紙の本
「Jポップ」というドアから迷い込む、日本人の心の奥の不思議世界。
2012/05/18 03:21
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しのはら - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルに『Jポップ』とついてるからって、「あ、音楽批評ね。きっと、生い立ちや私生活からアーティストの実像に迫ったり、楽曲や歌詞から、その時代を分析したりしてるんでしょ? あるある」なんて思ったら大間違い。
「音楽・芸能」コーナーに置くべきか、「人文・社会」コーナーに置くべきか。こんな評論見たことない!
あゆ・GLAY・B´z・スピッツ・椎名林檎・桑田・ユーミン・ブルーハーツと、80年代後半以降の錚々たるアーティスト達を取り上げているのだけれど、彼らへの興味から不用意にドアを開けると、そこには「古来から培われた、日本人に共通の深層心理=集合無意識」という深淵がぽっかりと口をあけていて、あっという間に吸い込まれてしまうのです。
それも、たいそう気持ち良くね。
「サザンの茅ヶ崎コンサートは、お盆の墓参り」とか「あゆの元型は日本民話に登場する」とか「スピッツの詞には丸いものがやたらたくさん出てくる」とか言われ、「んんっ? ちょ、ちょ、ええ〜どういうこと???」と目を白黒していると、心理学・民俗学・宗教学的裏付けを惜しげもなく広げて親切丁寧に説明してくれ、あれよあれよという間に、すとんと腑に落ちてしまう。
「なるほど、それで彼らはこんなにウケたのか! この国の人々に」と。
論文調のきちんとした語り口なのに、分かりやすく、びっくりさせたり安心させたりのリズムが心地よく、「口説き上手」という言葉が脳内でちかちか点滅。
また、各章がそれぞれウエルメイドで完成度の高い小世界となっていて楽しめる上、一冊読み終えた頃には知性レベルが3割ほどアップした気分になりおトク。
本書は、「Jポップ」を取っ掛かりに、日本人と日本文化を心の内側から読み解いた、非常に斬新で濃密な、読み応え十分の評論であります。
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それぞれのアーティスト(サザンオールスターズ、松任谷由実さん、ザ・ハイロウズ、GLAY、浜崎あゆみさん、椎名林檎さん、B‘z)の音楽性の根底にあるものを日本文化や哲学、宗教性、民俗学、社会性などに置き換えて論じています。
あとがきで筆者が書いていますが、Jポップの向こう側にあるもの(現代日本人の心象風景・日本人とは何か)を見つめる1冊です。
それを押し付けるほどにアピールをして、その存在を憶えさせようとする意図がひしひしと伝わってきました。時々読んでいて自分が何の本を読んでいるのかわからなくなるくらい。それでもまぁ、興味深いものでしたが。
こういう見方があるのかぁ…という感動がありました。
何も、Jポップでそれをやらなくてもいいではないかと思いましたが、このようにJポップを考察する本はきわめて珍しいのだとか。他にもこれからどんどん出てきてほしいですね。
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20世紀の日本の音楽シーンを築き上げてきたビックアーティスト8組を、社会学・文化人類学・民俗学・日本文化論など様々な学問の知識を培って、そのヒットや人気の秘密、さらには日本の音楽シーンの特色・特殊性を分析した書籍。大胆な仮説設定に基づく論の進め方に少し強引さを感じるものの、発想は非常に良く読んでいて面白い。モーニング娘。やGLAY、B’zに対する分析はとても興味深かった。
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「Jポップとはなにか?」の作者の別本。Jポップミュージシャンを日本の伝統などと絡めて論じた面白い論点。著者本人は、ブルーハーツは好きなんだな〜って思いながら読んだ。
