紙の本
古今の名著や、幅広い歴史に学ぶ
2009/06/12 20:39
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mikimaru - この投稿者のレビュー一覧を見る
アンソロジーや雑誌などで読んだいくつかのエッセイは別として、まとまった一冊の本として氏の作品に触れたのは、初めてかもしれない。
食通として知られた氏である。膨大な著書のなかでもさてどれにしようかと迷ったが、この本を手にとって正解だった。冒頭の「どん底での食欲」三章では戦地や牢獄など極限の状況における食を描き、連載の最後には人肉嗜食について書くと宣言、つづく「女帝を食うか、女帝に食われるか」では江青やマリー・アントワネットなどの逸話を紹介する。
中盤以降は、日本の作家たちの食欲や芭蕉の食べたもの、有名料理人の辻静雄氏が自宅で主催した食の饗宴(午前から深夜まで料理を食べまくる)についてなど、いわゆる食の本らしい話題がつづき、最後は予定通りにアンデス山中で1970年代に起こった極限状態における人肉食の話でしめくくる。
この一冊で、かなり学ぶべきことが多い。自力ではなかなか気づくことがむずかしい、新しい視野が開けた気がする。
食の本は、グルメガイドやレシピ本ばかりではない。文化や歴史のみならず、人間の生命維持や生きるということと切り離せない、本来とても重いテーマと密接に結びついているはずだが、うわべだけの「美食」や流行の移り変わりばかりが耳目を引く。著者のように、ユーモアをまじえながらも深い場所から掘り起こすように食を書いていた人は、現在までの出版界を見ても、あまり多くは存在しない。
P.28以降のナイジェリアの内戦や、P.33末尾からはじまるアウシュヴィッツの記述が、頭から離れない。そろそろ人生の半分くらいは生きてきたかと思うが、自分はものを知らなすぎると実感した。
読みながら同時進行で、文中に紹介や引用がなされている本を調べて何冊か購入した。そのうちの一冊がすでに書評を書いた「ロッパの非食記」であるし、読了していないが「随園食単」もまた、まるで知らない世界だ。
これからもときどき読み返したいと思える本。
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食べ物について書かれた本が読みたくて借りた一冊。開高健の最低から最高まで味わった舌が紡ぐ食べ物の話は、食欲は沸かないけれど含蓄があっておもしろいです。もつ焼きの話を読んで実父の食べ物のルーツが少し分かったような気がした。
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「食」は僕の人生において最も大事なもの。開高氏の豊富な語彙による、食の表現と考察。まだ見ぬ食べ物に対し、人生でありつけるか分からない食べ物に対し、わき出す涎を何度も飲み込みながらこの本を読んだ。美味しいものを求め続けよう。世界を旅している内は貪欲にその国のものを喰らおう。
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開高健の饒舌ぶりには、常に圧倒されるけれども、食のことを書いたこの本では、饒舌ぶりに磨きがかかっていて、読むのがなかなか大変だ。
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圧倒的な文章力で「食」を語りつくすエッセイ。
フランス料理の特別コースから人肉まで、食べることに対する考え方の枠をぐっと広げてくれて、とても刺激的でした。
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あー面白かった。
図書館で借りて読んだけど、一冊持ってて読み返しても良いかも。
初めてでしたが、開高健さん。相当好きです。
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開口さんの作品には達観がある。
ぐだぐだな生活をしていてもこれでいいんだと言う感じ。
小説家なんだけどジャーナリストなんだな。
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食をテーマに連載されたエッセイ。グルメ紀行文かと思いきや、切り口からいきなり人肉食の話だったり、古代中国の文化だったりで、鼻面を殴られたような気分で読み始める。最初の序文や一話がやや堅苦しい話題から始まり、中盤は実際に企画として美食を求めてのグルメリポート。フレンチ、羊肉料理、魚、中華版精進料理、モツ……。食欲がそそられることはなはだしい。
ちょうど「オーパ!」のときの南米旅行前後に連載されていたようで、作者さんが仕事や家庭の頚木に疲れてまた旅に出たくてソワソワしているというか、連載を投げ出したくなっているというような言葉が頻繁に出てきて、微笑ましく思うべきか、やる気のなさにあきれるべきか。まあ、ファンにはそういうところも愛嬌と感じられるわけだけど。
最後にまた重い話に戻って人肉食のこと、かつての痛ましい墜落事故による遭難の結果、極限状態で人肉食に追い込まれた人々の話題、それから中国でかつて散見された人肉食の文化。食べるということの業の深さについて。
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言わずと知れた名作。
古今東西の食に関するヒトの尽きる事のない欲望を書いた食の大全。最底辺の食事から王様の食事、はては人肉嗜好まで。「食」の愉悦、深淵、その極北をあますところなく描きつくす(amazon)。
毎回毎回、視点の付け所がすごい。ただもっと東海林さだおや團イクマさんのエッセイ的なものを、圧倒的な文章力で書いたもの、という勝手な先入観をもって読んだのでそういう意味では肩透かし喰らってしまった。でも面白い。
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いくら開高健とは言え、食がテーマとあればお気軽なエッセイ的な感じで読めるのか…と思って読み始めてみたらそんな甘い考えは通用せず。
冒頭の重さったら。。いくら「食」が引っ掛かってるとは言え、一切食欲を湧き立たせないようなテーマ設定。お気軽エッセイを期待した層を裏切ってやろうという遊び心なんでしょうか。「食」のあられもなさ、エゲツなさが語られ、ページ進みも重かったです。義務感で書いているような印象も。
中盤の「芭蕉の食欲」あたりからは様相が変わって、今度は素直な方の遊び心が出てきて、こちらは読んでいる方も食欲を刺激される文章。最後にカニバリズムの話になるけれど、冒頭よりは遥かに読みやすい印象でした。
しかし、読み終わって印象に残っているのは、冒頭の重々しいくだりから「食」って何なんだろう?と考えさせられたこと。悩ましいものです。
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そういえば、物を食べることにより、私たちは牛や豚や魚や鳥や野菜を殺しているのだった
お皿に並んでいるときはすでに形もなければ、鳴きもしないから忘れていた
私たちは毎日人殺しをして、人の子供を奪い、その子供を食らっているのと同じである
でもそうやって、世界は回っていく
それが悪くも良くもなく、ただ緩慢で残酷な地球の公転か、 いつか我々が卵の側になるとしても
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いろいろな「食べる」について書かれています。
食べられないとき。
食べざるを得ないとき。
楽しんで食べるとき。
飽食のその先…。
今、私は「楽しんで食べ」ることができています。幸せなことです。さて、この先は?
私の最後の晩餐はどんなふうになるのでしょう?