紙の本
リアルとフィクションの境界を揺さぶる面白さ
2024/02/19 14:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは……何だろう。伝奇をモチーフにしたミステリーの顔をして、奇想天外なエログロナンセンスを繰り広げるホラーなのだが、まるで小説のセオリーの強度試験をしているような、あるいは読者の正気を試すような、作者のマインドマップを疑いたくなる文章が延々と続く。下手に書けばチープなテンドンになりかねない展開も文学評論的な挿話のおかげで象徴的な事象に昇華されていて、その筆力に圧倒される。
飛鳥部勝則先生の作品はこれで三冊目だが、これは中でも内容があまりに露悪的なので人を選ぶと思う。だが、思わずうなってしまう箇所がいくつもある。今は復刊されて入手も容易になっているので、機会があれば手に取って読んでみて欲しい。
投稿元:
レビューを見る
飛鳥部勝則氏は10作目まではミステリーを書いているのですが、一転、この作品は完全なホラー。
キャラ立ちまくりの怪人達が現われ、想像力の限界を突っ走るような壮烈にグロテスクな物語が展開されていきます。
とにかくテンポが良いのと、ミステリー作家らしく謎から謎へと物語をつなげていく展開力が素晴らしいです。帯にはキング、クーンツ、マキャモンの三大ホラー小説家を引き合いに出してこの作品を評していますが、彼らの作品にも劣らぬ光を持つ作品ですね。非常に面白いです。
ホラー小説ファンにオススメできる逸品です。
投稿元:
レビューを見る
本格ホラー。序盤は不条理ホラーっぽい感じで、中盤ではじわじわと恐怖を感じるサイコホラー的。そして終盤ではモンスターホラーだなあ。あらゆるホラー要素てんこ盛り、一冊で何度もおいしい「これぞホラー」。図版も入っていて、雰囲気を抜群に盛り上げてくれる。たぶんこの図版のせいで少し値段が高かったような気もするけれど、その価値は充分にあった。
これを読むと……合わせ鏡には怖くて立てないな。でもあの洋館でのシーン、妙に美しい気もする。乱歩的じゃないかな。鏡というのは、恐ろしいけれど非常に魅力的な要素。
投稿元:
レビューを見る
ホラーな本は苦手だったのですが最後までスッと読み切れました。後味がいいような、悪いような不思議な本でした。
投稿元:
レビューを見る
鏡の分身に悩まされる人たちの話。
気持ちの良い話ではないのに、なぜか爽快。
きっと分身の葉子が言うように本当はそうしたいと思っているからなのか…
自分が自分である証拠って確かにわからない。
投稿元:
レビューを見る
作品解説(カバーより):帰宅途中、浮浪者ふうの男に襲われた葉子は、無我夢中で抵抗した結果、男を死に至らしめてしまう。婚約を間近に控えた彼女は、悩んだ末、死体を海に捨てることを決意。完璧に隠蔽をやり終えたはずだったが、翌日、友人の結婚式で彼女に声をかけてきたのは、昨日殺してしまったはずのあの男だった……。旧家に伝わる鏡が、ひたひたと街を侵食する。
まず、構成が面白く、半分ほどで物語りは終わりを見せるように見えるが、そこから更なる展開へと発展してゆく。
前半は、現実と架空との狭間で真実がどこにあるのかがわからなくなり、後半に向けての伏線が緻密に練りこまれており、久遠が語る過去の回想も一つのストーリーとして楽しめる。
後半では、自己存在の証明における恐怖をうまく描いているが、終盤からは極端に大味になっている。悪く言えばB級ホラーを見せられている感覚に似ているかもしれない。それでもラストが上手に仕上がっているのでホラー好きにはオススメできる。
哲学的スプラッターホラー、ここに誕生です。
投稿元:
レビューを見る
胸糞エログロ、フリークス、エゴイズムと、自身の投影による哲学的思考という一見相反したものを見事に一緒くたにした濃厚な作品。
これは賛否割れそう〜(^▽^;)
鏡だけにね………w
主人公、葉子は、帰宅途中に暴漢に襲われ、正当防衛で殺害してしまう。
彼女は恋人からの婚約解消を恐れ、遺体を隠蔽する。
後日友人の結婚式で、海に捨てたはずの男がいた—。
私が読んだ飛鳥部作品(6作品)の中でダントツにグロい!!
読む年代によってはトラウマになるのでは…(^_^;)
エロも登場人物達の行動が胸糞。
ただ、飛鳥部作品独特の淡々とした物言いに、他のバイオレンス作品のような嫌悪感は沸かないのが不思議だ。
冒頭に絵画を写真が掲載しており、それらがどう物語に絡んでくるのかが魅力。
絵画には、鏡の破片に裸体の女が映り、現実と鏡に映し出されたもう半分が合体している。
「稲垣孝二」という画家が描いたこの絵画にインスパイアされて書いた小説ではないらしい。
飛鳥部氏は、作品に合わせ挿絵を描いたことはないと、あとがきに書かれていた。
大抵の絵と小説は別々である。
すごい。
映し出された自分との対峙による葉子の葛藤が、本作の見どころであると思った。
自分を自分だと証明する術がない事に対する絶望。
客観的に自分を見た時、自分の願望がいかに醜いかという事に対する嫌悪感。
己を見つめ直す作品と言えない事もない。(このグロに耐えられれば笑)
容赦ないグロはどちらかと言うとクトゥルフ系で、苦手な人にはおすすめできない。
だが非現実的なので、ここまで胸糞は逆に爽快。
(バイオレンスの方が現実的で怖い。)
飛鳥部勝則さんは、フリークス系がお好きですね。
私も大好きです♡
次はどの作品を読もうかな(〃´-`〃)♡
投稿元:
レビューを見る
復刊版を購入。
リアリズム的な作風に突然呪われた鏡なんて代物が出てくるので違和感があった。
冒頭から超常的な趣きがあればまた違っただろうが。
第2章以降はエロくてグロい展開に。
洋館で凌辱と殺戮を繰り返すのはサドっぽいと思った。営みもそうだが人間(?)の扱いも即物的で共通している。
『美徳の不幸』では被害者は一切声を上げない。あくまで主体の欲望の対象物でしかない。第2章のコピーたちもそんな感じ。
最後の方はとっ散らかった印象。
霊視が都合がよすぎ。
意外な自白があるがただ嫌な気持ちになるだけなのでなくてもよかったような。
『黒と愛』にもあったがこの作者はイっちゃった人間のモノローグが迫力あって読ませる。
『黒と愛』はあんまりだったがこちらも期待したほどでは。
『堕天使拷問刑』がよすぎた。