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あと2年大学生でいられたら、このタイトルで書きたかった、な!現代アーティストを、日本固有の概念、宗教的土着思想の視点で書いあり、大変興味深い。――サザンのコンサートが開かれた茅ヶ崎総合公園野球場からは、江ノ島がまっすぐに見える。あの世とこの世の交流の祭礼に、打ってつけの場所ではないか。コンサートにやってきた客の姿を観察すると、浴衣にウチワというお盆の祭礼独自の伝統衣装の人がたくさんいる。観客もこの集まりの暗示する意味(夏=先祖の霊を祀る、お盆)を感じ取っていたことがわかる。サザンのみならず、最近は浴衣姿で夏のコンサートに出かける客が多いのは、こうした「夏の音楽の祭礼」を非日常的な「マツリ」と無意識に受け取っているからではないか。そう、桑田佳祐は、現代の祖先霊供養の祭礼者、マスター・オブ・セレモニー(MC)としてそこにいたのである。(中略)このコンサートの実現のために、5万人の署名が集まり、茅ヶ崎市はわざわざ市議会で条例を改正し、球場の使用料を十分の一に引き下げたそうだ。祖先霊を供養する祭礼として、歌や踊りという民族信仰が長く日本人の心性に根を下ろしているからこそ、「お盆は厳粛な宗教行事なのに、ポップスのコンサートなど不謹慎だ」という非難も起きず、市役所や新聞といった保守層も納得して地域社会全体がサザンを温かく迎えたのであろう。そして、それにこたえるかのように、桑田佳祐は血縁・地縁共同体への愛と感謝を盛んに表明した。つまり、この茅ヶ崎コンサートの「物語」は、時期・場所・内容とも、「先祖霊を含めた血縁・地縁共同体へ敬意を払う」という日本人の民俗信仰の内容にぴったり合致しているのである。――(本文より抜粋)
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◆CDが売れなくなったといわれて久しいが、いまも若者は最新のヒット曲を携帯電話の着メロにし、ライブを行えばスタジアムを満員にするアーティストも多い。なぜJポップは、これほどまでに日本人の心をとらえてやまないのか―Jポップを代表する八組のアーティストをとりあげ、その人気のありかたや歌詞に通底する文化的原型を、心理学、民俗学、神話学などの手法で分析、彼らに魅せられてしまう日本人の集合的無意識をも明らかにする画期的評論。◆ 色んなことを考える人がいるんだなぁ、、という感じです。内容はかなりこじつけぽいけど、本題である歌との関連は流す程度に読めば、付随する内容によって浅く広い教養が身に付くかも。
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£3
J-popを代表する8組のアーティストを取り上げ、その人気のあり方や歌詞に通底する文化的原型を心理学、民俗学などの手法で分析する論書。日本人の集合的無意識など興味深い。
アーティスト:桑田佳祐、松任谷由実、GLAY、ブルーハーツ、草野マサムネ、浜崎あゆみ、椎名林檎、B'z
状態は良好。書き込みもありません。
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章によってまちまち。好みの問題かしら。
松任谷由実、甲本ヒロト、浜崎あゆみ、椎名林檎の章は気に入った。
最終的にどの議論も宗教学的解釈に収束していってる印象。
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8組のアーティスト(桑田佳祐、松任谷由実、GLAY、ザ・ブルーハーツ、草野マサムネ、浜崎あゆみ、椎名林檎、B’z)を社会学的視点から分析した本。
その試みは非常に面白いものであり、また元新聞記者の著者が書いただけあって援用する資料の範囲がとても幅広く、本人のでき得る限りの知識を総動員させているような意気込みが伝わってきた。
インタビューも取り入れてみたりと、「どういう評論が好ましいか」について様々な手法をこらして取り組んだ努力の跡も見られる。
しかしあくまで社会学的視点での評論のため、音楽を愛する人に好んで読まれる本かと言われればそうでもないと思うし、またそういう視点は本来とは異なる分野のものであるため、言ってしまえば本流から外れている感は否めない。
かなりの知識レベルを兼ね備えたアマチュアによる、かなり高いレベルでの評論と言った感じがする。
この分野における評論がもっと盛んになっていけばそう感じることもないと思うんだけどね。
でも読んでて面白かったです、僕はこういうの好きだから。
(2006年10月19日)
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桑田、松任谷、GLAYなどのアーティストを、日本人の感性を引き合いにして論評したもの。なぜこうしたアーティストが人気を博するのか、ユニークな論ながらも、大いに共感。
