紙の本
僕は世界を生きる。サヴァイヴと愛の物語。
2009/02/22 02:36
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ねねここねねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
古川が送る、村上春樹作品『中国行きのスロウ・ボート』のトリビュート。
ハードカヴァ『中国行きのスロウ・ボートRMX』(2003.7発刊)改題。
若き日の自己。僕の場合のそれは、囲いを出られぬ無力な存在だった。
されど若さはエネルギで、そうして向かう力であった。
失敗を続けた僕の『出トウキョウ記』。そしてそのものとリンクする、東京を出られぬ僕が出逢った3人の女の子について。
その思い出が綴られる。等身大のままで語られるクロニクル。
生きて笑って失った、記録がページに刻まれる。
僕の歩んだ記録。躍動感と、そしてかなしみ。
かなしみは無力感と、世界への敵意、挑戦に充ちるのだが、とにかく僕は向かっていく。自分の足で歩き続ける。
僕は向かう。
そのものを、世界を打破しようと、向かう向かう。
壁を壊し、外に出ようと息をする。
精一杯息して、向かう。
向かう向かう向かう。結果に世界に踏み躙られても、やられっぱなしじゃいられない。内側のこころの弾力を失わない。
時に冗談を言いながらも、軽口の中で向かっていく。
凛としたその、核たるもの。それは抱えた確かな、前向きな希望。強さである。
僕が歩いたこと。それとともに、女の子たちが生きていたこと。
切り離せぬ両輪の絆。
笑顔とかなしみの光と影をうつしだしたもの。
「感謝します。」
そして、
「胸を張って――誇りを持ちなさい」
作品はトリビュート以上のものとして胸に迫る。
力を――勇気を与えられる。誇りを抱えて、進むのだ。
くどいがもう一度言おう。
それは前向きな、希望のひとかけ。
失わぬそのもの。それは個人の輝きであるのだ。
「その瞬間、僕は壁を――鏡をぬけている。
真実の<夢>にむかって。
そして僕は目覚めない。」
僕は夢をみている。
例え何があろうと、それに覚めずに歩き続ける。
ターニング・ポイントにあった、思い出を見つめる僕のやさしさ。
そして向かっていく僕の強さ。
この世界を生きる人々へ。
これは古川が届ける、サヴァイヴと愛の物語。
胸にあたたかな灯火が生まれる。
勇気と誇りをもらって、明日を歩いていける気になる。
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巧くて面白くてニヒヒと笑える爽やかさがここにはある。くすっとではなく、ニヒヒと笑える事が、村上春樹との違いだ。
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脱・東京の記録、らしい。が、主人公は東京脱出に失敗し続けます。常に致命的な何かのせいで。これを呼んで、ようやく春樹チルドレン、とこの作者が呼ばれてる理由がわかった。良い意味で後継者になれるだろう。春樹が80年代春樹なら、古川は00年代春樹、という感じかな。
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竹橋の流水書房で購入。
「ベルカ、吠えないのか?」や「アラビアの夜の種族」が読みたいなあと思いつつ、この文庫を見つけたので何気なく買って読んだのだが、村上春樹「中国行きのスロウ・ボート」をリミックスしたものだという。何かにつけ村上春樹に戻ってしまうの今日この頃。まあまあ面白かったんだけどそれは古川日出男の能力がどれほどのパーセンテージなのか「中国行き」も読まなくては「二〇〇二年」のことが書けないや。ですた。
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元の作品を読んでみたい。
どうやっても振りほどくことの出来ないもの。自分の目の前にあるものともっと真剣に向き合わなくてはいけないと感じた。
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分かるようで分からないこと。なぜ、本作の主人公は「トウキョウから脱出したい」と思うのだろうか。もちろん、過去3度の「脱出」劇は本文中で詳細に描写されていて、その理由も何となく分かる。でも彼は、3度失敗しようとも、そして今後も恐らくは「脱出」が不可能であることを予期しながらも、なお「脱出」することにこだわる。なぜだろう、面白い。そんな与太話はさておき、私はこの作品に関して恐らくは正当な評価を下すことが出来ない。なぜならば、私はRMXの元ネタとなったムラカミハルキのそれを読んでいないからである。だから、最終的に彼が脱出できたのかどうかは不明である。が、たぶんやっぱり脱出はできないんだと思う。その開き直りがなかったら、この作品の魅力も半減してたかもしれないしね、と妙に分かったような口を利いてみるものの、やっぱり分かっているようで分かっていないのは、私の書評も同じである。苦笑
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少しボーっとして文章を読んでると、わけわかんなくなる。一文一文、きちんと神経集中させなきゃ!って感じ。この、わけのわかんなさが好き。村上春樹の、元の作品を読んでないので…読まなきゃ!
