紙の本
満場一致の芥川賞は納得!
2013/07/17 21:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kanaliya - この投稿者のレビュー一覧を見る
玄侑さんの存在は知りつつ、なんとなく難しそう。。と尻込みしていて、今まで読んでいませんでした。が、読んでみたら、引き込まれてしまって、あっという間に読了してしまいました。
文句なしに面白いだけでなく、現役の僧侶の方が、真摯に現代科学を学ばれたりして、現代の私たちに近づきやすい仏教の形を模索しておられる、と感じました。
女性の描写も素晴らしいです。
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あの世とこの世の狭間とか、科学で証明できないことなんかもこれを読むと理屈じゃないことを思い知らされます。また、ある登場人物と一致する考えが必ずあるような気がするのもおそらく現実味を帯びる原因の一つかと思いました。この本については人間が生きることと死ぬことに関していろいろ考えさせられ、興味深いです。
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自ら予言した日に幽界に旅立った、おがみや、ウメさん。僧侶・則道は、その死をきっかけにこの世とあの世の中間=中陰の世界を受け入れ、夫婦の関係をも改めて見つめ直していく──現役僧侶でもある著者が、生と死を独特の視点から描いて選考委員会全員の支持を集めた、第125回芥川賞受賞作。「朝顔の音」併録。 解説・河合隼雄
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芥川賞にふさわしいかどうかはよくわからないけれど、短編なのにそこそこよくまとまっている。すごく感動するという本ではないが、非常に映像的な文章である。映画にするには短いが、ドラマとかによさそう・・・。星3.5くらいか。
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とても面白かった、というのはちょっと違う感想なのかもしれませんが、面白かった。私自身が考える死生観に、新たな考え方を付け加えてくれた本です。なお、中陰、とは、あの世とこの世の境のこと。
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霊の世界とひとくちに言っても、その全貌はあまりに巨大
しかも目に映りません
盲目の男たちがゾウにふれて「まるで蛇のようだ」、「いや柱のようだ」、「いや団扇のようだ」と
言い合いになる話を思い出しました
そんなものは存在しない、と
ラジカルに割り切ろうとすればするほど
ふとした瞬間に感じてしまうことはあるのかもしれない
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とてもさっぱりすっきりしているが、かなり考えられて作られた話だと思う。この内容を理解するには、まだ経験が足りないのか、読み方の深さが足りないのかはわからないが、美しく、良質な文章だったということだけは感じた。(2008.8.15)
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死んだらどうなるのだろう。主人公である僧侶は、「おがみや」である老婆が亡くなってから成仏するまでの時間、いわゆる49日までの時間の中で、その中間の世界と現世とどう折り合いをつけていくのか。僧侶の妻が紙縒でつくる網、タペストリーは、作品のキモとして美しく描写されている。
仏教でいう物質の最小単位である「極微(ごくみ)」は「こっぱ微塵」が更に7つに分かれたもので、素粒子とほぼ同じ大きさで、それ以上は物質ではなくエネルギーという話や、妻の「仏って、ほどけるっていう言葉からきてるって、まえに言うたやん」という台詞にグッときた。
「朝顔の音」という短編も重くて秀逸。
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文春で読んだはずなのに全然憶えてなかったのが軽くショック。
10年以上前の作品だったことに更にショック。
宗教というものが一番胡散臭く思われてた時期に、客観的な視点で現実を見つめている。科学と宗教の齟齬を、みなかったことにしない。
巨大すぎるそれに、果敢に立ち向かう。
河合さんの解説がこれまた秀逸。
全てが複雑に絡み合い、そして解れていく。
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芥川賞受賞作。
芥川賞にはやはり陰が必要なんだな。
陽だけでできている人間は当然いないわけだけど。
感想は「なるほど文学だな」。
僧の悩み、周囲の悩み。
根本は何一つ解決しないけど、あるフェーズを過ぎると悩みはそのまま置き去りにされるのか。
いや、「抱える」のをやめて、置き去りにもできず普段は見ないように「引きずる」ようになるんだろう。
三春の禅僧ということで興味はあった。
般若心経入門は読みやすかった。
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作者が現役の僧侶ということもあって、かなり説得力のある作品でした。
描写力もかなりあって、僧侶に関係していない部分でも圧巻でした。紙縒りが出来上がるシーンが印象的です。
2作の短編が収録されているんだけど、2作とも淡々と話が進んでいくと思いきや、中盤何気ない一言で物語の形相が一気に変わります。
両方共通している話題は死産・堕胎・成仏。
とても女性らしい感性を持っていると思います。
文章も読みやすく、重いテーマを扱っていますが面白かったです。
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和尚さんの書いた、お寺が舞台の、あまり抹香くさくない不思議小説。
死後の世界とかに興味がないのであんまり響いてこないけど。
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「有」と「無」の中間。「陰」と「陽」の境界。そういうことを考えてもぼやあっとしてしまう。色でいうなら白にグレーが交じり合ってケムリ色。それはなんなのだろうって考えられるのは人だけ。でも良い答えがなかなか。。科学と宗教はそいうことをずっと考えてきてるわけだけど小説にして考えていたほうが楽である。が。真っ向勝負も面白い。筆者が用心深く書いたというのがとてもよくわかる。
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この人の作品は初めて読んだ、僧侶らしく仏教用語が多くて、少し難解。
中陰とはあの世とこの世の中間だそうな。
霊魂などを信じられない私だが、
平素考えたことのない「生と死」を見つめるきっかけにはなった。
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主人公の則道と妻の圭子は、おがみやうめさんの死、そして49日を迎えるまでの中陰の期間を通し、夫婦関係を見直していく。2人は流産を経験していた。この出来事をひきずる圭子、彼女は紙縒作りに励んでいたが、これは4週間しか生きられなかった我が子への祈りであり、子を授かりたいという彼女の祈りを表すものであった。その思いを知った則道は我が子とうめさんを成仏を願うため、回向を捧げる。そこで紙縒が舞い上がり、中空に煌めく光景を見て「中陰の花」だとつぶやく。このシーンは圧巻だ。成仏とはすでに個を失った状態をいうので、それが亡くした我が子とうめさんだとは言えないが、則道と圭子にとって「中陰の花」は2人の成仏の「徴」として映ったのではないかと思う。「ある」「ない」では済まさない出来事を、切るのではなく関係づけることによって、救いをもたらしてくれるものが仏教なのかもしれない。