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[ 内容 ]
CDが売れなくなったといわれて久しいが、いまも若者は最新のヒット曲を携帯電話の着メロにし、ライブを行えばスタジアムを満員にするアーティストも多い。
なぜJポップは、これほどまでに日本人の心をとらえてやまないのか―Jポップを代表する八組のアーティストをとりあげ、その人気のありかたや歌詞に通底する文化的原型を、心理学、民俗学、神話学などの手法で分析、彼らに魅せられてしまう日本人の集合的無意識をも明らかにする画期的評論。
[ 目次 ]
日本的共同体とアメリカ―桑田佳祐(サザンオールスターズ)
現代日本のシャーマン―松任谷由実
成長なき時代の成長物語―GLAY
ロックによる救済―ザ・ブルーハーツ
死を見つめて―草野マサムネ(スピッツ)
「文明」と闘うサイボーグ女戦士―浜崎あゆみ
娘による母親殺し―椎名林檎
日本的「模倣文化」の象徴―B’z
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
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☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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「Jポップとは何か」について、8組のアーティストを取り上げて、著者の視点から主に作詞と現象面から分析した一冊。
音楽論ではなく文化論なので、音楽性の話は期待できない。
ただし、Jポップに対する新たな価値観の定義付にはなったかと。
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この本のタイトルを見て、「音楽の話かな?」と思って手に取ってみたが、実際はJポップを通して日本人の内的世界を語る、という内容だった。
この本は8章からなり、8つのアーティストそれぞれが異なるテーマで語られている。そのテーマというのも、心理学や民俗学、神話学からなるものである。
正直Jポップというよりも、日本人の心象風景の方が中心に書かれていると思う。
そして普通の人なら考え付かないであろう作者の独特で面白い考え方にも触れることが出来る。音楽が好きな人でも十分に楽しめると思う。実際にこの本を読んでみて、ああ、確かにそうかもしれないな、と日本人特有の考え方を再認識したりした。
ちょっとそう考えるのは無理があるな、という所もあったりもしたが…笑
作者が書いている事が絶対に正しいという訳では無いが、こういう考え方もあるんだな、と一人の日本人の意見として読んでみると面白いと思う。
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日本の歌はなぜ海外では売れないのか?
その理由がわかりました。何気なく聴いていた歌詞にも日本特有の背景があることがわかり、興味深く読めました。
個人的に、ブルーハーツは、パンク(と思っていた)なのに、なぜ、こんなに幅広く支持され、曲が歌われているのだろう・・と思っていたが、この本で納得した。
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<目次>
第1章 日本的共同体とアメリカ~桑田佳祐(サザンオ-ルスターズ)
第2章 現代日本のシャーマン~松任谷由実
第3章 成長なき時代の成長物語~GLAY
第4章 ロックによる救済~ザ・ブルーハーツ
第5章 死を見つめて~草野マサムネ(スピッツ)
第6章 「文明」と闘う済ボーク女戦士~浜崎あゆみ
第7章 娘による母親殺し~椎名林檎
第8章 日本的「模倣文化」の象徴~B'Z
<内容>
JPOPの代表的な歌手(グループ)を基に、日本文化を考える本。と言っても、桑田佳祐やユーミン、草野マサムネや椎名林檎は歌詞に踏み込み、B'ZやGLAYには一切出てこない。GLAYはとりあえず生き方の話であり、B'Zは彼らに関わる話は皆無に等しい(「模倣」の日本文化、いや文化そのものの話)。ザ・ブルーハーツは宗教的な(それも仏教)話である。これを諾するか否とするかは、読者にゆだねられるであろう。