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中学生の頃、友達から「雪の断章」を借りて夢中で読んだ。話の内容はおぼろげとしか覚えていないが、とにかく文章が美しくて、すごく泣いた記憶がある。
久しぶりに佐々木丸美の作品を読んでみようと手にとってみた。確かに文章は相変わらず美しいし、独特の雰囲気がある。
崖の館に住む大金持ちの老婦人、その甥や姪達。彼らはとても孤立しているように感じる。普段はそれぞれ町で暮らしているはずの甥や姪達にも他に人間関係が存在する気配がない。親や友達や同僚やそういった人間の存在の気配がまるでない。描写がないわけではないのに、人間関係が館内で終わっている感じがする。この重苦しさと息苦しさがこの本の肝なのかなと思った。
美術や文学への知的な会話が長々と語られる中、少しずつおかしな事件が起こる。犯人はいとこの中にいるという事実がこの閉塞感溢れる人間関係を狂わせて行く。
この息が詰まるような雰囲気が自分の気持ちとぴったりであれば、多分もっと評価は高かったと思う。ただ私には合わなかった。
千波の事件があったにも関わらず、普通におばさんの家に集まってくるいとこたち。そこには千波への愛情以外におばさんの遺産という理由がある。
仕事を辞めて働かない、2浪しているのに理屈ばかり振り回す、そう言った、はっきりは言わないけどおばさんの遺産を当てにして生きている人間が、作中で「知的な人たち」として描かれている事に違和感を感じる。
また作中で「すごい影響力のあった存在」として書かれている千波だが、知識は本から得るだけでは完全にはならず、そこに経験が伴って初めて身につくという事が完全に忘れられている。引きこもって本ばかり読んでいる存在が幸せだとも思わないし、すごいとも思えない。
読者が違和感を感じるように、館が狂っている事が感じられるように、故意にこういう風に書かれているのだとしたら、すごい作家だなぁと思う。
感動したという記憶だけが残っている「雪の断章」が気になるが、思い出のままにしておいた方が良い気もする。
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54/10,000
崖の館【佐々木丸美】
設定はミステリーそのもの‼︎みたいなベタな感じですが、それがまた新鮮でした(笑)
最後まで楽しく読めました♡
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荒波立つ雪国の断崖に、ぽつんと建つ大きな館。
舞台としてはまさにミステリーにピッタリ。怪しい雰囲気をたたえた風景が目に浮かぶ。
思っていたほどには重苦しく感じなかったのは、語り手となる涼子が高校生、その他のほとんどの登場人物が20代までという「若さ」もあるかもしれない。
謎解きしながら読み進められるタイプ。
キャラクターとしては由莉が印象的だったかな。
読み終わったあと1977年の作品と知って、なんとなく納得。
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ミステリアスな館と様々なことを考えている人。閉ざされた空間で人と人の交差。雰囲気がある作品。芸術論や美学の話がたくさん出てくる。面白い。
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ミステリにおける信頼できない語り手問題。
京極堂シリーズの関君に対し「あいつが語り手じゃなかったら謎が解ける気がする」といった友人を思い出す。(ちなみに私も友人も京極堂シリーズは大好きだ)
抒情的で乙女チックかつ冷静な語り手の涼子は関君よりはミステリとしては公平な気もする。しかし、本作はミステリというよりは、ジュブナイルだろうか。少年少女が何かを通して成長する物語。
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【The house on the cliff】
不思議だ。行ったことないはずなのに、陽の暖かさ、絨毯の柔らかさ、飾られた油絵の絵具の匂い、崖に打ちつける波の音、館に漂う不穏な空気。
誰もが想像し、憧れた世界。
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私には言葉が難しく、会話の「」も文中に出てきたり、一つ一つの文が長く区切りにくく、初めて読んで楽しくないなあと感じた物語だった。私がレベルに合っていなかったか。
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数年前に読んだ本だけど読み返してみた。
独特の儚い雰囲気と甘い(私が勝手に思っているだけだけど)文章がとても好き。
ミステリーなのにトリックや犯人よりも先に幽霊を思い浮かべてしまうような静かなイメージの不思議な館。
男女平等が謳われる今の世の中では受け入れられない人もいるかもしれないけど、この本に出てくる「女の子なんだから」みたいな価値観や会話も私は嫌いじゃない。