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紙の本
年齢不詳というのは、女性作家だから許されるってもんじゃないんじゃない。この話、40代の既婚者なら、まあよく出来てる、だけど20代なら、恐るべきってことになる
2005/07/17 22:01
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
装丁 SONICBANG CO.、 カバー写真 豊田豊。カバーの紙質もあるのでしょうが、一見、写真ではなく写実的な油彩画の印象があるカバーです。で、作者についての略歴やこの作品についての説明は、本そのものには全く記載されていず、真梨の年齢もですが、発表誌か書下ろしかも奥付などに記載はなく不明。メフィスト賞のことなどどうでもいいのかもしれませんが、不親切の感は否めません。
全体は三部構成ですが、タイトルがあるわけでもなく実にあっさりしたもの。
その舞台となるのが、埼玉県にある多岐森市です。そこに眺望を誇る34階建ての、スカイヘブン多岐森マンションがあります。主人公は、とりあえずそこに新居を構えた長谷部麻美ということにしておきましょう。35歳の夫である隆雄は有名なK電気本社勤務で、順調に出世をしています。二人の間には11歳になる娘 美沙子がいます。少女は、今流行りの私立中学進学を目指しています。
麻美には10歳年下の妹で、父親が違う奈未がいます。インディーズ系のバンド「アークエンジェル」のリーダーである大崎敏樹と結婚していますが、バンドの取り巻き連についてはいい感情を抱いてはいません。そして麻美と奈美のふたりは、淫蕩ともいえる母親のことが大嫌いなのです。
で、話の核にあるのは姉である麻美の隠された生活です。彼女は結婚するまで妹が住んでいたアパートを名義をそのままにして借りることにして、そこでネットで募集に答えてきた三人の男マサト、ミノル、タクヤと日を決めて関係を持っているのです。そう、そこで彼女と関係した男たちを悲劇が襲います。
もうこれだけで十分でしょう。セックスを中心にしたドロドロした人間関係が延々と続きます。で、私が著者の経歴に拘った理由が、そこにあります。20代でこれを書いたとしたら、結構、凄いです。文章もですが、世界が40代の作家にこそ相応しいものなのですから。上手いとか下手ではありません。慣れているな、そんな気がするのです。
それから、この話、構造がいいですね。話の解明については、え、なにそれ、的な部分があって物足りないので、そこがメフィストかな、とは思いますが、そこまでがいい。どうなる、え、どうなるの、なんて引っ張ります。その分、あれれ、と思うわけですが、それが若さでしょうか(ま、若いとはどこにも書いていないのですが)。
ついでにメフィスト賞について言えば、何故だろう、むしろ乱歩賞のほうが相応しいのでは、そんな気がします。やはり、話が与える著者の年齢のもつイメージがあります。そういう意味で、著者略歴を載せ、そこに生年や受賞について書いて欲しかったと思うのです。凄さに震えるとか、若さに快哉というのではありませんが、十分楽しめる作品ではあるのです。
紙の本
嫉妬と悪意
2005/06/19 19:35
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公は、大企業に勤めるサラリーマンの夫を持つ麻美。
四年前にマンションを購入し、娘は小学六年生で中学受験を控えている。
傍目には何不自由ない主婦である彼女は、週に三度、複数の男たちと「隠れ家」で体の関係を持っている。
その男たちが次々と不可解な死に方を遂げてゆく。
やがて麻美自身も体内に虫がいるように感じ始め、その挙げ句精神に異常をきたした彼女は失踪する。
ホラー7割、官能3割、といった感じなので、どちらにも興味のない読者が本書を手に取るのは難しいかもしれない。
かく言う自分もその一人だ。
が、本書に関しては、あまりのリーダビリティに一気に読んでしまった。
根底に人間と人間との関わり方がいかに難しいかを描いている小説だ。
特に、母と娘、姉と妹、といった女対女のどろどろした嫌らしさにしかと目を据えている。
「欲望はまだかわいいもんです。一番恐ろしいのは、嫉妬と悪意ですよ。これは、いけない。人をも殺す、恐ろしい凶器ですよ。こっちがおとなしく生きていても、どこで嫉妬の対象になるか分かりゃしない。無差別殺人のようなもんですよ」
次々と死んでゆく登場人物たちの体内に巣食っていたのは、嫉妬と悪意という名の虫かもしれない。