紙の本
日本に帰化したあるインド解放運動家の伝記
2007/09/19 11:05
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あわ はちすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
20世紀初頭は帝国主義国家が覇権を争う時代であった。当然帝国はその本質上植民地や植民地化を競う。西洋列強による中国への侵略、ロシアの中国東北部への進出、フランス、オランダのインドシナ半島の制圧、またロシアへの防衛本能から帝国主義化して獲得した日本の朝鮮半島支配。そしてこの本の主人公の故国、英国領インドの実態などである。
そんな歴史的背景のもと大正から戦前の昭和にかけて一人のインド解放運動家が日本での活動を展開する。その終始一貫した故国の植民地解放に対する情熱と行動力が当時の日本の政治、軍事風土や社会とどう交わったのか?それがこの著書のテーマである。内容的にはラース・ビハリー・ボースの伝記であるが著者は彼を通じて当時における日本の精神的風土の一端を浮かび上がらせる意図を表明している。それは玄洋社や猶存社のいわゆる帝国主義的打算の西洋列強主義ではない精神的なアジア主義者達の実態をである。
主人公R.B.ボースは1886年(明治19年)にカルカッタ近郊に生まれ15歳で反英独立運動に目覚める。26歳のときインド総督爆殺計画を実行してイギリス系官憲に追われる身に。その結果1915年(大正4年)危うく日本へ脱出。来日まもなく孫文や頭山満に会い玄洋社や黒龍会の庇護を受けるようになる。しかし英国外務省の追及は厳しく国外退去命令によって窮地に陥るがここで新宿「中村屋」の相馬夫婦の助けによって一時地下生活へ。その縁で相馬の娘俊子と結婚、日本に永住を決心(大正7)、やがて1922(大正12)年帰化する。後に中村屋の「インドカリー」をつくり当たる。
大正12年頃から言論活動を開始、徐々に知名度と交友範囲を広げインド解放運動への啓蒙とともにオピニオンリーダーとしての地位を築いてゆくが昭和5年の「満州事変」辺りから日本軍部の侵略性をインド独立の手段として利用する言辞が目立つようになる。
昭和16年「大東亜戦争」が勃発すると大東亜共栄圏内のインドという主張から日本軍のインドシナ侵攻作戦に便乗してインドの反英独立戦争を組織する為にバンコックへ。しかし日本の傀儡という烙印を押されチャンドラ・ボースと代表を交代。病に倒れ終戦の年(1945年)日本在住30年にして58歳で亡くなる。
ボースの波乱にとんだ生涯は大英帝国からの故国インドの独立、開放という目的にすべて捧げられた。英国を打倒する為には同じアジアを虐げている日本の軍部や政治家、アジア主義者と手を結ぶことも躊躇しなかった。特に晩年は英国を倒するのならヒトラーやナチスも礼賛した。この宗主国打倒のためには手段を選ばない強引さと思考上の矛盾のためにインド国民会議派のネルーなどからは日本の傀儡と批判される。
著者はそんなボースやそれを取りまく日本の「大東亜共営圏」や「八紘一宇」のプロパガンダを推進する勢力を批判的に捉えながらも全否定する危険とボースが持っていた西欧近代主義に対する精神的なアジア主義の中に共感するものを見出そうとしている。ボースが亡くなって62年、大戦後の中国、韓国、東南アジア諸国、インドなど当時の搾取されていた諸国は一応独立を果たした。しかしボースが望んでいたような西欧近代主義を包摂するような宗教的意味も含めたアジアからの世界観という理想が実現しているだろうか。「アジア的」とは何か?今後とも問われる問題でありその啓蒙の一冊としても面白い。
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インド人の生き様から、日本の歴史についても考えさせられる
2022/09/09 09:35
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投稿者:amisha - この投稿者のレビュー一覧を見る
長年気になっていながら読んでいなかった一冊。
歴史に翻弄され、日本に身を置きながら祖国インドの独立に奔走した男の一生。
そして、和菓子の中村屋が果たした役割がこんなにも深かったとは知らなかった。
カリーのエピソードも胸を打つ。
アジア人として、忘れてはならない歴史が描かれている。
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やはり、警察の目を盗んで中村屋に逃げ込む所が一番手に汗握った。ボースだけでなく、中国から日本に逃れてきた「革命家」の多くも、最後には日本側に取り込まれる運命を辿った。是非は兎も角、もう一度中村屋の「インドカリー」を食べに行こう
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新宿中村屋のインドカリーの源は、日本に亡命してきたインド独立運動の闘志だったとはつゆ知らず。大正期の知識階級の亜細亜主義の潮流を知るにも好適の一冊。今やアジアで一番元気なインドとの交流の歴史にもっと光を当てて良い時期に来ているのでは?
