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紙の本
フリーターと失業者とニート
2005/08/29 13:01
17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栄助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近の、ニートを中心として論じる青年の労働問題で、抜けていると感じるのは、ニートとフリーターの間に「失業者」があるということだ。ニートは、やる気を出しても、直ちに就職するわけではない。まずは就職活動を始める、つまり、失業者になるだけだ。
現在日本には、少々減ったとはいえ、300万人以上の失業者がいる。就職活動をしても1年以上長期的に失業し続けている人が100万人近くいる。青年の失業率は、全体の2倍、10%近くある。そんな状況で、ついさっきまでニートだった青年が、簡単に無職を脱出できるだろうか?
だから、ニートを考える場合、失業者と、失業しやすい不安定なフリーターまで、連続的に考えないといけない。
本書の編著者は、青年の労働問題にあかるいことで有名だが、そんな理由で、『フリーターとニート』というタイトルに不安を抱きながら、手に取った。失業者をどう位置づけているか、忘れていないか。
結論から言えば、私の不安は杞憂だった。本書の序章は、「若年無業・失業・フリーターの増加」とあり、ニート・失業者・フリーターを連続的に論じている。
ならば、タイトルも失業者を加えてもらったほうが、誤解の余地がなくてよかった、と少し思う。たしかにイギリスでは失業者も含めてニートだが、日本での概念は、失業者とは区別されているのだから。
内容は、若者支援団体・NPOなどを通じて、ニート〜フリーターまでの青年にインタビューを取り、実態から困難な労働状況に陥った共通点を、学校の就職支援、家庭教育などの面から探っている。「最近の若い奴は、甘いからだ」と一括りにして切って捨てるのは、簡単だろうが、真剣に対策を考えるならば、こういう地道な作業を通して、実態に迫ることが必要だろう。
それでも、サンプル数は51と多くはない。どれほど、彼らに接触することが困難か、うかがうことができる。ニートとは社会的に排除された青年のことを指す概念なわけだから、大変な作業だろう。分析が少しこのサンプルを絶対視しすぎている観もあるが、サンプルを集めた苦労は評価できる。
本書を読んで分かるのは、いったん既存の就職コースを外れたら、相当の幸運がない限り、正規雇用は無い、ということだ。しかも、その既存の就職コースに十分な雇用が用意されていない。地方の高卒就職希望者は、優秀でも就職が無い現実がある。
雇用状況が良ければ、彼らのほとんどは、ニート〜フリーターの状態に落ち込むことはなかったかもしれない。それが、雇用の悪化・劣化にともない、彼らを取り巻く様々な社会的基盤が脆弱だったため、ふるい落とされた。
対策の方向は、コースを外れた青年にどんな支援が必要か、ということが論じられている。言い換えれば、既存のコース以外に、新しく多様なコースをつくる必要性が説かれている、といっていいだろう。それは、たしかに必要なことだ。労働者が就職したら最後、一つの企業に一生人格ごと縛り付けられる既存の日本型就業形態には、疑問を感じるところが多い。
しかし、本当に青年の労働問題を解決させようと思ったとき、本書にあるものだけでいいのだろうか? 率直に、なぜ雇用が悪化・劣化しているのか、そこを問う必要があるのではないだろうか。つまり、産業構造そのものに論を進めなくてはいけない。
本書が雇用の悪化・劣化の原因と解決の問題に切り込んでいないからといって、価値をなくしたわけではない。ただ「甘い」という理由にされてきた問題を、実態から迫ることによって、社会の問題という議論のうえに乗せた。そして、本書が説いた、多様な就職への移行コースを構築することは、やはり、雇用の改善を待つことなく、始めなくてはいけない。その意味で、本書の提言は貴重なものだ。
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