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日本の動物行動学の第一人者が新潮社のPR誌『波』に連載したエッセイをまとめ、文庫化したものである。
著者は、1982年に設立された日本動物行動学会の初代会長で、『春の数え方』で日本エッセイスト・クラブ賞(2001年)を受賞しているほか、コンラート・ローレンツによる世界的名著『ソロモンの指環』やリチャード・ドーキンスのベストセラー『利己的な遺伝子』の翻訳を手掛けている。
40篇のエッセイでは、生存戦略などの昆虫の様々な生態、タヌキの子育て、外来生物、花粉症などの自然や動植物に関するテーマから、自らが学長を務めた琵琶湖畔の滋賀県立大学の建設と自然の問題や教育などについて、ユーモアを交えて語られており、読み易い。
書名である「人間はどこまで動物か」と題する一篇では、「人は、「イヌはどこまでネコか?」という問いを発することはない。それは人々が無意識のうちに、イヌとネコはまったく違う動物であることを知っているからである。・・・それなのに人は、なぜ「人間はどこまで動物か?」と問い続けるのだろう?そこには常に一本のスケールの上での到達度を問題にしようとする近代の発想の呪縛があるようにしか思えない」と、近代の人間の(動物学の分野に留まらない)あらゆるものの捉え方に対して強い疑問を呈している。
(2014年1月了)
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タイトルに惹かれて読んだが、動物学の話が大半でこのタイトルの内容について深く掘り下げているというわけではなかった。
ただ、農業が人間の原罪だという発想は大変面白い。確かに農業や牧畜ができてしまったことが人間をここまで発展させる要因になっていたわけだし、それがなければここまで生態系のバランスは崩れていなかっただろう。
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動物昆虫植物を知れば知るほど、人間とのあまりの違いに驚きが増す。しかしそれと同時にどんどん彼らが身近に感じてくる。
人間の色眼鏡を取り去るのは難しいが、この本は眼鏡拭きの役割をしてくれた。小さい頃、庭の中央に咲いたポピーが翌日父親に抜かれていてとても悲しかったことを思い出した。
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「ホタルが光り、蝉が鳴き、蚊柱が立つのはなぜ?―すべて、より効率的に配偶者と出会おうとする、彼らの合理的で賢い戦略なのです。生き物は皆、生き延びて子孫を残すというのが人生の大目標。動物行動学の第一人者が、一見不思議に見える自然界の営みを、ユーモアたっぷりに解き明かします。私たち人間も、しっかり自然を見据えれば、本当の生き方が見えてくるかもしれません。」
目次
町の音
琵琶湖の風
ギフチョウ・カタクリ・カンアオイ
犬上川
ショウジョウバエの季節
八月の黒いアゲハたち
セミの声聞きくらべ
秋のチョウ
真冬のツチハンミョウ
冬の草たち〔ほか〕
著者等紹介
日高敏隆[ヒダカトシタカ]
1930(昭和5)年、東京生れ。東京大学理学部動物学科卒業。東京農工大学、京都大学教授、滋賀県立大学学長を経て、現在は総合地球環境学研究所所長。2001(平成13)年『春の数えかた』で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