紙の本
タイトルは変えたほうがいいかも
2006/07/17 17:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
作中作のミステリー。
女流作家から「出口のない部屋」という原稿を、編集者は受け取ります。そのなかで、ふたりの女性とひとりの男性が、出口のない部屋に閉じ込められています。
サルトルの「出口なし」を元に作られた、という設定。が、それを知っていると、この「出口のない部屋」がどんな部屋なのかわかってしまうし、知らないとタイトルに裏切られた気分になる。
しかも「出口のない部屋」のストーリー上の必然性が生まれない。三途の川の前でも、閻魔大王の前でも、物語は成立します。
ただ著者の自己満足だけですね。
それでも、この三人の物語が交互に語られ、最後には繋がっていくプロットとストーリーには、惹かれます。
閉じ込められた三人の物語はおもしろい。
免疫学専門の女性研究者・夏木祐子は、ふたりの子どもも優秀で自立していて、鼻が高い。大学での地位もほぼ安泰。ただ、同じ研究室の後輩が人間関係につまづき、医者としても研究者としてもキャリアを投げ捨てかねない。学部長教授の娘である彼女だけが、祐子の気がかり。
新人賞を取って作家デビューした佐島は、その時の選考委員である大御所の女流作家・佐智子と結婚した。20歳の年の差を越えて、ふたりは結ばれていると、ハンサムな佐島がテレビや雑誌で語るのは絵になり、作家よりもそちらの仕事がメインになりつつある。また、自分の新作はことごとく佐智子の添削を受けて、ようやく世間に認められるレベルだ。だがヒットしているとは言い難い。
平凡な開業医の妻におさまった鏡子は、夫の連れ子を医者にし、小さな幸せをつかんだ。しかし半年に一度、自分が16年前に捨てた娘から、お金の無心のはがきが届く。教養のない、幼い内容だ。しかも、本当は捨てたのではなく、あの子が勝手に出て行ったのだ。それを姑に見られるのが情けなく、嫌だった。
ひとつひとつの物語は、それほど新鮮味はないのですが、でも読ませる筆力があります。人間らしい戸惑いや逡巡がちりばめられているのですが、物語がもたついたり、つまらなく感じさせることがない。
無理にミステリーを書く必要はないでしょう。人間描写に優れた作家なので、いろんな分野の小説を読んでみたいですね。
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よくぞまあ少ないページ数で怒濤の解決編を!お見事。派手ではないですが筋は通っていて端正な造りになってると思います。
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密室に閉じ込められた見ず知らずの三人。一体この三人にどのような接点があるのか。
徐々に明らかになっていく接点がイマイチだった。人の心に潜むエゴ、自己弁護がひやりとする作品ではあるが、大きな盛り上がりがあるわけでもなく、ラストも少し強引に感じた。
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おもしろかった。サルトルの「出口なし」を読んでたらもっとおもしろかったのかな。
2008.12.8
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岸田るり子さんの本は、全て持っている。
るり子さんは以前フランスに現在京都で暮らされているそうだ。
どの作品にもフランスと京都のエスプリがふんだんに出てくる。
ひとつの部屋に閉じ込められた二人の女と一人の男の物語。
最後にあ〜なるほどって感じる1冊。
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密室殺人……の話ではなかったのですね。あらすじ読んだらてっきりそうだと。
それぞれの部分がどこでどう繋がってくるか、というのはある程度読めるんじゃないかな。だけど「やっぱりそうだったのか」と思うと同時に、「え、そこも繋がってたの?」という箇所もあって、かなり楽しめたぞ。
作中作などがややこんがらかる部分もあるけれど、そこは敢えて深読みしないほうが騙されるかも。
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+++
