紙の本
情ゆえの惑い。
2016/01/10 09:27
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投稿者:うりゃ。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年亡くなられた宇江佐真理氏の作品。
人情味溢れる火消しの頭一家と泣き虫な武士の家の子という組み合わせ。
それがただの「いい話」で終わらないのが憎いほどうまい。
火消しの娘・お栄は由五郎と所帯を持っているが、従兄弟の金次郎と駆け落ち寸前までいった仲。
泣き虫たろちゃんこと太郎左衛門の家は、厳格な母親と祖母の間にひんやりしたものがある。
そして流れる歳月。
頭の吉蔵を含め、誰にでも降り積もる老い。一枚皮をひっぺがせば見えてくる身内でのどろどろした関係。
その普遍性こそ、読者に共感を呼ぶのだろう。
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宇江佐真理の作品です。いつものように人のいい人が出てくる。しかし人には、なにか悲しいものがある。避けようとしてもさけられないもの、そんな人々の生き方がみられ、じんと来る話
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宇江佐真理さんの時代小説
そこはかとなく、営まれる生活が読むものを和ませます
は組の頭に、七歳の弟子入り志願が・・・意気地がないので修行をしたい・・・
お武家さんの子息ですが、情けない、がんばらない・・・
すぐ泣くのだが、とにかく人柄が良い
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江戸の下町の火消し組頭吉蔵と娘・お栄、そこに「男になりたい」と7歳のたろちゃんこと武家の息子・太郎左衛門が吉蔵を訪ねてくる。この3人を中心に出てくる人達が皆、魅力的で輝いています。お栄の夫・由五郎、幼い娘・おとく。お栄の従兄で元・許婚の金次郎。お栄の幼馴染・おくら。その他・・・お栄の啖呵を切るときの気風の良さが颯爽としているかと思うと、金次郎に関する話しになると娘に戻って涙ぐむところがまた人間味に溢れています。たろちゃんの極端に大人びた礼儀正しさ、言葉遣いとその臆病さ、幼さのアンバランスが何ともユーモアとペーソスにあふれ、楽しく素晴らしい作品です。
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ある日、町火消、「は組」の頭取、吉蔵の元に、
武家の子がやってきた。
太郎左衛門と、厳しい名前ではあるが、弱虫の泣き虫少年。
少年は「頭、拙者を男にして下さい」と頭を下げる。
吉蔵は、男の道を教わりたいと言う少年に
男の道とはどう言う物か?と聞いた。
「夜は一人で厠に行けること」
「青菜をいやがらずに食べる事」
「道場の試合に負けても泣かない事」
と言う。
何ともあどけない少年だが、彼の存在が、吉蔵一家の、癒しとなる。
私の癒しにもなった。
火消しにしては、穏やかな、吉蔵が良かった。
やっぱり、宇江佐真理氏の作品は、安心して読める。