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紙の本
はっきりいって、ダサいタイトル。で、中身はっていうと途中はともかく、ラスト、おいそれ反則だろってね、広瀬正の『マイナス・ゼロ』が懐かしい、なんちゃって。でも、どこか後を引くのは確かです、はい
2005/07/10 17:41
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
何度も書いて恐縮だけれど、気にしながら読まずに来た作家、というのが私にはかなりいる。古典は当然としても、1960年代までの、特に純文学となると殆ど全滅で、ま、ミステリならば読んでるかな、という程度。でも1970年代以降にデビューして、ある程度作品を書いている人ならば、気づけば読む。ところが、それらの条件を満たしながら、読まない作家がいるのだ。
立松和平はちょっと古いけれど、高橋源一郎もそうだし、藤本ひとみもそうだ。で、長野まゆみもそうなのだ。本のうしろの広告頁に、河出書房新社から出ている長野作品が載っている。『三日月少年の秘密』『コドモノクニ』『猫道楽』『水迷宮』『八月六日上々天気』『賢治先生』『千年王子』『超少年』『新世界』とかなりの数だし、その殆どを書店や図書館の書架で見ている。
タイトルを眺めながら、どんなお話なんだろう、どう考えてもエンタメ系のものだよな、でも北上次郎や椎名誠、いや沢野ひとしでもいいけど本の雑誌系の人が、長野の名前出したことないよな、新聞書評だってそうだしSFやミステリ雑誌だって、斎藤美奈子は勿論、中条省平、大塚英志、岡野宏文、豊崎由美、大森望、もしかして高橋源一郎も彼女の名前を出していないんじゃあないだろうか、そう思う。
これだけコンスタントに作品を出しているのに何故?だから、とりあえずパス。で、今回、初めて手にした。タイトルが気に入った。だってズバリSFでしょ、このタイトル。頁数少ないし(今までの長野の作品は、どれも分厚くない)、カバー、可愛いし。げっ!なに、装画 長野まゆみ、装丁 泉沢光雄・・・長野ってイラストレーター?
おまけに奥付周辺から書いてしまえば、掲載誌は2004年の春、夏、秋の「文藝」。え、これってエンタメでしょうが、どう見てもというか、どう読んでも。「すばる」については聞いてましたよ、エンタメも純文学もいっしょに扱うとは。でも「文藝」でしょ。筒井康隆を「新潮」に載せる、ならそれなりにインパクトあるけれど、『時の旅人』が文藝?コバルトの間違いじゃあないの、とまあ驚愕。
でお話の内容。
大正12年、関東大震災直前の東京を軸に、S中学に通う13歳の千束真歩を見舞う不思議と乙姫貴志との出会いを描く「リュウグウノツカイ」。昭和35年、13歳になった明石潮が家に帰ると、そこにいたのはS校に通うという千歳チハヤ。彼は玉手函を持ち帰るというのだが「タマテバコ」。江ノ島に遠足で出かけたS校のオカモトリクが出会ったのはアカツキと名乗る少年、眠りから覚めない友人 駒のためにリクがとった行動は「トコシエノタビ」。
どう読んでもエンタメ。無論、悪くはない。あっさり読み終えて、なんじゃこりゃ、と思ったけれど、今こうしてそれについて書こうとすると、なかなかいいかも、とも思う。S中学、13歳というのを軸に据えて、大正12年、昭和35年、昭和44年と時代を変え、それが同じ人物が同じ形で登場するというのではなく、予想外のかたちで登場したりする。
結局、最後は夢でした、で終わる話なんて、マンガだろうが小説だろうが、映画にだって許されない反則技というか能無し技だぞ!と怒りも覚える。でも、なんだか揚げた拳がおろしにくい。勿論、傑作!なんて騒ぐ気は全くない。広瀬正『マイナス・ゼロ』のほうが遙に面白いと思う。恩田陸『ネジの回転』だってそうだ。
でも気になる。もう一度読むか、もう一冊手を出してみるか、と聞かれれば、とりあえずはご遠慮します、とは思う。でも、どこか気になる。それが意外と多い長野の著作の秘密?