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紙の本
まだまだ英国の警察小説群の面白さには及びませんし、横山秀夫の緊張感もありません。でも、読ませます。その理由は主人公が女刑事であることかもしれません。何はともあれ、このまま育ってくれたら、と思わせる作家の一人です。
2010/05/13 20:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は妙なこだわりから、この本の一年後に出た『ソウルケイジ』から先に読みましたが、今回はシリーズ作品を一年遡って読むことになります。勿論、『ソウル』を読んだ結果を受けての選択です。以前も書きましたが、BS11のブック情報番組ベストセラーBOOK TV で斎藤広達が『ソウル』と並んで絶賛していた第一作『ストロベリーナイト』ですから、期待は大きかった。
ちなみに、泉沢光雄の装幀、今回の写真提供は MASAKI TOYOURA/A.collection/amana 、版面設計は宗利淳一です。上2/3程度を写真、下を白地で空けて、帯がきてもいいようにしておく、これは早川書房のディック・フランシスの本などで辰巳四郎が多用したデザインで、斬新ではありませんが写真さえよければ安定した効果を与えます。今回はなんだか青春映画のポスターを見るような爽やかさで、個人的には『ソウル』よりいいのではないかと思います。
全体は五章構成なのですが、その様子が面白いので詳述しておきましょう。まず第一章と本文が書かれた頁があって、その前に、多分その章のタイトルであろう
目をえぐられた女 切り裂かれるその喉元 噴き出す鮮血
―――あなたは これを 生で 見たい ですか
という文字が書かれた頁があります。普通であれば、その扉の後に第一章とありますから、このタイトルのもとに二章も三章もあると思うのですが、これが違って、(一)~(六)となり、また
赤黒く 焼け爛れた肌 その喉元を切り裂く 天染める 血飛沫
―――あなたは これを 生で 見たい ですか
という頁があって、第二章となります。そして本文が始り、(一)~(七)というように分かれます。そして
顔の皮を剥がれ 泣き叫ぶその者の
喉元を切り裂く 舞い上がる血煙
―――あなたは これを 生で 見たい ですか
という頁があって、第三章となります。そして(一)~(八)。そして今度は、タイトルらしい頁なしの第四章が始ります。これは(一)~(四)で、同じように終章となります。三章まできてスタイルが決まったかと思ったら、それを破棄してシンプルに四章、そして終章ですよ。いや、考えますよ。これは誰のアイデアなんだろうって。著者? 編集者? それとも装丁者? もしかして版面設計者の提案? なんて。
で、お話です。私が手にしたのは文庫版ではなく単行本のほうなので、まずは出版社のHPからそちらの案内文。
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青いシートにくるまれ、放置されていた物体。それは、執拗に切り刻まれた惨殺死体だった。警視庁捜査一課の主任警部補・姫川玲子は、直感と行動力を武器に事件の真相に迫ろうとする。しかし、事件の全貌は、想像を超えて凄絶なものだった・・・。
熱気と緊張感を孕んだ描写と、魅力的なキャラクター。
新鋭、渾身の長編エンターテインメント!
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ついでに、文庫化が始まったのでその案内文も引用しておきましょう。
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溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された! 警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉「ストロベリーナイト」が意味するものは? クセ者揃いの刑事たちとともに悪戦苦闘の末、辿り着いたのは、あまりにも衝撃的な事実だった。人気シリーズ、待望の文庫化始動!
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どうしても比較したくなる相手は同じくシリーズ化した警察小説で、同時期に出ているものとなれば堂場瞬一『警視庁失踪課・高城賢吾』となるわけですが、この2シリーズには大きな違いが二つあります。一つは主人公の性別です。もう一つが所属する組織。『ストロベリー』の姫川は29歳の女性で、警視庁刑事部捜査一課所属。それに対し『邂逅』などの高城は43歳の男性で、所属するのは警視庁失踪課という掃き溜めのような組織です。
姫川は周囲の嫉視を撥ね退け、高城は蔑視に耐えながらの捜査ですから、抱える敵の質も異なります。ただし、共通点があります。ともに心に傷を負っているところがそれです。姫川はレイプされたことがありますし、高城は捜査で家庭を顧みない間に娘が失踪し、いまだに行方が知れません。姫川は事件を梃子に警察官への道を選び、高城は酒の世界に逃げました。姫川には、その事件をネタに彼女を苛める男たちがいて、高城には彼の過去を気遣う人間がいる。
二シリーズだけでこうですから、これに英国の警察小説を加えればもっと面白い比較が出来そうです。それについては今後、機会をみて考えていこうと思いますが、王道を歩いているのは誉田かな、でも彼我の差はまだまだ大きいな、とは言えそうです。その最大の違いは主人公たちが寄せる担当地域によせる思いの深さであり、それに伴う情景描写ではないか、と今は思っています。
ミステリ部分は当然ですが、紹介文にもあるように多彩な登場人物が小説を面白くしていることは事実なので、内容紹介はグループ別にした人物紹介で兼ねさせてもらうことにします。羅列になってしまいましたが、誰がどのような働きをするのか、不足の情報は小説のほうをあたってみてください。報われること確実です。唯一、マイナスは途中で犯人の見当がついてしまうことくらいでしょうか。
(警視庁刑事部捜査一課殺人犯捜査第十係姫川班)
姫川玲子:27歳で警部補に昇進し、その後まもなく警視庁本庁に取り立てられ、捜査一課殺人犯捜査係主任を拝命。現在29歳。捜査における勘を大切にする。そのため、捜査スタイルが対照的な日下を毛嫌いする。17歳の高校二年生のとき、帰宅途上にレイプされそれが今でもトラウマとなっている。また、その事件がきっかけで警察官への道を歩み始めたともいえる。
菊田和男:巡査部長32歳。玲子の年上の部下で、姫川のことを好きなのにそれを当人に告げることができない優男。一応、玲子に好かれているような気配があるところが救いか。
石倉保:巡査部長。47歳。就職先がみつからない大学生の娘と不登校気味の中学生の息子の父。
湯田康平:巡査。26歳。
大塚真二:巡査、27歳。高卒で入庁、手柄をあげた経験が殆どなく、支援活動をすることが多い。
(警視庁刑事部捜査一課殺人犯第五係)
勝俣健作:通称『ガンテツ』、警視庁刑事部捜査一課殺人犯第五係主任。離婚している警部補。公安に八年いたことが性格を変えた、とも言われる。
(視庁刑事部捜査一課殺人犯捜査第十係日下班)
日下:警視庁刑事部捜査一課殺人犯捜査第十係の40過ぎの警部補。主任。妻帯者で、中学生の息子がいる。その捜査法はまさに緻密、精密。あらゆるものを調べつくし、予断で動くことはない。
(その他警察関係)
井岡博満:蒲田署の巡査部長。東京生まれながら関西弁で姫川に言い寄っては、肘鉄を喰っているセクハラ刑事。年齢は玲子より一つか二つ上らしいが、文章的には40代後半のほうがピッタリする。