて進んでいくが、中盤以降は主人公の生き方(作中では“着ぐるみショー”と言う言葉を使っている)を中心に方向転換。
結構リアルな話となっている。
やや内面描写が稀薄な気もするが作者の言いたい事はしっかりと伝わってきた。
「言葉は人を笑わせたり、楽しませたり、時には幸せにすることもできるけれど、同時に人を騙すことも、傷つけることも、つき落とすこともできてしまう。そしてどんな言葉も、一度口から出してしまえば引っ込めることはできない。だからこそ俺は、誰にも嫌われないように薄っぺらい話ばかりしてきた。言葉には意味を、意志を持たさぬように、俺は徹底してきたつもりだった。」
ズバリ本作は“自分探しの物語”なのである。
学生・社会人・主婦に関わらず、読者も必然的に日常の自分の周囲で起きる物事に対して少し考え直しきっかけとなる作品であろう。
少し心に“メスを入れられた”って感じがする作品である。
このあたり作者の非凡な才能を垣間見たのは私だけであろうか…
たとえ今回芥川賞を逃しても、近い将来直木賞の有力候補になる可能性の極めて高いハイポテンシャルな才能を持った作家の誕生を祝福したく思う。
トラキチのブックレビュー
紙の本
イケてます。
2004/12/18 17:26
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投稿者:のらうさぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校2年の「俺」、桐谷修二は、セルフプロデュース力に長けた、自称学年の中心人物。その修二が、デブでキモくてウザイ転校生、小谷信太=野ブタを、一躍人気者にするべく、つんくばりのプロデュース企画を練り上げる。
クラスメイトはじめ、周囲の人々を「お客様」になぞらえ、作り上げた自分像の「着ぐるみショー」で学校の人間関係を乗り切ってゆく主人公の調子のよさと危うさのバランスが絶妙だ。若者らしい軽快な語り口だが、単に饒舌なだけではないことは、最後のどんでん返しに至る構成力を見ても明らか。
嫌われ者の野ブタをどうやって「キモカワイイ」キャラに変えてゆくかは読んでのお楽しみとして、「作り上げた自分による、他人への影響力を試してみたくて仕方がない高校生男子」、という主人公像にデジャヴを感じ、記憶をたどってみた。思い出した。貴志祐介の「青の炎」だ。ほんとうの自分をひた隠し、ガールフレンドの心を溶かして恋心を誘ってゆく…まあ、完全犯罪をたくらむ少年と、「(笑)」多用少年とはトーンがかなり違うのだが、巧妙なつもりで自壊していくところは共通している。笑えて、ちょっぴり切ない。
人間関係って難しい。高校時代から大して成長していない自分を省みつつ、それでももう少し友達づきあいに真剣だったあのころを思い出した一冊だった。
紙の本
ウサギハカメニカナラズマケル?
2005/01/19 22:58
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ツキ カオリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
糸山秋子の『袋小路の男』に出てきた「あなた」もイヤな男だったが、それを楽々凌ぐ奴が、こんなに急に現われた。
この小説の主人公、俺=桐谷修二(きりたにしゅうじ)である。
この男、高校生なのに、何かと力関係に敏感で(男性はある程度、仕方がないのかもしれないが)、周囲の人の動きと思惑を、かなり正確に計測する術に長けている。勉強もできるようだし、何しろ自信満々で鼻につく。とんでもない奴だ。
なおかつ、自分が一番頭がいいと思っていて、周囲のクラスメートを見下げている。そこに、小谷信太(コタニシンタ)という転校生がやって来た。見るからに冴えない、信太=シンタ=ノブタ=野ブタを、俺=修二は、プロデュースしようと思い立つ。
ソンナニ ヒトヲ ミサゲテバカリ イルト シッペガエシ ヲ クラウ ン ジャナイ ノ?
ジブン ノ ケイサン ハ ヒトニ バレテイナイ ト オモッテイル ノ カモシレナイケド ケイサン ッテ イガイ ニ ヒトノ メ ニハ ミエテ イルモノヨ ヒトッテ サ ソンナ ニ バカ ジャナイ ン ジャナイ?
「バカ」 ガ クチグセ ナノハ ヨクナイ ン ジャナイ ノ?
「バカ」ッテ イイタク ナッタラ クチ ニ ダサズ ニ ココロ ノ ナカ ダケ デ イッタラ?
ドウシテモ 「バカ」ッテ イイタク ナッタラ セメテ カンサイベン ノ 「アホ」 ニ イイカエタ ホウ ガ イイカモネ ソノ ホウ ガ ニュアンス ガ ヤワラカイ ン ジャナイ?
「バカ」「バカ」ッテ ヒトノコト ヲ イウヤツ ホド 「バカ」ッテ ハナシ モ アルカモ ヨ?
読みながら、そんな片仮名・疑問系の台詞が、何度も、ナンドモ、頭を過(よぎ)った。
こんなに「ヤーナ」男が描けているということは、やはり「スゴイ」こと、なのだと思う。
果たして、俺=修二の、野ブタ・プロデュースは成功するのだろうか?
結末の、ある部分が、ある意味予定調和的だったのが、逆に救われたような気がしたと同時に、ラスト部分は、「エ? ソウイウ カイケツ ホウホウ ナノ? ソレ ッテ サ ズルイ ン ジャナイ? イヤ ズルイ ト イウ ヨリ ハ???」と、また片仮名の台詞が頭に浮かんできた。
マエ ジョウホウ カラ ソウゾウ シタ ナイヨウ ヤ ナガレ トハ アル イミ チガッテ イタ カモシレナイ ケド ヨンデ イク ウチニ ヨソウ デキタ ブブン モ アッタ ヨウナ キ ガ シタ ワ デモ ヨソウ デキナカッタ ブブン モ アッタ リ シテ トッテモ ドクゴカン ガ フクザツ。。。
コンナ オトコ ヲ アナタ ハ スキ?
ソレトモ???
ゼヒ ゴ イチドク ヲ バ。