紙の本
自分と他者の相互理解というファンタジー
2007/12/13 23:01
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:シノスケ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ラス・マンチャス通信』『忘れないと誓ったぼくがいた』では、過ぎ去ったことに対する諦めともとれるすがすがしさがあった。それは決して悔恨と苦渋ばかりの過去ではなく、諦めたことによる自らの肯定に他ならない。『冥王星パーティ』では、姿も中身も変わってしまった人物との意外な邂逅ではじまる。
原則として過ぎ去ってしまった過去をやり直すことはできない。自らの感情はともかく、物理的には不可能である。好意を抱いていたにもかかわらず、ちょっとしたすれ違いから自分たちの距離を再確認することで、そのまま二人の軌道上は遥か遠くへと遠ざかってしまう。別段珍しいことではないし、そもそも人間関係において人と人との間には絶対的な距離が存在する。それでも、ふとしたきっかけで二人の距離が接近することもあるし、二人の間に横たわる「アレ」を乗り越えて手を取り合うことだってできる。
『冥王星パーティ』は、決して淡い恋物語ではない。二人の人物が自らの心に存在する黒いしみを見つけ、相手の持っている「しみ」を認識したときに少しだけ距離が縮まる。作中で「本質的に評価しているのか」という問いかけがなされるが、それは本質的な関係をきずけるのかということでもある。都築祥子と桜川衛の関係は表面上うまくいっていたが、高校生活の1点において少なくとも桜川衛の持っていた日記という黒いしみによって、ずれてしまった。それに悔恨を見出した両者が再び交わるには歳月を必要とするが、少なくとも二人は高校時代の衛の日記を起点、終点として、それを認めることで自らの無理解を認識した。その生き方は決してスマートではないが、自ら苦渋と悔恨の道を選んだ二人の顔は晴れやかだ。
今までの作品は、いずれも舞台や筆致が異なるけれど、根本的な問いかけはおそらく同じだろう。次回作も楽しみ。
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前作の「忘れないと誓ったぼくがいた」はあまり話題にならなかったようだけど大好きな話だったので期待して読んだが、期待を裏切らない、とても素敵なラブストーリーだった。切なくて青くて。
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私には何を書きたいのかよくわからなかったです。軽い文体で重い内容を描きたかったんですかね?重い出来事を主人公や登場人物が乗り越えていくのに、内面のことがあまり描かれていない感じが、よくわからないと思った原因かなぁ?
でも、設定はすごく好きでした。
『そこそこ美人。要領もいいし、頭だって悪くない。なのに、なんで私はいつも男の選択を間違っちゃうんだろう−。』
っていう、内容紹介文に惹かれました。
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ジャケットと帯の文に興味を持って購入した作品。社会に適合するのって困難を伴うってことを改めて感じた。また、ストーリーは不器用な人間が、不器用なりに生き、未来に希望を持って歩んでいくラストは気持ちの良かった。
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過去を紐解いていく要素があり、一気に読んでしまいました。登場人物を地の底まで貶める事も可能な設定だと思いますが、希望のある終わり方で良かったです。
人間として存在する事と、社会の中に自分が存在する事は、全く別物なんでしょうね。
タイトルがとっても素敵です。
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純粋ということ、「社会化」できていないということ、
きっとそれはイタイ。
「社会化」できているということは、なんだか淋しい。
俺はハザマにいて苦しい。
行くべき道は「社会化」だと思う。
苦しくて仕様がない。
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「男」で間違ってしまう女の人の話を、男視点と女視点で描いている。とても不器用な話。
2009/12/2
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これからしばらく平山瑞穂作品を読んでみよう、と決意したものの、次はどれにするべきか…そう思っていたところ、とあるブログの記事に「衛クンが永野のりこの漫画の主人公にカブる」と書いてあったので、この本に決定。
(つづく)
とあるブログ記事
http://d.hatena.ne.jp/pnu/20070420/p1
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以前、惑星から「降格」して話題になった冥王星。ひとつの星が「降格」することなんてあるのかと驚いた人も多いと思うが、僕はこの冥王星ってやつが結構好きである。
太陽の光もほとんど届かないような遠い彼方で、小さな(でも冥王星と比べたら結構デカい)衛星を伴ってひっそり公転している太陽系の寂しがりや、そんなイメージがあるからだ。
ある日、桜川衛はネット上であるサイトを見つけ愕然とする。そのサイトで自らのあられもない画像をさらしている女性はshoko tsuzukiと名乗っていた。…彼女はひょっとしてあの「都築祥子」なのだろうか?
