紙の本
地味なようでいて、とても鮮やか。起承転結の「転」、「転」から「結」への部分の不思議な迫力が作品の魅力です。
2012/02/25 20:02
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きし - この投稿者のレビュー一覧を見る
収録作は9篇。
『恋占い』、『浮橋』、『家に伝わる家具』、『なぐさめ』、『イラクサ』、『ポスト・アンド・ビーム』、『記憶に残っていること』、『クィーニー』、『クマが山を越えてきた 』。
最初に読むことになる『恋占い』はいったいこの女性は?と疑問符から入りますが、その他の作品では、友人の家を訪ねる、離れていた異母姉妹の家を行く、葬儀に出席するために出かけるなど、ごく日常的な状況から始まります。
登場する中にも飛びぬけて奇異な人はいません。
退屈に似ている平穏の中にいて、奔放さには無縁。
不幸ではないけれど、意識する、しないに関わらず、彼女達にはどこかしら閉塞感が漂います。
けれども自由を完全に諦めたわけではない彼女達は、生活に差し込まれる出来事がつくる小さな波のひとつひとつを身を浸すようにして味わっていきます。
一緒にいる人の沈黙の意味。
唐突な情事。
どのような形であれ、人を決定的につなぎ合わせる出来事。
目に映る星や緑、肌で感じる風や空気の密度。
波乱万丈という言葉からは遠いところにある作品ですが、地味なようでいて、とても鮮やかな印象を残します。
たふたふと揺れている水の表面が一瞬真っ白に光って、まるで別のもののように見える。そして、その後すぐにまた元に戻っていくからこそ、それが目に残るというような。
そういう起承転結の「転」、「転」から「結」への部分の不思議な迫力が作品の魅力です。
読み応えがありました。
紙の本
イラクサ
2022/06/24 10:16
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
収録されている作品の多くは女性が主人公で、主人公や家族・友人の夫が登場するのだが、その夫がほとんどモラハラ夫であり、しかも現実にいそうな夫である。自分の論理で妻を解釈し、それを退けようと自分で論理的に説明しようとすると、激高する。そこに真っ向から対峙するわけではない、というところが面白い。復讐してスカッとして終わり、というのなら初めから誰も苦しまないだろう。
そんな作品の中で異色なのが、「クマが山をこえてやってきた」である。かつて教え子と関係を持った大学教授が、妻が認知症になって施設で別の男と親しくなるのを見て苦しむ。面白い作品だった。
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新潮クレストブックは、紙の質の割りに?高いけど分厚いし、読み応えがあります。
これは「100年後にも読まれている可能性が最も高い」という評につられて買いました。確かに名人の小説で、クラシックな本好きにお薦めです。
淡々とできごとを綴っていくタイプで、好みじゃないのに一気に読んでしまう魅力があります。
ただ、回想の場面で時系列や人称がよくわからない文がけっこう多かったです。文章の流れはこわしていないので、すっと読みましたが、こっそりごまかされた気がします。多分、訳者の力不足じゃないかなと思う。
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9編からなる短編小説集。いづれもほろ苦さとコクのある深い味わいが楽しめる、大人の悲喜こもごもが凝縮されたような作品が並ぶ。
著者はカナダ出身で本国はもとより英語圏では『短編の名手』と呼ばれる高名な作家だが邦訳されたのはこれで2編目だそう。
もっと紹介されるべき作家です。
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主に男女の不可思議さや人生の機微を描いた短編集で、興味を引く取っつきやすい入り口ですが、にしてはずっしりとした読み応え。タイム誌で世界に影響を与える100人に選ばれたとか。初めて読んだ作家ですが〜さすが、年輪を感じる複雑な味わい。
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Hateship,Friendship,Courtship,Loveship,Marriage
by Alice Munro
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[ 内容 ]
旅仕事の父に伴われてやってきた少年と、ある町の少女との特別な絆。
30年後に再会した二人が背負う、人生の苦さと思い出の甘やかさ(「イラクサ」)。
孤独な未婚の家政婦が少女たちの偽のラブレターにひっかかるが、それが思わぬ顛末となる「恋占い」。
そのほか、足かせとなる出自と縁を切ろうともがく少女、たった一度の息をのむような不倫の体験を宝のように抱えて生きる女性など、さまざまな人生を、長い年月を見通す卓抜したまなざしで捉えた九つの物語。
長篇小説のようなずっしりした読後感を残す大人のための短篇集。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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初めて読んだアリス・マンローの本。
知らない場所の普通の人の生活が題材の本が好きだから、面白かった。普遍的。時代もひとむかし前の話が多いから、時間の流れがゆったりしてていい。心洗われる気分。
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正直淡々とした文章が読みづらく…疲れました。空気は嫌いじゃないのですが捕らえにくい。そういう瞬間を表現した感じです。
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半分だけ。短編がいくつも入っている。生と死、人間のどろどろしたところ。抽象的に表現されている。すこし苦手…
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翻訳小説というのはやはりなんだか難しい。以前にも読みかけて難しいなあと感じたんだけど、今回もその良さとかがあまり良くわからなかった。最後の熊が山から下りてきたでようやくなんとなくその切ない感じがわかったかなあというだけ。私には合わなかったかなア。
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「クマが山を越えてきた」が、サラ・ポーリー脚色・監督、ジュリー・クリスティ出演の「アウェイ・フロム・ハー」の原作なので読みました。味わい深い短編集ですが、まるでフランス映画のように突然ぶちっ、と終わります。そこがまたいいのかしらん。映画が楽しみです。人生って辛いけれど、生きていくしかないですもんね。
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旋律の動きの激しくない淡々とした(でも美しい)音楽を聴いているかのような短編集。
胸をくっと掴まれます。
映画『Away from Her』の原作が入っています。
新作『Too Much Happiness』1編目最高です。
次が待てません。
【熊本県立大学】ペンネーム:ヤカベ
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本棚があふれているので、さっさと読み切って売ろうと思ったんだけど、そういうわけにもいかない短編集。さすがの大御所。日常の一瞬を人生の視点から切り取る鮮やかさ。読み始めはたいくつだけど、最後は感動してる。というよりも、普段がたいくつだから、一瞬のきらめきが貴重なのかもしれない。
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短編集。
孤独や悲哀を容赦なく突きつけられる感じがして、読んでいて重たくなることも。
でも、ときおり微風のように、愛情やユーモアが現れて、ほろりとさせられた。
心に残ったのは、「恋占い」「記憶に残っていること」「クマが山を越えてき」。