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Carver’s dozen レイモンド・カーヴァー傑作選 みんなのレビュー

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みんなのレビュー92件

みんなの評価4.2

評価内訳

90 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

濃縮ジュース。洗練の極み。

2010/06/24 14:34

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る

村上春樹は訳書の「ロング・グッドバイ」に、
「僕がもっとも影響を受けたのはフィツジェラルドとカーヴァー」
と書いている。

長くなってしまうが、この本の背景について触れておきたい。

カーヴァーはアメリカで数少ない短編作家として、
また詩人として活躍していた。
この本から数珠つなぎで、彼の本を読んでいく中で、
彼の亡くなったときの様子が婦人によって書かれていた。
たくさんの読者から手紙や電報が舞い込んだらしい。
彼の新作を読めなくなる哀しみはもちろん、
彼のつくった物語の恩恵に対するお礼のメッセージが多かったのだ。
愛された作家だったのだなと思った。

カーヴァーを最初に日本に紹介してくれたのが、村上春樹だったらしい。
そして村上春樹によっていくつかの短編が選ばれ訳されて、
三冊の本になった。
この三冊が出版されてまもなく、カーヴァーが急逝し、
村上春樹訳での全集が編まれることになった。
以前に訳した作品ももう一回手を入れることになり、
この三冊はお蔵入りに。

おそらく全集が出る前に、本書が発売されたと思う。
文庫版で、短編の村上セレクション。
これは、三冊が増刷をかけない(当時の村上春樹の意向)ことで、
これらの本を入手しにくくなり、全集を買うのも気がひける・・・
というファンに向けての、いわば特別ヴァージョン。
(訳者いわく、一般向けのポータブルなカーヴァー本)
しかし、この本はどういうことなのか、
しばらくは簡単に買うことの出来ない状況がつづいていた。
それが、いつの間にか復刊していた。
これも「1Q84」効果なのだろうか・・・・・・。

さて、この「カーヴァーズ・ダズン」で
いちばん印象深いのが、「足元に流れる深い川」という話。
訳者自身もこの話でカーヴァーにノックアウトされたのだという。
「足元に流れる深い川」は、語り手である妻の、
夫に対する「言葉にできない感情」の起伏をていねいに描き出している。
心理状態を書かずに気持ちを伝えているということが
こんなに洗練されていることだったなんて。とびっくりする。
「言葉にできないものを言葉を使ってあらわすことに
挑戦しつづけているのが小説なのだ」と言っていたのは小川洋子だった。
(「物語の役割」より抜粋)
そして、しずかに物語は進行していくのに、
主人公の内側に抱えた危険ななにかが、暴れだしそうな予感を秘めて、
緊張感を呼んでいっきに読ませる。
小説のなかの一番の楽しみは「謎」に包まれるということだと思う。
それも、とびっきりおとなっぽいやりかたで、
カーヴァーは「謎」をかけてくるのだ。

ほかにも、はっきりと時間を書かかずに、
ときのながれを情景で追っていく「ダンスしないか」や、
とても上品にほろりとさせる「大聖堂」など、
洗練された短編小説10篇と、エッセイ1篇、そして詩が2篇。

村上春樹は、この1冊で、カーヴァーの世界を見渡せるような、
そんな本にしたかったと書いている。
カーヴァーのエッセンスがぎゅっと詰まった本書を読むと
かれの世界を、もっともっと知りたくなる。
訳者の愛情あふれる改題が全篇についているのも
おおきな魅力である。

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紙の本

乾いた作風がたまらない。

2009/12/25 00:23

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:浸透圧 - この投稿者のレビュー一覧を見る

至極普通の人々を材料に、極上の一品を仕上げてみせる
カーヴァーの手腕には、いつもうっとりさせられる。

特筆すべきは、やはり『大聖堂』だろう。
盲人を「迷惑」とぼやきながら、随所に皮肉をまじえ、苦笑を誘い、
読者をどうしたものかと困惑させて、最後に思いも寄らぬ方法で
思いも寄らぬ境地に落とす展開は見事だ。
カタルシスとも不意打ちともいうべき衝撃で、
涙すらでそうになる印象的なラスト。素晴らしすぎる。

各作品の前に付記された村上の解説も味わい深い。
カーヴァーに心酔する村上の翻訳も申し分ない。
ただ、そこまでカーヴァーに心酔するならば、少しは見習っておくれと
世界の村上さんには思うのだが。

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紙の本

甘いだけが小説じゃない

2011/12/22 21:43

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:アヴォカド - この投稿者のレビュー一覧を見る

苦い、と思います。
救いらしい救いも、多くの人が求めるような癒しもなくて、苦い。

淡々と流れる日常の中では、誰もが自分のストーリーを抱えて暮らしているわけで、誰もわるくないのに、たまたまわるい歯車だけが妙に噛み合っていってしまうことがある。
不条理と呼ぶほどの明確さもなく、誰がわるいわけでもないのに、ただうまくいかない。
そういう苦さ。
その苦さの輪郭を描くのが巧い、と思う。

苦さは、毎日の暮しには往々にしてあることで、そんな時に、何かちょっとクスッと笑ってしまうようなことが起きたり、まるで関係ないことで急に靄が晴れてちょっと救われたような気分になったり、それでなんとかやっていける。いなしいなし、進んでいく。