そこから物語はさかのぼり、県立高校の女子生徒である都築祥子の物語が始まる。
祥子は家が薬局で、母親がいないため父親と二人暮し。読書好きで同級生の男子生徒にはどうも興味がもてず、友人の榛菜との日々を特に不満も感じずに過ごしていた。
そんな祥子の人生に変化をもたらしたのが榛菜の紹介で出会った別の高校の男子生徒・桜川衛だった。
祥子と同じく本好きの衛はやがて祥子の生活に何らかの影響をあたえていくが、この関係をどう捉えればいいのか祥子自身にもよくわからない。やがて祥子と衛の人生を変える事になる一夜が訪れるのだが…。
恋愛小説のようでいて恋愛小説ではない。祥子はいろいろな男性との出会いを経て何かを学んでいくが、同じ失敗を繰り返しているようでもある。
人生がいつも自分が考えているのとは違う方向に行ってしまう。泥沼にはまりこんでしまう。そのきっかけになるのはいつも「男」だった。
祥子に限らず、男だろうと女だろうと、恋愛という迷走を繰り返してみんな成長していく。それは後悔の繰り返しであったり、わかっているけど踏み込んでしまう危なっかしさだったりする。
祥子は決してバカな女ではない。彼女は非常に聡明でしっかりした女性なのだが、いつもおかしな方向に人生を踏み誤ってしまう。
ラストで祥子は自分についてある結論を下すのだけど、僕にはそれは祥子だけでなくすべての人に当てはまる結論だと思えた。
さ迷った果てにたどりついた場所。それは暗くて寂しい所だったのだが…タイトルの意味は終盤近くで明らかになる。
いろいろな人物が登場して、それぞれの人生を歩んでいくのだが、この小説は二人の人物が別々の軌道を描きながらお互いの人生を大切に抱きしめる青春小説なのである。
みんな一生懸命生きていて、それぞれ一番良いと思った選択をしているのに、互いに望まない結果を招いてしまう。辛いことをたくさん経験して何もかもすべてに絶望したけど、それでも一歩ずつ前進していく。
冥王星は惑星からは降格してしまったけど、決して太陽系の仲間はずれになった訳ではない。その数奇な運命に翻弄されて、いろいろあったけど、今でも太陽系の果てでしっかりと軌道を描いて回り続けている。僕はやっぱりそんな冥王星が好きだ。「プルート」というかわいらしい名前の響きも愛しい。
冥王星と同じくらい、運命に翻弄される祥子だけど、彼女の軌道の先には何が待ち受けるのだろう。
終盤は、うーむそうきたか…という感じの展開を見せる。いろんな事があって、人生のやり直しなんてできないんだけど、前進することはいくらでもできるのだ。読後なぜか元気がでる青春小説です。
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父親を始め、友人、交際相手と、とことん周囲の人間に恵まれずボロボロになって堕ちていく祥子の姿が、ひたすら気の毒な物語。 周囲の人間に翻弄されながらも、それでも気丈に振舞う祥子が哀れで、なんとかして浮上してもらいたい、こちらとしてもカタルシスを感じたいと願いながら第3章を読んで唖然とした。 これでホントに彼女は救われるの?単に加害者たる男性側にとって、都合がいいだけじゃん!そんなとってつけたような結末にも不満だ。この物語で作者が何を描きたかったのか、それすら私にはよく判らなかった。第3章で唐突に視点が変わるのもヘンな感じ。 文章は上手いし好きだけど、ストーリはイマイチ合わない作家となりそうです。次回作に期待。
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ちょっとした選択でその後の人生が大きく変わってしまうことがある。
振り返って見通すと、あの時のアレが分岐点であったと分かることがある。
そして、関わる時間はたとえ短かったとしても、人生のキーマンとなり、ずっと心の中で人生を共にする人もいる。
出会いって、思う以上に人生を左右すると思う。
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思っていたよりも何も起こらず。何か起こりそうで大したことが起こらない。男女のプラトニックな恋愛模様。
高校時代に付き合うまでいかなくとも、お互いに影響を与え合った二人。11年の経過が描かれています。男を見る目がなくて男に振り回されてしまう女性と自意識が無駄に過分だった自分を改革した男性。
上手くいかずに思い悩み、どこで進むべき道を間違えたのか・・・と分岐点について考えるけど、考えたところで戻ることもできないみたいな感じの話。
望月さんとか何年も祥子の存在を探してたっぽくて気持ち悪いのに、最後に「行かない」とか、一緒に住んでた外国人ももっとなんかあってもよいのに、逃げてきて終わりとか、何とも言えない物足りなさを感じました。
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某書店で文庫本化されて、今じわじわきている、みたいなポップを読み興味がわいた一冊。
とある男女の初恋(?)と、その後のふたりの話が描かれている。
でも私には全然じわじわこなかった(笑)
もっと純粋に甘酸っぱいものを期待してしまっていたので、こうも複雑だとは、とちょっとゲンナリ。
でもひとりひとりの人生なんて、結構複雑でドラマティックだったりもするんだよね、というところは考えてみたり。
積読もたくさんあるので、作家さんのリピはないかなぁ。