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かつて村上春樹さんの本しか読めないという偏った読書時期を経験したものには、とても楽しく読ませていただくことが出来ました。春樹さんの『1973年のピンボール』は大江氏の『万延元年のフットボール』のもじりに見えますし、だとするとこの『二〇〇二年のスロウボート』はとてもらしいというか春樹さんリミックスに相応しいタイトルに思えました。随所に『中国行きのスロウボート』以外の春樹さんの小説からのサンプリング(?)めいた箇所が散見して思わず頬がゆるみました。二〇〇五年に発表された春樹さんの「日々移動する腎臓の形をした石」(『東京奇譚集』)に出てくる「三人の女」というテーマ(というかモチーフというのかわかりませんが)は本書への「魂のルーツ」からのそれとない反応だったら楽しいなあと思いました。
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村上春樹小説のカヴァー作品。相変わらず行の中で列を組みながら躍動する言葉たち、文庫本はページ数も少ないからすぐに読み終わるけどしばらくは余韻に浸れる、そんな感じ。
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村上春樹の「中国行きのスロウ・ボート」のカバー(リミックス)作品であるというのは有名な話。わたしは元ネタ(春樹作品)を読んだことがないけれど、敢えて先にこちらを読ませていただいた。逆に、元ネタはどんな話なんだ?どんなことを考えて彼はこうリミックスしたのか?と期待が膨らみました。主人公は東京を脱出しようとして三たび挫折し、苦悩するけれど、最後に自分の中に救いと突破口を見つけるんだよね。やっぱり、進む力ってのは自分の中にあるんだと思う。自分の中をもっと探さなきゃ。
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僕の人生における、出トウキョウの3度に渡る失敗と愛する女性の喪失の記録。
古川日出夫は村上春樹の「スロウボート」が好きらしい。
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ふむ。
なんともいえない気持ち。
不思議なオハナシだ。
でもなんか、じわじわくる気がする。
リミックスという発想が面白い。
ハルキ版を読んだら、きっともっと面白い。
ハルキらしさと古川日出男らしさとが共存しているように感じた。
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中国行きのスロウボートを読んだ。
すごい。
これを元にこんな話書いちゃうなんて。
大胆にぐわっと膨らませて、そして自由に。
キーワードが出てくる度に、ニヤリ。
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村上春樹で一番好きなのは「中国行きのスロウボート」の中の「土の中の彼女の犬」である私としては、「中国行きのスロウボート」のリミックスだと聞いて、読まずにはおれまいと買いました。
でも、当たり前だけどそのものは出てきません。が、読み終わったら「確かにリミックス。でもってリスペクトだな」と思った。
内容を簡単にいってしまえば、主人公の「出トウキョー」の物語り。で、単にセンチメンタルな追想かと思えば、しっかりしかけもあって、面白かった。
うーん、こうなるとリスペクトがかえって邪魔じゃないのかな?
が、実際単行本から文庫化になるときに、わざわざタイトル変えてるんだよね。うーん、このタイトルの方が売れるから? それともどーしてもリスペクトを宣言したかったから??
微妙。
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古川日出男の文章速度について行くのは久しぶりだと大変。かみ合わないとスベってるだけになるから。読んでるこっちがスベってるのか書いてるあっちがスベってるのかわかんないけど。でも噛み合った日にはこれ以上ないくらいに最高で最強。「聖家族」へのはずみがついたようなつかなかったような。あれは長編だから、読み始めるのに勇気がいる。(10/2/21)
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村上春樹「中国行きのスロウ・ボート」のRMX!
しかしRMXされる前の作品を読まずに
最初にこちらを読んでしまいました。
でも、この作品が面白くて
だからこそ「ベルカ、吠えないのか?」に着手することが出来た1冊でもあります。
原作を知らないので
比較しての感想は言えないのだけど
主人公が3度の別れを経験しながら
自分の中にある「スロウ・ボート(貨物船)」に乗って
自己発見をしていく、みたいな内容。
簡単に書いてしまうとこうなのだけど
文章力や構成力が本当に面白くて
ぐいぐいと引き込まれてしまう。
内容も分かりやすいし
とっつきやすい一冊かと。