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海洞 アフンルパロの物語 みんなのレビュー

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紙の本

最近の政治家は別にして、1970年頃までの政治家っていうのは、本当に面白かった、つくづくそう思います。人間もそうかもしれません。時代が悪いと政治家が頑張るとでもいうか・・・

2006/12/05 19:20

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

まず造本がいいですね。このソフトカバーのつくりはまるで新潮社ですが、あにはからんや、これが文藝春秋。で、いかにも大江健三郎の本を思わせる装画は佐久間恭子、装丁はその名前の美しさだけで同性もイカセテしまう斎藤深雪。うーん、ご尊顔を拝見したい・・・(お前は、森奈津子か?)
で、三浦清宏『海洞 アフンルパロの物語』でしょ。三浦清宏って、まったく知らないし、それに『アフンルパロの物語』でしょ。中身をパラパラって見ても挿絵もあるし、その絵がなんとも魅力的で、これって絶対に児童小説、間違ってもヤングアダルトものだよな、そうか、いよいよ文春もファンタジーを手がけるのか、なんて思うんですね。
目次見たって
第一部
第二部 栄枯盛衰
第三部 海洞の契り
主要参考文献
あとがき
でしょう、「栄枯盛衰」なんて見ると戦闘もありそうだし、「武林写真館」となると榎本武揚、函館写真館、なんて思い浮かぶし、「海洞の契り」ってくれば若い男女が海辺の洞窟で契っちゃったりして、うーん、これって明治期に北海道を舞台にした男女の愛の物語?なんて妄想するんですね。カバーと目次だけから。
でね、これが全てはずれなんです。空振りもなにも、カスリもしない。本を開くでしょ。
「師であり兄である小島信夫に捧げる」
の文字が飛び込んできます。げ、あの『別れる理由』の小島信夫?彼が兄?ってことは純文学?って思って経歴を見ると、なに、この人芥川賞とってんじゃん。でも、知らないよ、私。
これは昭和38年8月末、23年ぶりに室蘭に戻って来た大浦清隆が、家族の歴史を辿る話です。その23年前と言うのが、祖母まつの死んだときで、清隆10歳とありますから、現在33歳。で、話は、清隆が生まれる前まで遡りますから、視点はいくつかに別れます。第一章のタイトルである武林写真館の武林は、地名ではなく清隆の祖父・武林孝一郎の姓から来ています。
清隆は昭和27年、アメリカに留学します。そのとき24歳、東大を卒業しています。特に何を勉強するため、ということではありませんが、日本で学んでいた英文学を彼の地でやる、というのも違和感があり、結局アメリカの歴史を勉強することになります。そして町の大学で出会ったのが、唯一の友人と言ってもいいジム・ハワードです。
久しぶりに訪れた一族の原点ともいえる室蘭ですが、既に町の風景は変わり、清隆が母に連れられてきた写真館も既に姿を消しています。北海道の一族ともあまり連絡を取っていなかった清隆は、その事実に驚き、従姉弟で写真館を引き継いだはずの武林孝男・克夫の兄弟からその経緯を聞くことになります。
そのとき、孝男が彼に見せてくれたのが今は亡き母が大切にし、戦災で焼けたと思い込んでいた観音像で、それが密かに祀られているのが特別な洞窟です。死者の通路とも言われる洞窟、アイヌ語で『道への入り口』を意味し神聖な場所、アイヌの人たちがイナウ、神道でいう御幣を置く場所、それがアフンルパロ、海洞です。
読みながら大好きな加賀乙彦の諸作や、高村薫『新リア王』といった明治・大正・昭和をみごとに描ききった長篇群を思い出します。この時代がいかに政治の時代であったか、ということが嫌でも伝わって来ますが、それが実に面白いのです。現代日本人にとって、政治というのは糞みたいなものでしかありませんが、それが輝いていた時代があったのです。
無論、政治家の存在感が薄れることで私たちは、平和と安定を得たのですから、彼らがただただ私利私欲と権力ゲームに明け暮れる現状は、むしろ歓迎すべきものなのでしょう。彼らが表舞台に立つときは、いつでも貧困と差別、軍国と皇室、汚職と暴力がセットでついてきますから。でも、僅か50年前までは、政治家が大手を振っていたんです。それが実に刺激的です。

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