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インド独立運動に一生をささげたボースの生涯を描いたもの。新宿のお菓子屋である中村屋にどうしてカレーもあるのか、という問から始まっているものの、それはほんのエピソードで(しかし、中村屋の娘は父の正義感に感じてかボースに嫁ぎそして夭折する。彼女の心の中がどうであったかはほとんど描かれていないのは不満)、中心は、ボースがいかにアジア主義を掲げる日本に期待し、そして失望していくかを描くことにある。大東亜共栄圏をいかに声高に唱えようと、その本質が欧米にかわる日本による支配の実現にあることはインド革命家の目にもあきらかであった。それにしても、ボースの娘に多くの資料を提供され、本書を完成させるまでのいきさつがほとんど書かれていないのは少々もの足りない。
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日本に亡命し、インド独立運動のオピニオン・リーダーとして活動したラース・ビハーリー・ボースの伝記です。
「中村屋のボース」というのは、彼が新宿の洋菓子店『中村屋』に匿われ、その恩返しとして本場のインドカリーを伝えたことから付いた呼称です。
日本で最初に本格的インドカリーを広めた「中村屋のインドカリー」ですが、その裏には近代日印関係の壮大なドラマが秘められていました。
日露戦争で勝利し、国際社会での地位を高めつつあった日本へのアジア解放の期待。
その一方で、朝鮮・中国を侵略し、英国と同じような帝国主義路線を突き進む日本への失望。
やがてインド独立のため、日本の侵略路線を擁護せざるを得なくなり、不本意ながら同胞たちから日本の傀儡視されたボースの苦悩が描かれています。
・・・正直この本を知るまで、ラース・ビハーリー・ボースという人物の存在をまったく知りませんでした(汗
インド独立運動の指導者で「ボース」という名であれば、「チャンドラ・ボース」を知ってただけです。
ついでに、新宿の中村屋も、単にそういう洋菓子店があるということだけしか知らず、普段新宿を通る時にもまったく意識してなかったので、まさかそのお店で本格的インドカリーを食べられるとも思ってませんでした。
しかしこのラース・ビハーリー・ボースの存在を知ってから、ムチャクチャ食いたくなりましたねw
ニン、トン♪
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『インドの時代』と同じ著者による本。色んな世界が、運命の糸でつながっていることを感じる一冊。巧みな構成は、そこらへんの小説家よりも数段上!
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2009年初読書はこの本。おお面白い!
中村屋にインドカリーを伝えたと言うインド独立の闘士ラース・ビハーリー・ボースの伝記でございます!
インド独立の大義の下、兵士を煽動して反乱をたくらみ英国総督を目論んだ挙げ句指名手配の身となった結果日本に亡命したものの、英国に身柄を引き渡そうとする日本政府に目をつけられたボース。しかし、玄洋社の頭山満や黒龍会の大山周明と言った近代日本の黎明に燦然と名を残す大物アジア主義者たちの庇護を得て、当時一介のパン屋であった中村屋に身を隠すのであった!
・・・ええいったいどこの冒険小説ですか?
いっそ大河ドラマの主人公にしたらものすごく面白いんじゃないかと言う。
プラグマティストが昂じるあまりの後年の立ち居振る舞いも含めて、大変素晴らしゅうございました・・・・!
のっけから本年のプラチナ本。まあ数年前の刊行ではあるんですが☆ 読んで損無し!
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インド独立運動を日本で展開した、中村屋カレーパンの生みの親でもあるボースの記録。
日本史の中では有名な人だったのかな?初めて知った。
著者が30そこそこでこれだけのものを書きあげたのに、感心するとともに、同年代の自分としては若干焦る。
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理想が現実に屈したのだと感じた。そして冷静さを失い周りの状況が見えなくなってきたのではないか。今も昔もそんなに変わらないのが人間の性なのであろう。
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お世話になっているインドの御坊様のお知り合いが書かれている本。
1915年、日本に亡命したインドの闘士。新宿の中村屋に身を隠し、アジア主義のオピニオンリーダーとして、インドの独立を指導したRBボース。
中村屋のカリーの奥深さもあわせて知る本です。
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日本に亡命し、日本からインド独立に最後まで取り組んだ志士とそれを支えた日本の物語。
戦前の日本は孫文を初め海外の独立運動を革命家を支援していた。しかし、一方で日本は、満州国を立て帝国主義に進んでいく。
ボースは、インドの独立を心の底から願いながら、インドから離れた日本で影響力と実行力を持つために日本の帝国主義的な部分を受け入れる。また、日本での支援を得る日本文化を理化する資質を持っていた。
結果的にそれらが、日本に操作されているようにとられ、インドの独立家の不信感を招く。
そして、最終的にそれらが要因となり、日本からももう一人のボースに道を譲ることを打診され、潔くリーダーを譲る。
独立の目的のためとはいい、道を譲るボースをすごいと思う一方で、ボースのつらさも伝わりとても複雑な気分。
自国を理解するものだけをイデオロギーに関係なく受け入れる日本という国の特徴は今も変わらない気がする。
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http://blog.goo.ne.jp/abcde1944/e/417cd8333e4b48e55b485361d4d107ca
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偉業を成し遂げられなかった男の生涯。血沸き肉踊る青年期と無為で焦るばかりの壮年期、その落差が熱涙。
あと、インド近代史は全く不勉強で反省した。
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5年ほど前に図書館で借りて読んだ本。
もう一度読みたい一冊。
中村屋のカリーを見かけるたびに思い出しているw
週間ブックレビューで取り上げられたのが読むきっかけだった。
著者が若いことに驚いた。