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失われた時を求めて 完訳版 2 第一篇 スワン家の方へ 2 みんなのレビュー
- マルセル・プルースト (著), 鈴木 道彦 (訳)
- 税込価格:1,034円(9pt)
- 出版社:集英社
- 発売日:2006/03/01
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文庫
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紙の本
恋愛心理
2018/09/30 22:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
この巻の冒頭で新興のブルジョワであるヴェルデュラン夫人のことがかなり滑稽に登場するようにこの『スワンの恋』は特に読みやすい。同じ人間の複数性の執拗な繰り返し、ヴァントゥイユの音楽のモチーフ(そのソナタが「恋の国家」と言われる)、絵画とのアナロジーでオデットに惹かれ、空想に恋焦がれながらもやがて幻滅していく過程の克明で怜悧な描写、とプルーストの特徴が表れる。その章でスワンは自分の趣味の女じゃなかったと悔いて終わるのだが、次の章に行くとなんとスワンとオデットは結婚していてその変貌に驚く。しかしその愛憎劇は、少年である主人公とジルベルトによってまだ繰り返す。
紙の本
スワンとオデットの恋愛
2010/07/05 22:41
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
「第一篇 スワン家の方へ」を収録した二巻。ちくま文庫版に比べて付録が多量なので、分冊になっている巻があり、全体の巻数が増えている。第一篇はちくまでは一冊だった。
以前書いた感想はこちら。
上流階級の醜悪な姿
ここに収録された第二部「スワンの恋」では語り手の生まれる前に遡り、第一部でも登場していたシャルル・スワンとオデット・ド・クレシーの恋の物語がほとんどをしめている。この部分は上流階級の見栄の張り合いを描いた部分(生々しい喜劇として読める)や恋愛物語としての展開があり、一巻よりはよほど読みやすい。なんなら、この部分だけ先に読んで、面白ければそこから一巻に戻って全体を読み通してみる、というのもアリなんではないかと思う。
プルーストの思索的で密度の高い描写とによる長々しい文体に慣れられるかどうかを、試してみるにはちょうど良いかも知れない。
ハードカバー版に書いた文章を転載。
「そのスワンの恋を取り巻く重要な舞台背景が、ヴェルデュランというブルジョワの家で毎夜開かれる「小さな徒党」の集まりである。ヴェルデュラン家というのは、貴族階級ではないためにその階級に対して激しい嫉妬を抱いており、それらの人びとは退屈でありつまらない連中であると思いこむことで自らの優位を確認し、夜会にあつまる全員に対してその優位性をそろって賛同してもらわなければ気が済まない。本書冒頭に描かれている、ヴェルデュラン家の「小さな核」、「小さなグループ」、「小さな徒党」に加わるための、必要条件にして信仰箇条が意味しているものは、自らのグループのは何ものにも優るというその一事に掛かっている。だから、「ヴェルデュラン夫妻が、うちに来ない連中の夜会なんて雨の日のように退屈だと言ってもいっこうに納得しない「新入り」は、誰でもたちどころに除名された」のである。
スワンは、それまでは様々な女たちに恋をし、多くの夜会を渡り歩いてきたが、オデット・ド・クレシーという女性を見つけてからはただ、彼女だけを愛するようになる。そして、彼女のいるところはすべてスワンの無償の愛の対象になるので、そのヴェルデュラン家の夜会のいやらしいまでの閉鎖的な仲間意識にも、拒否感を示したりはしないのである。ここでかなり細かく書かれているのはそういったスノッブたちの醜悪な振る舞いである」
この上流階級のサロンでの様子は六巻で再度執拗に書き込まれる。
第三部「土地の名・名」では、スワンの娘、ジルベルトと語り手の出会いが描かれる。これはそのまま第三巻への序章になっている。
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