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紙の本
「フィクション論」予告編?
2005/08/09 02:19
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
雑誌に発表された書評や、全集や文庫に掲載された解説などをまとめた本で、短くてクリアな内容だったのでわりとあっさり読めた。今年中に出ると予告されている「フィクション論」の序奏という感じで、全編「語ること」と「書くこと」の間を話題の中心にしている論考集になっている。たとえば集中唯一の書き下ろしである谷崎論が『魂の唯物論的な擁護のために』所収の小森陽一との対談で触れられていた『吉野葛』論であるように、その一つの問題を考え続ける持続力に感心させられた。
いわゆる「文芸社会学」と曖昧に折り合って個人の心理や社会の構造の反映を文学に求めるような手合いと違って、テクストの外部との関係をいちいち線引きしながら具体的な細部を分析・記述していく手つきの鮮やかさは流石といったところ。もっとも、いかにも短すぎるので物足りない、というのも正直なところではある。また大岡昇平の『天誅組』論で「土佐」と「長州」が取り違えられているところがあったり、初出一覧の『シンセミア』論のタイトルで「パンを焼く」が「パン屋を焼く」となっていたりなど、誤字や誤表記が多い本だった。急いで出したわけでもないだろうに、校正係は何をやっていたんでしょうか。
ともあれ、蓮實重彦の長年の読者であるならほとんど読んだことがある内容ばかりでやや期待はずれになるおそれもあるが、ハスミンを読んだことがなく、あまり理論にも馴染んでいない人で、彼の文芸批評を読んでみたいと思う人には、ちょうどよい論集なんじゃないかと思ったりもした。そういえばいまやカラヤン・ハスミンの時代でもないわけで、こういう薄い本を導入として出すことには情況的な意義があるのかもしれない。しかし、雑誌「ルプレザンタシオン」に掲載されたソシュール論はどうなったんだろうか。そういえばデリダが死んだときに『エクリチュールと差異』について書いた小文とかもあったし、似たような趣旨で外国文学(思想)編も出して欲しいような気もする。
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