紙の本
恋愛心理
2018/09/30 22:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
この巻の冒頭で新興のブルジョワであるヴェルデュラン夫人のことがかなり滑稽に登場するようにこの『スワンの恋』は特に読みやすい。同じ人間の複数性の執拗な繰り返し、ヴァントゥイユの音楽のモチーフ(そのソナタが「恋の国家」と言われる)、絵画とのアナロジーでオデットに惹かれ、空想に恋焦がれながらもやがて幻滅していく過程の克明で怜悧な描写、とプルーストの特徴が表れる。その章でスワンは自分の趣味の女じゃなかったと悔いて終わるのだが、次の章に行くとなんとスワンとオデットは結婚していてその変貌に驚く。しかしその愛憎劇は、少年である主人公とジルベルトによってまだ繰り返す。
投稿元:
レビューを見る
ほぼ三人称小説(ごくたまに私が顔を出す)の「スワンの恋」が中心。「土地の名・名」は少年時代の私の回想(第一巻と繋がる。ジルベルトとの話が主)。「スワンの恋」は、約400ページ、スワンさんとオデット嬢の恋の成り行きと、彼らの一挙一動を微に入り細をうがって、描写・分析し、相当程度の普遍性を感じさせるのは本当にたいしたものだと思った。日々こんなふうに観察したり考えたりして過ごしていたプルースト氏は頭の中は大忙しだったのだろう。問題は、// オデットは、はじめて片眼鏡をかけたスワンを見たときに、とび上がって喜んだ。「男の人の場合、これ、文句なくシックよ! こうやってると、あなた、とても素敵だわ! ほんとのジェントルマンみたい。ないのは肩書きだけね!」と彼女は、いくぶん残念そうにつけ加えた。彼はこんなオデットが好きだった。// という、極めてどっちもどっちな感じのスワンさんとオデット嬢に対して個人的に共感も反感も持てず、あまり物語に乗れなかったこと…。//そしてスワンは、悲しみが消え、それと同時に自分の道徳水準が低下するやいなや、たちまち間歇的にあらわれるいつもの下卑た口調で、内心にこう叫んだ。「まったく俺ときては、大切な人生の数年を無駄にしちまった、死のうとさえ思い、あんな女を相手に一番大きな恋愛をしてしまった。俺の気に入らない女、俺の趣味(ジャンル)でない女だというのに!」//という色ボケが覚醒したラストには無性に気が抜けた。でも多分娘のジルベルトの登場には必要な前置きだったのだろう。第三巻に期待。
投稿元:
レビューを見る
凡例
はじめに
第1部 スワンの恋
第2部 土地の名・名
訳注
主な情景の索引
本巻の主な登場人物
エッセイ それぞれのプルースト 工藤庸子
(目次より)
投稿元:
レビューを見る
まだ作品全体の構成はわからないのだが、何故ここで「スワンの恋」が語られるのだろうか。物語内の時間は、「私」が生まれる頃であるだけに「私」と直接「時」を共有しているわけでもない。しかも、オデットとの破綻に至るスワンの恋の顛末が、物語全体の中で果たす有機的意味も不明だ。もっとも、これは第3部で半ばは解決されるのだが。ただ、スワンとオデット、そして「私」とジルベルトといった対構造は理解できたとしても、第2部から第3部にかけての空白は今は語られていない。なお、第3部のエンディングはことのほか美しく散文詩のようだ。
投稿元:
レビューを見る
スワンの恋についてがメイン。
最初はオデットがスワンに夢中になっていたのに、だんだん逆になり、スワンが恋に恋してイライラして苦しめられることに。
その様子がずっと続く…そして冷める。
でも、後に結婚することになる。
どんな経緯でそうなるんだろう、まだわからない。
p.156-157
画家が「うんこでできている」と発したくだりは、笑ってしまった。
その時の様子が面白い。