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命のバトンタッチ 障がいを負った犬・未来 みんなのレビュー

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みんなのレビュー4件

みんなの評価4.7

評価内訳

  • 星 5 (2件)
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4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本

「犬はね、どんな犬もみんな、みーんな、やさしい心をもっているよ。あったかいよ。だって……生きてるんだもん」

2010/03/25 21:39

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る

『命のバトンタッチ』と『しあわせのバトンタッチ』は、
「右目負傷、右うしろ足切断、左足の指がすべてない」という
人為的な障害を負った柴の子犬・未来の物語である。

『命のバトンタッチ』は、未来が
千葉県動物愛護センターの見学に訪れた
ペットシッターの山口麻里子さんに引き取られ、
里親さんのところに送り届けられるまでの物語である。

プロローグとエピローグに登場するのは
里親さんが未来を散歩しているシーンで、
未来がいると子ども達が心を開いて話しかけてくる。

  たくさんの大人は未来の足を見て
  「かわいそう」としか言わないのに、
  子どもはかならず「未来ちゃん、がんばってるね! 
  すごいね!」と言ってくれます。

  子どもたちは未来から
  たくさんの勇気をもらっているのでしょう。

このエピソードが、『しあわせのバトンタッチ』で展開される、
学校で命の授業を行う話へとつながっていく。

本書では、未来の里親さんが誰だか明かされていない
(『しあわせのバトンタッチ』ではわかる。)のが特徴で、
山口麻里子さんを中心に話が進んでいく。

初出では「山口麻里子」、以後「麻里子」という三人称で語られ、
彼女の内面描写も深い。

彼女がどういった家族構成で、
犬達とどんな思いで接してきたのか、
動物愛護センターをどんな思いで見学したのか。

  この部屋の犬たちは一週間後、次の部屋は6日後、
  そして、最後の部屋にいる犬たちは明日の朝、
  密閉されたまっ暗なステンレスの箱においやられ、
  何十頭もいっしょにおしこめられて、
  二酸化炭素ガスで窒息死させられてしまうのだ。

  その時間は5分から15分と言われていた。

本書は動物愛護センターの現実を書き切っている。

ここで、麻里子は未来と出会う。

  「何……? この子……」

  それは、小さな、小さな、あまりにも小さな子犬だった。

  しかも、右目がざっくり切られて大けがをしている。

  ところが大けがをしているにもかかわらず、
  子犬は、麻里子を見ると、
  大よろこびでしっぽをふって近づいてきた。

  ヒョコ……ヒョコ……。

  歩き方が少しへんだ。

この印象的な出会いのシーンは、
同じ著者の『読書介助犬オリビア』を思い出させた。

サンディとオリビアもアニマル・シェルターで出会っているのだ。

このとき、麻里子は、未来を連れて帰っていない。

だが、彼女は、忘れることができなかった。

ここで彼女がどんな風に犬と接してきたのか、
犬の里親ボランティアをするのなら見ておくべきだといわれて
動物愛護センターに見学にきたこと、
そして、
麻里子がこのときはまだ名もなき子犬だった
未来をなぜ忘れられなかったのかが
語られていく。

麻里子は、もう一度子犬に会いにいく。

彼女は、子犬を選び、未来と名付ける。

それは、最初は候補としていた犬を選ばないということを意味していた。

なんという重い選択だろう、運命だろう。

そして、なんという縁なのだろう。

未来は足に重い障害を持っていたが、麻里子の家で、
麻里子が飼っている他の三頭の犬の中で
社会性を学びながらすくすくと育っていく。

未来は負けん気の強い、勝気な女の子で、
指のない小さな肉球が残った左うしろ足だけで、
トコトコとよく走り回る犬だった。

1歳(人間で言えば18歳)で体重18キロのタイソンと
体重2キロに満たない未来は
元気いっぱいプロレスごっこをしているというくらい。

処分寸前で連れてきた子犬がどんどんけがを回復して、
元気いっぱいに毎日を生きる姿に麻里子は心を動かされる。

  この子は絶対に死にたくなかったのだ。

  生きていたかったのだ。

  それが、自分の心を動かしたにちがいない。

気が強い未来は、大きな先住犬たちをものともせず、
飼い主の麻里子の次は怒るとこわいと思うマーカスだが
その次は自分だと思っている元気のよさ。

遊んでいる未来を見ているうちに、麻里子は気づく。

ふかふかの布団の上なら、未来は四本とも足がつくと。

未来の様子はホームページに公開していたため、
彼女のためにたくさんの役立つ品が送られてきていた。

そして、里親募集もしていたのだが・・・。

掲示板にも未来を応援するメッセージがたくさん寄せられていた。

  ハンディのある未来を一生飼うことは
  かんたんなことではない。

  未来のことを真剣に思えば思う人ほど、
  うちで引きとるとはかんたんに言えないはずだ。

未来の里親候補は何人か現れたが条件に合う人はなかなかいなかった。

そして、「千葉県在住の40歳の女性で、夫と二人ぐらし、
現在は5歳になる犬を飼っている」という人から応募がある。

その人は、以前の里親候補をなぜ断ったのか訊ね、
その候補の語った「かわいそう」という言葉に敏感に反応する。

  "かわいそう"ですか。

  なぜ、その方たちは未来ちゃんを見て
  かわいそうと思ったんでしょうか?

  ネットで掲載されていたセンターでの写真ですか、
  切りとられたうしろ足や傷ついた右目のことですか?

  あわれみだけで、
  「命」はあずかれないのではないでしょうか。

彼女の言葉はさらに続いている。

麻里子はそれに対して、
「かわいそう」だから何かできないかという立場を否定はできない、
そこから少しずつはじめたいと思うことだってあると考えている。

里親候補の女性は言う。

  ハンディがある未来を引きとることで、
  自分がどこまでこの子を幸せにできるのか、
  チャレンジしたかったのです。

  私は、未来ちゃんを幸せにすることで、
  私も幸せになりたいんです。

  だから……、里親を希望したのです……。

「かわいそう」と思う立場に対して、意見が異なった二人だったが、
未来を幸せにすることで自分も幸せになりたい
という思いは二人をつなげたのだろう。

  人間は犬から、あたえてもらうだけあたえてもらい、
  何もかえしてはいないように思えた。

  だからこそ……、その命を助けることは必要だ。

  しかし、ほんとうにたいせつなのは
  動物たちを殺す処分所が必要でなくなる世の中なのだ。

本書は、犬を取り巻くつらい現実を描写している部分もある。

だが、その現実の中で、暖かい陽の光のような
生命力を感じさせる存在感を未来は持っている。

犬と縁を持とうと思うすべての人に手に取ってほしい1冊である。

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2010/06/26 12:43

投稿元:ブクログ

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2012/03/16 23:21

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2023/09/15 10:52

投稿元:ブクログ

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