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(2007.06.01読了)(2007.05.25購入)
短編集です。3〜4ページのものが2篇。30ページほどのものが4篇。50ページほどのが1篇。全部で7編です。
「ミーナの行進」でも、お話作りのうまさに感嘆してしまいましたが、この短編集も同様です。お話作りの円熟期に入ったのではないでしょうか?
●「海」
僕は、泉さんとの結婚の承諾を得るために泉さんの実家へ泊りがけで出かけた。
泉さんの実家では、僕は泉さんの弟と一緒の部屋で寝ることになった。
泉さんの弟は、楽器の演奏をするという。鳴鱗琴(めいりんきん)という楽器だという。
「ザトウクジラの浮き袋でできており、浮き袋の表面には魚の鱗がびっしり張り付けてあって、中にはとびうおの胸鰭で作った弦が仕掛けてあり、それが振動源となって、空気の振るえを鱗に伝える」
「演奏のためには、海からの風が届かないと、鳴鱗琴は鳴りません」ということで、演奏を聴くことはできなかった。
(ちょっとファンタジックなお話です。)
●「風薫るウィーンの旅六日間」
ウィーンの旅・フリープランに単身で参加した私。単身参加の琴子さんと同室になった。
私にとっては、二十歳の記念旅行だった。
琴子さんの旅行の理由は、養老院の付属病院で死の床についている昔の恋人に、会うことだった。
私は、一人で自由に観光するつもりだったのですが、不安そうな琴子さんにずるずると付き合うことになってしまう。
養老院にたどり着き、ヨハンさんを探し当てた。ヨハンさんは意識がなさそうだった。
ウィーンを発つ前日にヨハンさんは息を引き取った。
葬儀の後、名札を手にとってよく見たら、ジョシュアと書いてあった。
隣のベッドを見たら、ヨハンと書いてあった。
(心温まる話です。)
ほかの話も、それぞれに見事なお話になっています。
著者 小川 洋子
1962年 岡山市生まれ
早稲田大学第一文学部文芸科卒業
1991年 「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞
(2007年6月18日・記)
☆小川洋子さんの本(既読)
「シュガータイム」小川洋子著、中央公論社、1991.02.25
「妊娠カレンダー」小川洋子著、文春文庫、1994.02.10
「薬指の標本」小川洋子著、新潮社、1994.10.30
「博士の愛した数式」小川洋子著、新潮社、2003.08.30
「偶然の祝福」小川洋子著、角川文庫、2004.01.25
「ブラフマンの埋葬」小川洋子著、講談社、2004.04.15
「ミーナの行進」小川洋子著、中央公論新社、2006.04.25
(「BOOK」データベースより)amazon
恋人の家を訪ねた青年が、海からの風が吹いて初めて鳴る“鳴鱗琴”について、一晩彼女の弟と語り合う表題作、言葉を失った少女と孤独なドアマンの交流を綴る「ひよこトラック」、思い出に題名をつけるという老人と観光ガイドの少年の話「ガイド」など、静謐で妖しくちょっと奇妙な七編。「今は失われてしまった何か」をずっと見続ける小川洋子の真髄。
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これぞ、小川洋子という短編集。
不思議で、ゾワゾワする恐ろしさがあって、それなのに、すぐ隣で起こっていそうな物語。
特に、彼女独特のラストは、どの作品においても、最高のインパクトです。ラストを読み終わったときに生まれる、なんとも言えない空虚感。これに、いつも参ってしまう。まるで、麻薬のようです。
「ガイド」が一番のお気に入り。
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小川さんの短編集は久しぶりに読んだのですが・・やっぱり好きです、この人の書く文章が。中でもお気に入りの話は最終話の「ガイド」。記憶を思い出に変えて、そこに題名をつける緻密で繊細なお仕事が、とても素敵だと思いました。ゆる〜く心地の良い雰囲気がたまらない1冊だと思います。別館ブログにて、感想長々と綴っております。
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「博士の愛した数式」を読み小川洋子の描く、温かかな世界観に感動し、「博士ー」の読み終わりと同時に購入した作品。
様々ストーリーが織り成す、小川ワールドは凄く心温まる作品ばかり。特に「ガイド」、「ひよこトラック」など温かみのある作品はいいっすわ。
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風薫るウィーンの旅六日間・バタフライ和文タイプ事務所・銀色のかぎ針・缶入りドロップ・ひよこトラック・ガイド
不思議なお話ばかりです。
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優しい気持ちになれる短編集。発想が斬新でありながら、落ち着いた小川女史特有の文体にのめり込むこと請け合い。「バタフライ和文タイプ事務所」と「風薫るウイーンの旅6日間」「海」がよかったです。
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小川さんの作品にはタイプライターが出てくるものがいくつかあって、それが気になる。この短編集の中では、ひよこトラックが好き。
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小川さんの博識ぶりにはいつも驚かせられる。作家さんは誰でもそうなのかな?ミステリー作家ではないのに、理数系が好みそうな物語を書く人だ。この短篇集にもその味わいがでている。特に「バタフライ和文タイプ事務所」は、ただ2・3の文字を眺めるだけなのに、ものすごくエロティシズムを感じた。素晴らしい。『博士の愛した数式』の前後に書かれた短篇集ということなので、もうしばらくこの路線の物語を読みたいと思った。
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何か、この本に限らず
触れたら壊れるような「何か」を感じる。
だから大事に読まないといけない気がする。
乱暴に読んだらたぶん全然入ってこない人。今回は中でも『風薫るウィーンの旅六日間』の後半が好きです。
人の死を見送ることに対する考え方。在り方。
それがとても素敵でした。
『缶入りドロップ』は3、4ページだけど、
何だかとても微笑ましい。
『バタフライ和文タイプ事務所』はタイトルが好き。
でも一番好きなのは、
表紙の『海』のフォント。
にじみ出るような海は、写真では分からないけど、
何だか自分の中にもにじんでくる感じ。
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短編集。短い文章で一つの世界を作り上げることって実力がないとできないことだと思う。ふつうっぽくってそこにあるような雰囲気なのに、どこか違う世界のような気がする。ちょっとだけ夢がまじっていて、不思議な空気。それを最初の何行かで作り出してしまう。「缶入りドロップ」のじんわりとしたあったかさがすき。
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短編7作。「バタフライ和文タイプ事務所」と「ひよこトラック」が私の中の作者のイメージどおりだった。あとは割りと意外な感じ。「風薫るウィーンの旅六日間」は散々だけど微笑ましい。「ひよこトラック」の抜け殻の描写。全般的に淡白かな。「詩など必要としない人は大勢いるが、思い出を持たない人間はいない」〜ガイドより〜
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短編7つを収録。
どれも爽やか過ぎる感じでもないんだけど雰囲気がいいというか、個人的な他人のちょっとした時間を分けてもらったような、とかく読了感は良かった。
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7つの短編が収められてますが、私の印象に残ったのは「ひよこトラック」「バタフライ和文タイプ事務所」。「銀のかぎ針」は超短編ですが、私の知ってる風景が描かれていて懐かしかったです。
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余り覚えていないのだけれど
小川洋子の中では妙にさっぱりした作品だったような
短篇を多く書く方なのですね
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博士〜で小川女史を知って、次に読んでみた作品がこれでした。短編でも素敵なものを書かれる方ですね。「バタフライ和文タイプ事務所」「風薫るウイーンの旅6日間」「ひよこトラック」が印象深いかなあ。夏の図書館の隅っこの方で黙々と読んでた覚えがあります。