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重厚で緻密な、石造りの建物のような小説。丹念に削りぬいて積み上げられ、その隙間には紙一枚も入らない。
血なまぐさいあらすじに惹かれて読み始めたが、本を閉じると、物悲しく静かな余韻が残る。
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徳川300年の平安の影にこういうこともあったわけだ。
誰もが良いことだと信じてやっているのに、事態は悪い方へ流れていくのが切ないです。
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2007/7 図書館から借りて読んだ。
今のままであらしめたい、というのは皆々おなじはずなのだが、過程で各人の正当化がまじり、できあがったものは悲しいかないびつなものでしかなかったという話。
あえて言うなら主人公は藤九郎になるのだろうが、
『己を灯とし
己を拠とせよ
他のものを拠とするな
真理を灯とし
真理を拠とせよ
他のものを拠とするな』
が、第三章(p.304)で差し挟まれるのは、皮肉に思えた。村のものは皆、もとよりそのつもりで動いていただろう。ただただ、くいちがっていたにせよ。司馬遼太郎の小説は、リーダーたれ、と声高に言い立てているようなごりっぱな小説なのだろうけれど、圧倒的に数が多いのは無常に死んでいく名もないもので、それが書かれている山田風太郎には好感がもてる。と、連れが言っていたことばを思い出す。
ひき比べてしまうと、やはり山田風太郎のほうがおもしろい。
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ついさっきまで生活していた痕跡を残して、突然住人達が消えてしまった隠れ里をめぐるお話。
はじめはバラバラだった謎が
グイイイイイイっと一つに収束して
しかも最悪の格好で完成するという鬱ストーリーなのに
「どうだ!読んだった!」という達成感いっぱいです。
誇り高い隠れ里の住人たちがカッコイイ!
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この作家の作品にはずれは無いんじゃないだろうか。
まだ2作品しか読んでいませんが、どちらとも満点です。
内容は大勢に飲み込まれる小さなコミュニティの無力さを散々味合わされる物語で、一方的に搾取されるということの理不尽さが読んでいてつらかったです。
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飯嶋氏の著作全て読んだが今までの最高傑作だ。有名でない史実を取り上げ緻密に書きあげる力量には感嘆を覚える。淡々とした文章ながら熱きものを感じてしまう。
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私は読後に唸ってました。なんなのだ!あの見事に突き放されたような終わり方は!坂口安吾は、物語が人を突き放すことについて書いているが、まさにこの本はそれにふさわしい。暗い。とことん暗い。そしてすさまじい重量。こんなの二度と読みたくない!でもこれもひとつの読書との出会いであり、あり方なんだろうねぇ。
正直、かなり良い体験させてもらいました。
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冒頭の強烈な血生臭さに圧倒され、手が震えた。
衝撃的な作品は「歴史小説」に非ず、「記録」であろう。
言葉が不慣れなのもあるが、これほど一語ずつ噛み締めて読んだ作品はない。
ああ、本読みでよかった。
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網野善彦さんの本を読んでたら、この小説のことに触れていた。
冒頭から、山のなかの特殊な地帯、網野さんの言葉でいうところの「アジール」が出てくるからだ。
定住性の平地人たちによる土地支配、民衆支配の論理の外にあった中世の村が国家統一の流れのなかで、葬り去られる物語。
これと同じ哀しい物語が、実際にはどれだけあったのだろう。
たぶん、日本中で起きたことだったのだろう。
支配者側の書き残す歴史から抹殺された、数々の悲劇を思い、なんともいえない重みを感じる小説。
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戦国が終わってまもなく起きた小生瀬の一種のクーデターを描く。村民と土俗的な宗教、そしてそれを抑える権力の構図の中で物語りは悲惨なラストを目指して一気に展開する。面白い小説ではあったが、重くて暗い。
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キャラクターがあまり前面に出て無くて、淡々とした感じだけど、すんごく面白い。
史実に基づいてる点も興味深かった。
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誇りを守るために死ぬべきか
苦しい暮らしとなっても生き残るべきか。
戦を経験したことがある者とない者とでは
命に対する捉え方が全く異なっている。
これは現代でも言えること。
最初は辰吉の愚かさに全く気がつかなかった。
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恩田陸先生が絶賛しておられたのだけど、結末のすごさが今一つよくわからなかった。
またじっくり読み返したい。
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途中まで何が起きるのかワクワクしながら読んでただけに、どーしても「あぁん?」っていう疑問はぬぐえない…。
役職とかその辺の設定を頭に叩き込んでもっかい読み直したらば、印象も変わるかもしんない。
とかって言うけれど、黄金旅風よりは読みやすかった。
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戦国末期、ヒエラルキー下部に位置づけられてしまった農民たちの、その溢れる生命力ゆえの戦いと弾圧の軌跡を描いた力作。倒叙的に結末が見えているせいか、ただただ読み進むのがつらい(決して読みにくい文章だという意味ではありません。念のため)。口伝も記録もほとんどない日本の片隅の小さな史実から、よくここまでの物語をつむげるものだと驚嘆します。