やっぱりそういう時はシナモンロールとコーヒーだな、と思う。

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紙の本

しあわせであるように。

2003/05/22 21:28

2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:アベイズミ - この投稿者のレビュー一覧を見る

久しぶりにカーヴァーを読んだ。

「Carver's Dozen」。この一冊は、選ばれた小説をとっても、村上春樹の添え書きをとっても、構成をとっても、良くできている本だとあらためて感じる。

カーヴァーの本には幾つかの食べ物が出てくる。ありふれたシンプルなアメリカの食べ物ばかりだが、私はそれを読むのが大好きだ。シーザー・サラダ、ボウルに入ったスープ、エクストラのパンとバター、ラムチョップ、サワー・クリームをかけたベイクドポテト、チョコレート・シロップを添えたヴァニラ・アイスクリーム。特別に飾り立てる言葉もないのに、私はひどく無邪気な気分になる。同じモノを食べてみたくなる。村上春樹に惹かれたきっかけも、彼の食べ物の書きようが、とても美味しそうだったから。そんなことを思い出した。

当たり前の食事、生活の中の食べ物が、私は好きなんだと思う。

カーヴァーの作品は、イヤな予感が漂っている。何かが起きる予感、予兆が抑えたトーンで書かれている。これから何か悪いことが起きるような、根拠のない軽い胸騒ぎを覚えずにいられない。それが私には少し辛くもある。物語も人生も、時に私の手に負えない。「運命」という言葉を私は好んで使いはしないが、人は自分の存在を越えた大きなモノの前には、いつも無力だ。

カーヴァーはある時点(まさに点のような)から、物語の色合いがガラリと変わってしまう。その話の結びを読んで欲しい。取り返しがつかない、自分の力ではどうにも出来ない方向へ話はぐいと曲げられて。抑えたトーンは一転をして、突然投げ出された感情に、私はいつもどぎまぎとする。戸惑ってすくんでしまう。淡々と出来事を見つめていた目が、突然私に向けられる。そしてこう言う「お前は? お前はどうなんだ?」

カーヴァーが好きですか? そう聞かれたら、私はなんて答えるだろう。Yes or No?

答えになるのか分からないけれど。そう前置きをして、こんな風に答えると思う。

カーヴァーの本はすごくやっかいだ。

カーヴァーは私の一時期の暮らしを、まざまざと思い出させる。それはもちろんすごく個人的なことで、カーヴァーの責任ではない。「ダンスしないか?」の中の娘が、会う人ごとにその話をして、伝わらない何かが残って、何とか言葉にしようと試みたけれど、結局あきらめてしまったのに似ているのかもしれない。私はもうあの時の出来事は、誰とも--もう一人の当事者である彼とも--共有できないことを知っている。それは悲しむことではないけれど、事実として横たわり、動かしようがない。ただ知っている。それ以上どうしようもない。

それでも「ぼくが電話をかけている場所」を読んで欲しい。私はいつも胸が熱くなる。誰かに伝えずにはいられなくなる。「アルコール中毒診療所」での、発作がいつ訪れるかも分からない、飲んだくればかりが一時身を置くその場署から、カーヴァーは生きのびるという、シンプルな欲求を思い出させる。生きて行くことは、しんどいことだ。それじゃあ、「生きて行く」を「生きのびる」に換えてみないか。「生きのびる」は獣の領域。アタマとカラダをフルに使って、あの頃の自分を思い出そうよ。きっと何もかもが上手くいく。
 
あの頃、彼と私が気に入っていたゲーム。遠い土地、憂鬱な病院。毎日の採血。彼が、小銭をじゃらじゃらいわせて電話ボックスを探す。現在のヘビーな状況や、ややこしい話はいっさいなし。どもるのもなし。ただ、元気になるために、生きのびるために電話をかける。だけどその決意は口にはしない、冗談半分で口にするようなことではないから。

「いずみちゃん」ただ彼は言う「あ、俺だけど」と。

彼の今が、しあわせであるように。

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紙の本

12編プラスワン

2002/06/20 02:31

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:カレン - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書にはレイモンド・カーヴァーの代表作12編プラスワンが納められている。
そして序文に、カーヴァー研究者による、日本の読者のためだけに書き下ろしされたエッセイも入っている。

レイプされ、殺された少女の死体を偶然見つけながら、キャンプの計画を優先させる男たちと、夫のそうした行為に嫌悪感のおぼえる妻の「足元に流れる深い川」は、読み終わってぞくぞくするような、不思議な読後感を覚えるまさにマスター・ピース。
「ささやかだけど、役に立つこと」は、誕生日にケーキを注文していたのに、子どもが交通事故で死んでしまい、ケーキはパン屋の店内で誰も引取りに来ないまま悪くなっていく。
子ども、職にあぶれた無学な労働者などの、無力な人たちを書いたカーヴァー。
感情描写のない抑えた文体で、読み終わったあとにじわっと悲しさが染み出てくる。
詩とエッセイも一編ずつ収められていて、それらもみごとにそのカーヴァー世界を体現している。小説の中にあっておまけのようになってもおかしくないのに、比べても全く遜色ない、立派な一作となっている。
本書を読んで、他の全作品を今すぐ読み尽くしたいという強い衝動に駆られた。
まったくをもって、編者村上春樹の意図どおりだ。

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2004/09/23 23:14

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2004/10/14 00:40

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2004/11/04 20:03

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2004/11/11 18:24

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2006/07/11 19:00

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2006/10/19 00:09

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