私に差し出されたのは「出口のない部屋」という題名の原稿。「読ませていただいてよろしいですか?」彼女はロボットのように無表情のまま頷いた。それは、一つの部屋に閉じ込められた二人の女と一人の男の物語だった。なぜ、見ず知らずの三人は、この部屋に一緒に閉じ込められたのか?免疫学専門の大学講師、開業医の妻、そして売れっ子作家。いったいこの三人の接点はなんなのか?三人とも気がつくと赤い扉の前にいて、その扉に誘われるようにしてこの部屋に入ったのだった。そして閉じ込められた。『密室の鎮魂歌』で第14回鮎川哲也賞受賞の岸田るり子が鮮やかな手法で贈る、受賞第一作。
+++
『出口のない部屋』という同名の小説が差し挟まれ、読者を現実と虚構のすきまに陥れるような物語である。小説の登場人物であるひとりの男とふたりの女の話と、現実と思われる出来事とを行き来しながら、読者は入れ子構造のような不可思議な恐怖の謎を解いていくことになる。出口のない部屋に閉じ込められた三人の共通点はなんなのか、そしてなにより彼らをここに導いた人物とは、またその理由とはなんなのだろうという怖いもの見たさが先にたち、もどかしくなる。だが、真実を知ったとき、そのあまりに自分本位の理由付けに身震いし、視野の狭さに愕然とさせられるのである。
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新人ホラー作家、仁科千里の原稿をとりにきた出版社の香川。
彼女に渡された新作は「出口のない部屋」という題名で、一つの部屋に閉じ込められた二人の女と一人の男の物語だった。
免疫学専門の大学講師、開業医の妻、そして売れっ子作家。
一体この三人の接点とはなんなのか?そして閉じ込めたのは誰なのか?
初めての作家さんですが、これはすごかったです!お見事!
上記のあらすじではなんのことやら説明できていませんが、構成がとても巧い。
閉じ込められた三人がそれぞれの半生を語るのですが、それがどのように絡んでくるのか、絡んでいないのか。
そうするうちに作中作と現実との境もあいまいになって、ただひたすら先が知りたくて一気に読んでしまいました。
そしてあの謎解き!全てがスッキリまとまる爽快感がたまりませんでした。
巧いなぁ。
これが二作目ということなので、一作目も遡って読んでみようと思いました。
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作家から手渡された作品「出口のない部屋」
売れっ子作家と免疫学専門の大学講師、主婦、のまったく面識のない3人が殺風景な部屋に閉じ込められる。
作中作からあぶりだされる3人の共通点とは?
てんでバラバラの3人に思われたけれど
それぞれの話を読んでいくうちに、繋がりが見えてくる。
でもわりと早い段階で「これは」って思っちゃったなぁ^_^;
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密室に閉じ込められた3人を繋ぐミッシングリングは何か。読者はプロローグで登場した人物をヒントに謎に挑戦することになる。作中作の形を取った虚構と登場人物の語る真実が交互に提示される構成。字体にも仕掛けを施したトリッキーな作りは題名通り出口のない部屋のよう。張り巡らされた伏線が導きだすミッシングリングには確かに驚かされた。これを予想の範疇と言う人はもうどんなミステリーでも驚かないんだろうな。
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閉じ込められた三人は、たがいの接点を探るためにそれぞれの仕事、家庭のことを話していくというストーリーですが、この三人、どこかが変だと感じさせます。
時々、それぞれの編を読み返し、納得して先へ進むというふうに読み進めていったので、だいたいの予想はついてきましたが、それでも彼らの関係には驚きでした。
でもそうなると、閉じ込められた彼らはどうなるのか?と考え、最悪の結果を想像していました。
全体的に重たい雰囲気の後味悪~い作品だし、スッキリしたかと言えば、スッキリしない結末です。でもとても読み応えがあって面白かった。
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一見何の接点もない3人の男女が1つの部屋に閉じ込められる物語の原稿を、美人作家から手渡される編集者。
話の構成が面白く、それぞれがどう繋がるのかワクワク感があった。
終盤の勢いにはのめりこんだけど真相の描写が苦手で読後感はイマイチ。