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「贖罪」を読んだので、同じ著者の本をもう一冊。
「贖罪」に比べてボリュームがあまりに違う。
一人の女性の死を巡って、かつて恋人だった音楽家ど編集者と、現在の夫である政治家の話である。
短いけれど、話は錯綜して悲劇的結末になる。
他にも読んでみたいが、文庫ではこの二作しか手に入らない。
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訳者のあとがきを最後に読んで、ああなるほどと納得できる内容であった。
唯一の友人同士の衝突、そして各々の道徳心。誰かが助けを目の前で求めていたら、助けるか、それとも仕事、自分のことが最優先なのか。
90ページにある、引用部分であるが、一番印象深く残った部分である。少し例えは違うが、一度はお互い信頼しあった同士が、別れた後に、いくら嫌いであれ、報復行為に走るのはやはり違うと思う。そういう人間のエゴ、道徳心が垣間見えた。人はお金や地位、名誉のためなら、そういうことを平気でするものなんだ。
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タイトルと”ブッカー賞受賞”という2点だけで読んでみた。
イギリスの話で、オランダはキーではあるけど最後の方にちょっと出てきただけで残念。イギリスらしい修飾の多い洗練された文体なのだろうけど、日本語になると非常に読みにくい… 訳者のあとがきでも、引用も多く苦労したとあったので元々読みにくいのかも。
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ロンドン社交界の花形モリーが亡くなった。痴呆状態で迎えた哀れな最期だった。夫のいる身で奔放な性生活をおくった彼女の葬儀には、元恋人たちも参列。なかには英国を代表する作曲家、大新聞社の編集長、外務大臣の顔も。やがてこの三人は、モリーが遺したスキャンダラスな写真のために過酷な運命に巻き込まれてゆく。辛辣な知性で現代のモラルを痛打して喝采を浴びたブッカー賞受賞作!
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あらすじ読んで、女性が死ぬ前に何か策を仕込んでおいた女性活躍物語かと思いきや。おっさん達がぐだぐだうだうだして、男の嫉妬は怖いねって話だった。残念。
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クライヴとヴァーノン。
二人の恋人だったモリーの死(というか死に方)によって掛け違えたボタン。
二人に同時に訪れた人生のピークの少し前、クライヴの不干渉とヴァーノンの干渉。
二人の意見の相違と、これ以上ないくらい悪いタイミングの電話と葉書。
掛け違えてなんかないかも知んない。
二人にモリーが最後にもたらした安らぎが印象的。
「あー、アムステルダムだな」
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不完全な善人たちの破滅を描いた作品。
そんなに殺すほど?と思ったけど、仕事を失ったり台無しにされたりするのはキツいのかな。
作者の登場人物に対する意地悪な筆致が心地いい。
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個人的にはクライブに感情移入した。彼の作品が完成することを願いさえした。完成の妨害に苛立ちさえした。 イアン・マーキュアンの作品は本当にどれも面白い。 善人が悪人を攻撃し、反対から見るとその悪人は善人で悪人から攻撃されている。 最後の1章はとても納得いく終わり方だった。彼らの安らかな眠りを心から願ってしまう。 ぐっと読ませるそんな作品だった。
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辛辣かどうかは分からないが、確かに、この人は、とても博識で知性があるのだと思う。
そして、ウィットに富んでいて、洒落ていて、皮肉が効いている、その芳醇な味わい深い文章は、まさに噛んで含めるように、ゆっくりと楽しむべきだと思い、約200ページ弱ながら、一ヶ月くらいかけて読み終えた。その芳醇さは、クラシック音楽に関して特にそう感じ、一つ挙げてみると、
『神さびた石段は登られ、音の断片は霧のように融け去り、新しいメロディはまず弱音器をつけたトロンボーンによる孤独な出現を暗く記され、入りくんだハーモニーをもった合奏の衣をまとってゆき、ついでやってくる不協和音とめくるめくような変奏は空間へと飛び散って二度と帰らず、メロディはいまや爆発の逆回しのように凝縮の過程に入り、急速にすぼまって静止した一点となる~』
なんて文章の素晴らしさに、思わず感嘆のため息をもらし、前回読んだ「贖罪」同様、今作も完璧かと思っていたら、終盤で一気に尻すぼみに。
振り返ってみると、物語を読み始めた時、亡くなったとはいえ、その華やいだ存在感の眩しさに、まずはモリーが主役なのかと思い、かつての元恋人たちが(クラシック音楽の作曲家クライヴ、新聞社の編集長ヴァーノン、外務大臣ガーモニー)、モリーの思い出話に耽る、哀愁感あふれるセンチメンタルな展開になれば良いなと夢想したが、そうだ、マキューアンの作品だったと思い、そうなるわけもなく、物語はクライヴとヴァーノンが、人生の山頂から少しずつ転がり落ちてゆくような、冷徹な展開へと向かっていく。
ただ、そうなったきっかけが、モリーの遺した写真だったような書き方は、私は違うような気がして、それこそ冷静に見ると、自業自得もいいところで、なんというか、文章は素晴らしいのだけど、読んでいて、だんだんムカムカしてくるような感覚を引き摺りながら、向かえた終盤のあまりに唐突な展開。
好き嫌いは別としても、まだ理性的で納得はできた物語を形成していながらの、あの終盤はどういうことなのか? 訳者あとがきにおける解釈は分かるようで分からず、理性の危うさの一言で片付けようとしているが、それ言ったら、何でも成り立ってしまうのではないか、と私は思うのですがね。
別に、最後に味わう思いは何でも構わないのだが(まして文学作品なら尚更)、今回は、私の琴線に全く触れることが無かった。ただ、それだけと言えばそれだけのことなので、ブッカー賞受賞について思うことは特にありませんし、マキューアンが嫌いというわけでもありません。
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認知症で終わった前作『贖罪』
奔放な女性の認知症で始まるこれ、ちょっと凝り過ぎじゃないかと思う、ストーリー。