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みんなのレビュー16件

みんなの評価3.5

評価内訳

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紙の本

胡蝶の夢か、そのまた夢か

2005/05/29 11:25

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

ここまで来ると著者ライフワークと言わざるを得ないと思う桂子さんシリーズも、入江さんの孫の慧君が主人公となる作品。桂子さんが女子大生だった時代から始まったシリーズだけど、もうそんなに時間が経ってしまったのですか、そうですね。桂子さんも入江さんも背景の方にちょろちょろと登場して、相変わらず妖しい存在感を出してはいるが、独立した作品として読めます。
ネット上でカリスマ的存在であるという慧君は、当然ながらモテモテであり、オンライン、オフラインで多くの「交遊」を持つらしいのだが、今は入江財団の首魁でもある祖父からクラブを譲ると言われ、1人で利用したり、女の子を連れて行ったりするようになる。クラブには、これまた妖しいバーテンダーの九鬼さんがいて、慧君やそのガールフレンドを、その度に妖し気なカクテルで歓待してくれる、という趣向の連作短篇集。
カクテルは慧君を酔わすだけでなく、不思議な夢の世界へいざなってくれる。そこを訪れるのは一人ではなく、同行者も同じ記憶を持ち帰っているし、時にはお土産まである。次第に現実に侵食してくる夢なのだ。
慧君の好みはコケティッシュなタイプのようで、今の時代にあって漢文の素養があったり、雪女や骸骨それに植物まで、それぞれたいへんに個性的なのだ。慧君は毎度彼女たちの魅力にとことんのめり込んでしまうのだが、しかし悲恋こそが一番美しいということだろうか。
慧君の恋が成就しないのには、きっと何か仕掛けがあるのだ。
彼を自分のものにしたくても決してかなわない、そんな禁断の何者かが黒幕として、すべてを操っているのではないか。それはたとえ情景の端っこに影を落とすだけであっても、きっと作者の分身なのだぞ。なんと狂おしい恋だろう。その媚惑的な妄想のおかげで、僕は溶けちゃいそうになりました。

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2007/12/16 01:06

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