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岩波講座都市の再生を考える 5 都市のアメニティとエコロジー みんなのレビュー
- 植田 和弘 (編集委員), 神野 直彦 (編集委員), 西村 幸夫 (編集委員), 間宮 陽介 (編集委員)
- 税込価格:3,190円(29pt)
- 出版社:岩波書店
- 発行年月:2005.2
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紙の本
快適な都市は可能だ
2011/09/15 04:23
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
確かに都市には、田舎と比べて何でもそろっている。とりあえずの便利さという点では、都市生活に優るものはない。
それでは、都市での生活の快適性、いわゆるアメニティの点ではどうか。
全く逆である。むしろ都市生活者は、生活の快適性、いわゆるアメニティを犠牲にして便利さを享受していると言えるのではないか。
現代では、いや、少なくとも日本における現代においては、「都市」と「アメニティ」の両語に決して親和性はない。都市にアメニティを求めること自体が形容矛盾になっていると言っても過言ではない。
その大きな原因の一つは増大する自動車交通である。
本書は言う。
『本来非都市的な交通手段である自動車を都市に無理やり持ち込もうとし、膨大な都市空間を自動車交通のために割いたとしても、道路混雑が解消されるわけではなく、高い水準のアクセシビリティが提供されるわけでもない。ただ、都市は確実に非都市化する。これが中小都市圏で昨今注目されている中心市街地衰退問題の本質である。』
利便さを追求するために持ち込んだ自動車交通が、都市生活からアメニティを奪い、ひいては都市の最大の利点である中心市街地の活性化を妨げる。ひいては、「都市は確実に非都市化する」ことになる。
そして、さらに都市からアメニティを奪い去るのが、一見、都市に最適と考えられる高層化である。「都市再生」「都心部活性化」などのかけ声とともに、実は全くの土建産業向け施策であった容積率緩和などによる都市高層化が、都市から「生活する場」としての性質を喪失させている。
ここでも、本書は指摘する。
『人間は太古から地に足を付けて地表面に住むことがもっとも自然で安全な生き方である。空中や地下や海上という環境は人間にとって本来的に無理があり、災害に対しても弱い。これを人間生活の基本的な場ととらえたり、未来の都市空間として美化することは理にかなうものではない。特殊な条件の場合に一時的に採用すべきものであって、こうしたもので埋め尽くされた都市空間は異常というべきである。』
まちがった都市像、人間の身勝手とも言える利便性の追求が、本来の都市をどんどん歪めていく。
「持続可能性」という言葉がある。
本書の解説によると、『国連の環境と開発に関する世界委員会によって、持続可能な発展という概念が1987年に発刊された報告書において提示され、その後の世界や地域を考える際の指針とされた。』とある。
定義は、『将来の世代が自らのニーズを充足する能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすこと。』である。
もともと、1980年に公表された国際自然保護連合の世界保全戦略に盛り込まれた言葉で、1992年の地球サミットで合意されたアジェンダ21でオーソライズされたことから、爆発的に使われるようになった。
つまり、みんな気づいていたんだ。都市にこのまま発展・拡大を望んでいてばかりいたのでは、とても持ちこたえられないことに。それは経済性でも、快適性でも、何より地球環境的に。
これからの都市のあり方を考えるうえで、あらためて「持続可能性」を念頭におきたい。そうすれば、きっと、あんな変な「都市再生」なんて考えは決して起こっては来ないはずだから。
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